第165話 迫る凶刃と守護者
その小さな綻びはすぐに消えるはずだった。
世界に生まれた綻びは危険な異物と判断され自浄されるはずであった。
それなのに世界の意思に反して何者かの干渉により定義されてしまった。
そうなれば世界の自浄は行われない。
そうして、綻びは大きくなり続ける。
「この鬱陶しい魔法陣はなんだ?」
神がエリスに問う。
神からしたら当然だろう。
得体のしれない魔法陣。
何かしてくるかと思えば何も起きない。
起きたことと言えば先程の魔力が消失したぐらい。
それ以降は何も起きない。
警戒をしていたが魔力にも反応せずただ回るだけ。
故に、危険を感じなかった。
「・・・・・・・・・・・・・。」
エリスは無言を貫く。
神に余計な情報を与えないため。
エリスだけがこれから起こることを知っている。
故に、話さない。
「そうか・・・・・・、死にたいのなら死ぬがいい。」
神の底冷えする声が耳元で聞こえた。
息をのむエリス。
明確な殺意が、死がすぐ其処まで来ていた。
「させるか!!」
クライスが叫び神に斬りかかる。
クライスも神と同等の速度で肉薄していた。
ガキッン!!
神の右腕とクライスの『天羽斬』がぶつかり合う。
お互いの魔力がぶつかり合い激しい衝撃が生まれる。
エリスはその衝撃の余波を受け吹き飛ばされる。
「エリスッ!!」
クライスが叫ぶ。
直ぐにエリスが返事を返す。
「私は大丈夫!!」
エリスの声を聴いたクライスは安堵の息を吐き神へと意識を向ける。
「随分と勝手をするじゃないか!?」
「目障りなものを排除しようとしただけだが?」
二人の鍔迫り合いはまだまだ続く。
漏れ出る魔力が綻びに流れ込んでいるのにも気づかずに。
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