第32話 決闘 中
「さて、覚悟しろよ!!魔闘術を使ったんだ、手加減なんてのは期待するな。」
お兄さんは改めて俺に注意を促してくる。
魔闘術?冒険者は魔力を纏って身体能力を上げる状態の事をそう呼ぶのか。
俺は名前なんて決めて無かったから俺もそう呼ぼうかな。
戦闘とは全く関係無い事を考えながらお兄さんの動きに注意する。
これからは、時間を引き延ばすために出来るだけ回避に専念しなければならない。
取り敢えずは足と目に魔力を集めるか。これで、回避に専念すれば攻撃が当たる事は無いだろうな。
『クライスよ、時間稼ぎは逃げるだけか?』
『そうだね。リリカ様の許可が出れば暴れられるよ。』
『なら、期待して待つとしよう。許可が出れば暴れさせて貰うぞ。』
インドラが暴れたがっているか・・・・。まぁ、最近は大人しかったから仕方ないかな。
そうこうしてると、お兄さんが動き出す。
先程とは違い、魔力を纏った脚力なので速度が跳ね上がっている。
結構な距離を開けていたが一瞬で距離を詰められる。
先程までに与えたダメージは無くなったかの様な動きだ。
右上から振り下ろされる木剣をギリギリで躱し、距離を取る様に後ろに下がる。
お兄さんは即座に此方の動きに対応して追撃してくる。
その都度、冷静にお兄さんの攻撃を避け続けて時間を稼ぐ。
「ちょこまかと!!!回避に専念されると腹が立つ!!」
「申し訳ありませんが、お兄さんの攻撃を食らう訳にはいきませんので。」
俺は、回避に専念しているので最小限の魔力と動きで大丈夫だ。
しかし、お兄さんは全身に魔力を纏って俺の動きに追いてこようとしている。
う~~~ん?魔力の使い方が下手糞だな。多分独学なのか?魔力を纏ってはいるけど垂れ流される量も多いな。
クライスはこの国で最高峰に近い人達と精霊から魔力の運用方法を学んでいる。
そんなクライスから見てお兄さんの魔力の使い方は雑でしかなかった。
あの状態が何時まで続くかだな。このままだと、あまり時間は掛からなそうだな。情報解禁はしなくて良いかな。
俺が攻撃を避けながら内心安堵しているとリリカ様からの声が聞こえる。
「お待たせしました、国王より許可が出ました。」
その声に観戦してる貴族達がリリカ様に集中する。
激しい攻撃をしていたお兄さんもリリカ様の声に動きが止まる。
「許可!?」
「国王は何を許可したんだ?」
「あの少年に関する事なのか?まさか、実力を隠してあの強さなのか!?」
貴族達が騒ぎ出す。各々に囁き隣同士で憶測を話し合っている。
勿論、パウル侯爵やエラブルはそんなものハッタリだと高を括っている。
このタイミングで許可が出るかーーー。絶対、タイミングを計ってただろう!?
まぁ、仕方ない。許可が出たのならこっちも全力でいくか・・・・・・。全力は駄目かな?また、怒られるのは嫌だからインドラと相談しつつ力を出そう。
『インドラ。暴れられるがまだインドラの姿を見せたくないんだ。何とかならないか?』
『ふむ・・・・。ならば、派手に魔力を纏う演出をするか。その時にマフラーとして擬態しよう。』
『そんな事が可能なのか?』
『出来なくは無いが・・・普段より擬態に集中するから顕現してても6割が限度だ。誠に残念だがな。』
『そうか、なら問題無いな。セレネはどうする?』
『私は今回は遠慮するわ~~。その変わりインドラの隠蔽を助けてあげる~~。』
『おおお、それは助かるぞ。それなら、7割は暴れられるぞ!!!』
『話し合いは終わりだな。そろそろ俺も我慢の限界だ!!』
心の中での会話を終えてお兄さんと睨み合う形になる。
「国王の許可とは何だ?まさかと思うが・・・、今まで手加減していたのか?」
「そうですね・・・・。国王様から許可が出ましたので情報解禁とします。申し訳無いですが手加減していたのは事実です。こちらも事情がありましたので申し訳ありません。」
「舐められたものだ・・・・。なら、今からはお前の全力が見えるという事だな?」
俺はお兄さんの言葉に応えず、右手の木剣を手放す。
そして、袖を捲り上げて右腕の魔力紋と精霊石を晒す。
「なんだ・・・その右腕は!?」
「答えませんよ。冒険者は自分の能力は隠しておくものですので詳細は教えません。」
お兄さんの質問に答えず俺は右腕に魔力を集中させる。
次第に光りだす魔力紋と精霊石。
右腕から黄金色の魔力が溢れ出し俺を包み込む。
全身を包み込んだ魔力は、バチッ!!バチバチッ!!と音を立てながら雷に変わる。
全身に雷の衣を纏うと同時にインドラが擬態したマフラーが首に巻かれる。
「馬鹿な!?お前も魔闘術が使えるのか?いや、魔闘術なのかそれは!?」
「ですから、答えられませんが・・・・。僕もこの状態になれば手加減は出来ませんよ。」
お兄さんの質問に答えるのと同時に動き出す。
『瞬雷』
小さく呟くと共に雷の速度で近寄る歩法でお兄さんの懐に潜り込むと同時に正面から右拳を腹に叩き込む。
「はっ!?なんて早っ!!!!がはっ!!!」
ゴッ!!
凡そ、人体から聞こえる筈の無い音と共にお兄さんが宙に浮かぶ。
直ぐに右腕を引き、宙に浮いたお兄さんに向けて回し蹴りを叩き込む。
綺麗に右脇腹に蹴りが直撃しお兄さんを吹き飛ばす。
ガッ!ダンッダン!!
一度地面に激しく打ち付けられた後に二度大きく跳ねるお兄さん。
周りの観戦している貴族達がまたも静かになる。
パウル侯爵とエラブルに至っては顔面蒼白になっている。
「ぐっ、あ、あ、がはっ!!」
地面にお兄さんの口から出た血が広がる。
たったの二撃。それだけでBランクの冒険者が行動不能間近まで追いつめられる。
クライスは右半身を前に出した半身に構え、静かにお兄さんの次の行動を見守るのであった。
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