第148話 最後の時間 Ⅸ
膝から崩れ落ちたクライスが涙でグシャグシャな顔を二人に向ける。
「他の方法は無いの?」
『『・・・・・・・・・。』』
震える声で二人に縋る。
二人は何も言わない。
もうこれが最善なのだと言わんばかりに真剣な眼差しをクライスに向ける。
絶望で顔を歪めるクライスに二人が寄り添うように近づく。
『安心しろ・・・・・・・・って言うのはおかしいか。』
『そうね・・・・・・・・。クライス、私達は確かに消える。でも、魂は貴方と共に生き続けるのよ。』
インドラが苦笑いをしながら。
セレネが優しく諭すようにクライスを説得する。
「うっ、ひっく、うっぅぅぅぅ。」
『あ~、そんなに泣くなよ。』
『笑顔で送り出してくれないかしら。』
涙と嗚咽を垂れ流すクライス。
優しく、優しく包み込むように二人はクライスの傍に寄り添う。
暫くの時間が経過した。
ようやく落ち着いたクライスは立ち上がり二人と顔を合わせる。
「最後までごめん。」
『謝る必要はねぇよ。』
『そうね、感謝の言葉が欲しいわ。』
二人の言葉でクライスは自らの顔を拭う。
そして、笑顔で二人に向き合う。
「今までありがとう。そして、これからもよろしく頼む。」
『ああ、任せろ。』
『話はできなくなるけど想いは、魂は貴方と共に。』
その言葉と共に二人の身体が眩い光に包まれる。
しかし、不思議と眩しくはない。
優しい光が二人を溶かし一つの魂へ。
そして、クライスの身体へと入っていく。
『力は自然と馴染むからな。』
『使い方は魂に刻まれるからね。』
二人の声が聞こえる。
クライスは目を瞑り、声に集中する。
『『さあ、共に戦い生き残ろう。』』
二人の声が重なりクライスは光に包まれるのであった。
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