第10話 名前の由来と戦闘準備
「ひ、姫!!!何故その名前に?」
ハヤトが驚愕の表情で声を荒らげる。
俺達はそんな状態のハヤトさんとリリカ様を交互に眺め事の顛末を静観していた。
「良い名前じゃろ!!」
「そうではございません。何故、その名前を!!忌むべき存在の名を冠する名前を付けるなど!!」
「「「「「「「「忌むべき存在!!!」」」」」」」」
全員の声が重なる。
忌むべき存在?九尾は縁起が悪いのか?それとも、ハヤトさんの故郷とかに関係があるのか?
皆が名前に関しての思案をしているとリリカが答えを紡ぐ。
「ハヤトよ、おぬしが言うのは白面金毛九尾の狐の事じゃろ?」
「左様です。やはり、ご存じでしたか。」
「様々な文献を読み漁ったからの。確かに白面金毛九尾の狐はおぬしの国では三大大妖の一つじゃな。しかし、わらわが名前を取ったのは神獣である天狐の方じゃよ。九尾に至る過程が如何であれ善と悪は表裏一体。わらわ達が関するは善であるぞ。我々が道を間違わなければよいのじゃ。」
「し、しかし・・・・。名前を公表すれば少なからず反感を買いまするぞ。」
「そんな事は構わん。大事の前の小事と思えば我慢など幾らでも出来よう。まさかと思うが此処に居るもので器量が狭い物などおらんじゃろ?」
リリカ様の問いに俺達は力強く頷く。
しかし、九尾って名前にそんな意味があるんだな。白面金毛九尾の狐?が悪で天狐が善の神獣だっけ。九尾になるまでの行いで善か悪かに変わるのか。凄い存在がハヤトさんの故郷にはいるんだな。
「わかりました。姫が言われるなら従います。しかし、努々忘れなきよう。この名前は遅かれ早かれ姫の思惑以上の事柄を引き寄せると。」
「心配など無用ですよ。あなた達の懸念など、私が全て払拭してみせましょう。」
リリカが王族の覇気を纏い皆に喝を入れる。
たった一言だが、全てを任せてこの人を守り通そうと思わせる雰囲気であった。
「さて、名前に関してはもうよかろう。後はお互いの実力の確認じゃな?特にハヤト・ペイン・マーガレットはクライスとエリスの実力を知らんじゃろ?この機会に二人の実力を確かめると良い。」
えーーーと、リリカ様がいきなり戦えと言ってるように聞こえたが?え!!!その為に練兵場に集まったの?ガインさんとエマさんがいる時点で嫌な予感はしてたけど・・・・。
俺が一人背中に嫌な汗をかきながら顛末を見守っているとリリカ様が更に言葉を続ける。
「ガインよ、おぬしとクライスが戦うがよい。おぬしならクライスも本気が出せよう。」
「宜しいので?本気なら手加減は難しいですよ。」
「その為にエマがおるんじゃろ。エマよ、結界を頼んだぞ。」
「ええ、承りましたわ。私も弟子の成長を久しぶりに確認したいですから。」
「エマが結界をかけてくれるなら大丈夫だな。クライスよ、半年ぶりだが腕は鈍っておらんだろ?」
うわーーーーー。ガインさん目がギラギラ光ってますよ。獰猛な笑みも止めてください。エマさんも弟子の成長とか?どちらかと言えば最近はエリスにご熱心でしたよね?俺には魔力制御を教えてから放置でしたよね?
俺が一歩後退ると一歩前に歩み寄るガインさん。
だ、駄目だ、戦闘態勢に入ってる。リリカ様にまだ確認事項があるのに。このままでは始まる。
「リリカ様!!!インドラとセレネはどうするんですか?」
俺はリリカ様に一番重要な事を尋ねる。
「使って構わんぞ。インドラとセレネも戦いたいじゃろうし。」
「「「インドラ?セレネ?」」」
ハヤト・ペイン・マーガレットの三人が首を傾げる。
げ!!!リリカ様説明してないんですか?いきなり出しちゃって大丈夫なんですか?
俺が驚愕で固まっているとリリカ様が助け舟を出してくれる。
「三人とも、これからガインとクライスが戦うが驚く出ないぞ?特にクライスにな。ガインの事はおぬしらも知っていると思うがクライスの事は知らんじゃろ。これから夢かと間違える光景が繰り広げられるから心して観戦するように。あと、まだ他言は無用じゃ。然るべき時が来れば公表される。」
俺は三人が要領を得ていない顔で頷くのを見届けるとガインさんと向き合う。
ガインさんは既に準備が完成しており何時でも来いと言わんばかりに闘気が迸っている。
俺は覚悟を決めて上着を脱ぎ、邪魔にならない様にエリスに預ける。
露わになるのは12歳の少年とは思えない鍛え上げられた肉体と異質な両腕。
「ごめん、預かってて。」
「頑張ってね。」
「ははは、死なない程度に頑張るよ。」
「すーーーーーーーー、はーーーーーーーー。」
深い深い深呼吸。
自らの魔力を両腕に集める。
途端に、輝きだす両腕。
右腕は黄金色に、左は白銀に。
其々が光り輝き混ざり合いながらクライスを包み込む。
クライスを包み込んだ二つの光から突然声が響き渡る。
「はっはっはっは!!!ようやく我を呼び出しかクライスよ、待ちくたびれたぞ。」
「もう~~煩いわね、インドラは。まぁ久しぶりの戦闘だし、気分が高ぶるのはわかるわ~~。」
声が響き渡った後にクライスの左右に浮遊する二体の圧倒的存在。
言動から男性と思われる上半身裸の雷を纏った存在。
間延びした言動の白銀のAラインドレスを着た女性と思われる存在。
二年前とは比べられない程に変化した精霊がクライスの呼びかけに今姿を現した。
今回の話に出てきた白面金毛九尾の狐は伝承等とは一切関係ないとは言い切れませんが筆者の想像の存在です。
筆者は個人的に神話や伝説等をこよなく愛する存在であります。
今回の九尾は悪にも善にもなる存在として名前を出させていただきました。
不快感を感じる方もいるかもしれませんがそこはご了承していただけるとありがたいです。
本作『精霊と混ざりあった少年』を読んでいただき誠にありがとうございます。
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