第142話 最後の時間 Ⅲ
世界が悲鳴を上げる。
最早、意識すらも保っていられない。
「クライス!!しっかりして!!」
後ろから声が聞こえるが誰が何を言っているのか理解できない。
身体が倒れそうになるのを必死で堪える。
「まだ、意識を保っていられるのか。だが、宝刀はそうでもないようだな。」
神の言葉通りにクライスの手から『天羽斬』が消えていく。
消えていくという表現であっているのか?
光の粒子となってクライスとエリスの身体の中に消えていった。
そして、世界も限界を迎える。
世界の端から塵となって壊れていく。
その様子は命の灯が最後の力を振り絞り燃え尽きようとするかの如く儚い。
美しき幻想の世界はここに終焉を迎える。
「旦那!!アッシは先にお暇してしまいます。必ず旦那の悲願を達成してください!!」
世界が消えるとともに久々利の身体も光となって消えていく。
最後にクライスに激励の言葉を残して。
ドサッ!!
遂にクライスが膝をつく。
それを確認した神が賛美を送る。
「ここまで我を追い詰め力を出させたことを誇りに思うがよい。巫女と共にこの世界から苦痛もなく消し去ってくれよう。」
「うっ、あぁ。」
もはや、言葉すら上手に話せない。
それでも、エリスだけは守る。
クライスはゆっくりとエリスの前に這って行く。
身体を起こし両手を広げエリスを守る。
泥にまみれようとも愛しい人だけは最後まで守り通す。
クライスの生き様を見た神は微笑む。
「素晴らしい番だったな巫女よ。貴様が何かをしようとしていたのは判っていたが、残念ながら時間切れだ。番諸共仲良く消え去るがよい。」
『光滅』
神が右手に集めていた魔力が放たれる。
光の奔流が全てを滅しながら二人に迫りくるのであった。
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