第21話 ペインとの雑談
入学祝いのパーティーから早くも二週間が経った。
リリカ様の誕生日パーティーも明日に迫り、騎士団としての活動が本格的に始まる。
本格的な活動とは聞こえは良いが、実際は学園内での護衛と話し相手だ。
リリカ様が公務に出た場合、王国内であれば付き従うが国外だった場合は大人しく王都でのお留守番だ。
「はぁ~~、いよいよ明日か・・・。緊張するな。」
学院の昼食時間、俺は溜息をつきながら食堂に向かっている。
入学式の日から学部を戦術学科に選択した俺はリリカ様とエリスと別れて授業を受けている。
学部ごとに授業時間がズレている為、学院の昼食時間に二人と会うのは一週間ぶりである。
「さて、時間も少ないし早いとこ食堂に行かないとな。」
俺が、足早に食堂に向かおうとすると後ろから声が掛かる。
「おーい、クライス君。い、いまから食堂に行くのかな?僕も一緒に行くよ。」
「え!!ペイン様!?」
声を掛けてきたのは同じ学部のペイン様だった。
ペイン様とは同じ学部ではあるが入学祝のパーティー以来話す機会が無く何となく疎遠ではあった。
ペイン様から声を掛けてきた!?初めてだぞ!!どうしようか?
俺が緊張して戸惑っているのを感じたのかペイン様は苦笑いを浮かべる。
「そ、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。別に何もしないから。ただ、一緒に食堂に行きたいだけだよ。」
「そうですか、わかりました。では、僭越ながらお供させていただきます。」
俺が深く頭を下げた事にペイン様は驚き機嫌が悪くなる。
「そんな、他人行儀なのは止めてくれないかな。一応、僕達は同僚なんだから。」
「しかし・・・同僚でもそれは騎士団内部での事。学院では同級生ですが一応身分の差がありますので。」
「うーーーん、そんなに難しく考えなくて欲しいんだけどな。僕は一応は公爵家嫡男だけど権力を振り翳すのは嫌だし、まだ嫡男としては勉強中の身だからせめて学院内では気の知れた仲間が欲しいんだよね。」
「そうですか、今直ぐには難しいですが出来るだけ希望に沿うようには致しますので今はご容赦お願いします。」
「そうか・・・・、仕方ないね。まぁ、今後に期待しするとして今は食堂に行こうか。リリカ様とエリスさんが待ってるんでしょ?」
「ええ。一週間ぶりに昼食時間が被りましたからね。一緒に昼食を食べる事になってるんですよ。あれ?ペイン様も行くって事は・・・・?」
「僕もリリカに呼ばれててね。多分、僕達の交流が少ないから交流の場を設けてくれたんじゃないかな。」
そうかーーー。リリカ様には申し訳ない事してしまったな。後でお礼を言っておこう。
食堂までは距離がある為、授業の事や演習についての他愛の無い会話で場を繋ぐ。
魔法を使うためには【詠唱】・【詠唱省略】・【無詠唱】の三種類から選んで使う必要がある。
魔法は、自身の魔力と世界の魔力、そして想像力の三要素で成り立つ。
初めは誰しもが【詠唱】から始める。
【詠唱】とは想像した魔法を言葉で補い、必要な魔力を使って魔法を使う。
【詠唱省略】は少ない言葉で想像を補い、必要な魔力を使って魔法を使う。
【無詠唱】は想像と必要な魔力を使って魔法を使う。
魔法は、初級・中級・上級と大まかに三分類に分けられ、中級魔法は【詠唱省略】で一人前【無詠唱】でエリートと言える。
また上級魔法になれば【詠唱省略】で魔法師団の幹部クラス【無詠唱】は数限られた人しか使えていない。故に、【無詠唱】で上級魔法を使えるものは『賢者』の称号と共に崇められている。
因みに、マルス王国には『賢者』は三名おり、その一人が魔法師団総団長である。
クライスは精霊達のおかげで中級魔法までは【無詠唱】で行える。
しかも、その中級魔法は分類上であり殆どが精霊達と共に作り上げたオリジナル魔法である。
先日の模擬戦で使った黄昏の光神槍は上級魔法に分類される。
「ペイン様は、魔法は何処までのが使えるんですか?」
「僕は、一応風の魔法なら中級までなら【無詠唱】で使えるよ。チャイルド家は代々風魔法の使い手として名を馳せているからね。因みに、ガインさんもチャイルド家の縁戚になるよ。」
「え!?そうなんですか?」
「うん。だから、ガインさんも風魔法が得意だし二つ名もピッタリの名だよ。
「ガインさん二つ名を持ってるんですか?何て言うんですか?」
「ふふふ、それはガインさんに直接聞いてみなよ。多分恥ずかしがって教えてくれないと思うけど。」
「ふむ。弟子として師匠の二つ名は確認しとかないといけませんね。ありがとうございます。週末にでも問い質します。」
「出来れば、僕に教えて貰ったとは言わないでね。小言は聞きたくないから。」
「はははは、ガインさんの小言はしつこいかも知れませんね。っと、どうしたんでしょう?何か込み合ってますね?」
「そうだね、もうすぐ食堂だけど何かあったのかな?」
俺達は話に夢中で食堂近くまで来ていたようだ。
そして、食堂付近は人だかりで一杯で近づけないでいる。
如何しようかと、考えていると食堂内部から聞きなれた声が聞こえてきた。
「離してください!!!」
「煩いですね!!!大人しくついてくればいいんですよ!!」
この声はエリス!?一体何が?
俺はエリスの声が聞こえると同時に人混みを掻き分けて食堂内部に押し入るのだった。
さぁ、皆様お待ちかねのあの方の登場ですよ!!!!
忘れていないですよね?忘れた方は是非第二部の5・6話をお読みください。
一体エリスはどうなるのか?次の更新をお待ちください。
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