第97話 賞賛 後
自らの攻撃が防がれた。
それなのに神はクライスに対して惜しみない賞賛を送っていた。
賞賛を送られたクライスは顔を顰める。
神に褒められても喜べる筈がない。
明らかに見下しているのがわかるからだ。
本来なら賞賛されて嬉しいが馬鹿にされていたら嬉しい筈がない。
「素直に賞賛は受け取るものだぞ?」
「はっ!?賞賛?侮蔑の間違いだろうが!!」
「ハッハハハハハ、面白い。我は素直に成長を褒めているだけだが?」
「なら、その眼を止めることだな。明らかに見下している視線が丸わかりだ。」
クライスの指摘に神は肩を竦める。
その態度にもクライスの冷静さを削る。
『落ち着け。』
『そうよ、今は冷静に。時間を稼がないと』
怒りそうになったクライスにインドラとセレネの声が届く。
幾何か冷静になったクライスは大きく深呼吸する。
「すぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅ、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁあ。よし!!」
深呼吸し自らの頬を叩いた。
冷静に周囲を見渡し、自らがいる場所の確認。
《周囲は更地になって何もない。被害を気にする必要はないか・・・・・・・・。後はエリスだが・・・・・・。》
クライスはエリスに視線を合わせる。
吹き飛ばされたクライスに追いつき後方に待機している。
「私の事は安心して、クライスは自分の心配を。」
『そうだぞ!!僕達がいるから問題ないんだ!!』
『私達に任せない。』
エリスはいつの間にかシルとフィーを呼び出していた。
呼び出された双子の風精霊は元気にエリスの周囲を飛び回る。
その光景に普段なら和むのだが、今は生死が掛かった状況。
故に、すぐに意識が切り替わる。
「任せる。」
短く精霊に言葉をかける。
双子の精霊は両手を上げて答える。
「そろそろ、いいかな?」
「律儀に待ってくれてるなんて余裕だな。」
「万全の状態の貴様と戦いたいと思うのはいけないか?」
神の善意。
それは絶対に負けるとは思っていない強者の余裕。
そこにクライス達の勝機があると信じて。
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