第14話 陳腐な言い合い
「言葉通りの意味ですよ!!!」
俺は粉塵から血を流しながら怒っているガインさんに返事をする。
「ほーーーー、じゃお前は常に俺に対して言いたい事があるんだな?」
「ええ、沢山ありますよ。」
ガインさんの怒りに対して、俺はとてもいい笑顔で質問に答える。
「成程な・・・、怒らないから言ってみな。俺の心は海より広いぞ。」
「へぇーーーー、ガインさんの心が広いなんて初めて知りましたよ。その割には何時も小さい事で怒ってますよね?」
「お前は、子供か?小さい事は一々気にするなよ。」
「ははは、僕は子供ですよ。そんな事を一々覚えてるガインさんこそ子供では?」
「何だと!!!」
「何ですか!?」
俺とガインさんはお互いが譲らず睨み合う。
何かあれば直ぐに弾ける風船の様に空気が張り詰めていく。
「はい、はい。おぬしらそこまでにしておくのじゃ。」
「「リリカ様!?」」
「ガインは先ず治療魔法をかけて貰え。クライスはこっちに来るのじゃ。」
リリカ様に仲裁に入ってもらい渋々ながらガインさんとの言い合いを終える。
ルーシアさんがガインさんに近づき詠唱を始める。その傍らでエマさんがガインさんに小言を言っている様だ。
「クライス・・・・、何故『黄昏の光神槍』を使ったのですか?」
「え~~と・・・・、なんと言いますか?」
俺は覇気と怒気を纏ったリリカ様に尻込みしてしまう。
この状況をどう切り抜ける?つい使ってしまいましたって言うか?いや、怒られるのが目に見えている!!考えろ、考えろ。
背中に冷たい何かを感じながら、リリカ様への言い訳を考える。
「申し開きは無いんですね?」
「ええと、セレナが言い出したと言うかインドラが言い出したと言うか・・・。」
「ほぉ~~、精霊の所為にするのですか?」
「いえ、自分も賛同しました。スイマセン!!!」
何かを言えば言う程リリカ様の怒気が膨らむので素直に謝ることにする。
「はぁ~~、初めから謝らんか・・・。今回はわらわが模擬戦を勧めた原因もある。強くは言わんがもう少し周りの事を考えんか?」
「はい、申し訳ありません。少し力が入り過ぎました。」
リリカ様が素直に謝ったことによって怒気を鎮めてくれる。
助かった~~。確かに、少しやり過ぎたよな・・・。
後ろをチラリと覗き見るとガインさんがいた場所を中心に地面が広範囲に抉れて使い物にならなくなっている。
俺が、練兵場の惨劇を眺めていると治療を終えたガインさんが近寄ってくる。
「いい一撃だったぞ!!以前より、魔法の展開速度が上がってるじゃないか。体術はまだまだだな。これからは、もっと反射速度を上げる訓練をしないとな。」
「ガインよ、もう大丈夫なのか?」
「あれぐらいで倒れる軟な鍛え方はしていません。まぁ、少しは肝を冷やしましたが。」
「ほぉ~~、ガインにそこまで言わせるか。良かったのクライスよ。師匠からのお褒めの言葉をいただけたぞ。」
ガインさんの言葉を聞いて素直に驚いてしまう。
俺が驚きで硬直してるとガインさんが追撃してくる。
ボコ!!
後頭部を殴られて鳴ってはいけない音が鳴る。
「痛ってーーーーー!!!」
「調子に乗るなよ。まだまだ、修練が足りていないんだからな。」
「素直に驚くぐらい良いじゃないですか。」
「こ奴らは・・・・、いい加減にせぬか!!!」
俺とガインさんの言い合いがまた始まる気配にリリカ様が呆れ、周りの皆は苦笑いを浮かべているのであった。
本作『精霊と混ざりあった少年』を読んでいただき誠にありがとうございます。
『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。
感想もお待ちしています。(メンタルは弱いので誹謗中傷は控えていただけるとありがたいです。)
皆さんの励ましが原動力になります。




