第141話 最後の時間 Ⅱ
ミキッ!!パキッ!!パキキッ!!
世界が軋む。
歪な音を奏でながらも世界はその姿を維持する。
桜の木々が揺れ動く。
風もないのにその巨躯を左右へと。
「くっ!!」
クライスの顔が歪む。
世界が悲鳴を上げるたびに身体に負荷がかかる。
最早死に体の状態。
それでも世界を維持し続ける。
神はその右手に膨大な魔力を集めている。
隙だらけ。
なのにその場から動けない。
神の放つ威圧が生きとし生けるもの全てを動けなくさせていた。
『このままではいかんな。』
『そうね・・・・・・・・・・、覚悟は大丈夫。』
『はっ、もとよりそのつもりだったが?セレネはどうだ?』
『私もよ・・・・・・・・。』
突如、二人の精霊が何かを決める。
覚悟?
何を言っているのか?
クライスは朦朧とする意識の中で二人に問う。
「二人とも何を言ってるんだ?」
『クライス・・・・・・・・、今まで楽しかったぞ。』
『そうね・・・・・・、貴方と一緒に過ごした日々は素晴らしかったわ。』
まるで遺言。
去り逝く自分達を悟っているかのような話しぶり。
嫌な予感しかしないクライスは朦朧とする意識を無理やり覚醒させようとする。
しかし、二人がそれを窘める。
『無理をするな。』
『私たちの事は大丈夫。』
『そうだぞ、いなくなったりはしない。』
『ただ、一緒になるだけ。』
朦朧とする意識の中でクライスは二人が言っていることを必死に理解しようとしていた。
しかし、時は待ってくれない。
神の膨大な魔力に世界が限界を迎えようとしていたのだった。
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