第102話 攻防 Ⅴ
「流石は我が見込んだ番。楽しませてくれる。」
神は組んだ両腕を解き拍手をする。
クライスは表情も変えずに睨み続ける。
気を緩めてはいけない。
次の瞬間には自らの命が無いものと思え。
神の一挙手一投足を逃すまいとクライスは緊張する。
その緊張の隙を狙われた。
「硬くなりすぎているぞ?」
「なっ!?」
一瞬で距離を詰められた。
初動がなく、突然目の前に現れた。
それこそ、時を止められたのかと思う程に知覚できなかったのだ。
「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅう!!」
弛緩した左腕を振り上げる神。
それだけなのに大きな丸太で身体を殴られた感覚。
後方に砂埃を巻き起こしながら吹き飛ばされる。
「クライス!!」
「心配ない!!エリスは自分の仕事を!!」
吹き飛ばされたクライスを見てエリスが叫ぶ。
しかし、クライスはエリスに自分は大丈夫だと言い聞かせる。
そんな二人のやり取りをみていた神。
「そうか・・・・・・・・・、巫女も来ていたな。番との戦いが楽しくて忘れていた。」
果たして戦闘と呼べるのだろうか。
クライスからしてみれば大人と子供の戦い。
経験豊富な戦士が今日剣を握った子供に優しく指導を行っている程、今の実力は離れている。
悔し気に顔を歪めるが瞬時に思考を切り替える。
神が自分に意識を集中しているのは好都合。
その余裕、油断が自らの首を絞める。
吹き飛ばさたクライスは刀を抜き、半身の姿勢から正眼の構えに移行する。
居合に拘らない。
次の一手を繰り出す。
決意新たに神へと挑むのであった。
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