第16話 入学祝と酔っ払い
「「「「お帰りなさいませ、リリカ様。」」」」
屋敷に着くと数名のメイドに出迎えられる。
「既に準備は出来ておりますので、何時でも始められます。」
「うむ、ご苦労じゃ。皆の荷物を預かってやれ。」
リリカ様の一言で俺達の荷物を集めていくメイドさん達。
何時の間にかバドさんとルーシアさんも混ざってるけど気にしたら駄目か・・・。
「ありがとうございます。」
俺は制服の上着をメイドさんに渡し身軽になる。
「さて、ホールに行くとするか。こっちじゃ。」
リリカ様が率先して案内してくれる。
案内されたホールには幾つものテーブルと料理が並んでいた。
形式としてはビュッフェで好きな物を取って良いとのことだ。
身内だけでのパーティーなので堅苦しいのは無しと言われる。
堅苦しいのは無しって言われてもな・・・エリスとペイン様以外は年上だし、ペイン様に至っては公爵の嫡男だぞ。どうやって接するんだよ。
俺が一人会場の隅でジュースを飲んでるとエリスがお皿に大量の料理とデザートを載せて近づいてくる。
「クライス!!これ凄く美味しいよ!!!」
「エリス・・・・」
エリスは早くも目を輝かせながら料理を頬張っていた。
「クライスも早く食べないと人気なのは無くなっちゃうよ。」
「わかった、わかった。はぁ~~、俺が一人で悩んでるだけなのか?」
「どうしたの?」
「いや、何でもないよ。因みに、どれがおススメ?」
「えーとね。」
「右のテーブルの煮込みが美味しいわよ。お肉が蕩けて良い味でしたね。」
「「マーガレットさん!?」」
「そんなに、驚かないでよ。お姉さん悲しいわ。」
「あああ!ごめんなさい。」
「すいません。後ろから声を掛けられたので・・・。」
「ぷっ!あっはははは。」
「「!?」」
マーガレットさんが突然笑い出し困惑する俺達。
「ごめん、ごめん。まさかそこ迄真面目に返されるとは思わなかったわ。自己紹介の時にも言ったけど同僚なんだからもうちょっと気軽い感じでも大丈夫よ。」
なるほど、俺が遠慮してるから馴染ませてくれようとしてたのか。凄く面倒見が良い人なんだな。
エリスは早くも馴染んじゃってるしな。普段は警戒心が強いのに身内や知り合いだけだどかなり砕けるよな。
「すいません、気を遣わせたようで?」
「クライス君だったかな?君って何時もそんな態度なの?」
「えーーーと。」
「少し違いますよ。多分、緊張してるだけですね。そうだよね?クライス!!」
「いや、なんでエリスが答えるのさ?確かに緊張はしてるけどもさ。」
何故か、俺への質問なのにエリスが答える。
確かに俺は緊張してるさ。でも仕方ないだろ、バドさんとルーシアさんは良いけど、ガインさんやエマさんは師匠だし、他の三人は初対面だぞ。緊張するなって言うのが無理だ。
俺がエリスに目を細めてジト目を送っているとマーガレットさんに更に笑われた。
「あはははははは、リリカ様に聞いてた通りの仲だね。その調子で私とも付き合ってくれると嬉しいね。」
「エリスみたいに突然は難しいので時間が掛かりますが頑張ります。」
「クライス!?酷い!!私が単純みたいじゃない?」
「そんな事は言って無いだろ!!普段のエリスは警戒心が強いのにどうして身内だけとかになると緩くなりすぎるんだよ。一応、今日自己紹介された人は初対面だぞ?」
「だって、気さくに話しかけてねって言われたじゃない。それなのに堅苦しいのは失礼じゃない!!」
「確かにそうだけど・・・。それでもある程度は限度があるだろ。」
「硬い!!クライスは硬すぎるよ!!!ね~~マーガレットさん?」
「あ、ああ、そうだね。ちょっとクライス?」
マーガレットさんが手招きをするので近づくと小声で質問された。
「エリスちゃんって普段はあんな感じなの?なんか聞いてた話と違って違和感があるんだけど?」
「奇遇ですね。俺も今日のエリスはオカシイと思っています。少し確認しますね。」
俺とマーガレットさんが小声で話してるのが気に食わないのかエリスが頬を膨らませていた。
「何よ。私を除け者にして!!!クライス酷いよ・・・・。」
いきなり、涙目になるエリス。
これは本格的にやばい!!!一体どうしたんだ!?
「え、エリス?何か様子が変だけど、変な物でも食べたか?」
「変な物なんて食べてません!!!あそこにある綺麗なジュースと大人の味がするケーキを食べただけです。」
涙目になったかと思ったら次は胸を張り誇らしげに食べた物と飲んだ物を指し示す。
指し示した先にあったのは、お酒とお酒を使ったと思われるデザートがあった。
「お酒を飲んだのか?」
「そうみたいだね・・・。多分酔っぱらってるんだね。」
「私は酔ってません!!!」
「「酔っ払いはそう言うの。」」
「えへへへへへ!!!」
俺は酔っぱらったエリスを眺めながら、この後の事を考えると頭を抱えるのであった。
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