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四話目です!
「あ、いたいた♪」
モロミちゃんがパソコンの画面を指差すと、画面の端っこでクネクネと腰を振る志茂田〇樹風の男がとても見覚えのある兄貴を襲おうとしていた。
「この世には男と女しか居ない。つまり女を好きになるか男を好きになるかは常に二分の一。俺のために神が投げたコインは裏だった。だから何も問題は……無い!!」
「ノー!! アイムノンケ! ノーファックミー!!」
画面の端っこで泣き叫ぶ兄貴。忍び寄る志茂田〇樹風の男。う~む、暫く見ていたいが兄貴がそっちの道に目覚めると困る。……いや、困らないかな?
「嫌よ嫌よも?」
「なわけあるかー!! 嫌な物は嫌なんじゃー!!!!」
ニヤリと笑う志茂田〇樹。このまま電源引っこ抜いてやろうかな? でも画面の中の兄貴があまりにも情けなく喚くので、私は助け船を出すことにした。
「モロミちゃん、流石に実の兄のロストバージンを目の前にするのはちょっと……」
「え、ダメぇ? 分かりました。何とかしてみますよ~」
ゴンッ!
モロミちゃんがパソコンを思い切り叩くと、画面からフッと兄貴の姿が消えた。ついでに志茂田〇樹も。……何処行った? もしかして消滅した?
「あ、ちょっと強すぎたかな?」
「モロミちゃん? バージンどころか、この世からロストしちゃった?」
「アーッ!!!!」
その時、隣の部屋から雄猫がオカマを掘られた様な声が聞こえた(いや、別にそんな声聞いたこと無いけれど、それ以外に例えようが無いくらいに見事な雄声だった)
「隣の部屋に居まっせ♪」
「うん、ありがとう。でもバージンはロストしちゃったみたい……」
「記憶……消しちゃうぅ?」
「えっ!? 出来るの!?」
凄い、流石パソコンから現れただけあっけ何だかデジタルな人間! ついでに私の忌々しい記憶も消して貰いたい!
「僕の脳下垂体に電子チップを埋め込んであるから、アイツ経由で他人の記憶を弄るのはお手の物だよ~」
うぅ~ん? サラッと恐ろしい事言わなかったかな?
「お兄さんの方はこーやって、魔法でチョチョイ……っと」
カタカタカタ……タァーン!
あ、最後にエンターキー思い切り叩くのはそっちでもお決まりなんだ……。
「はい、二人の記憶を消したよ~」
「ヤベェ……理解が追い付かないわ~」
「ノー!! アイムノンケ! ノーファックミー!!」
……あれ?
「嫌よ嫌よも?」
「なわけあるかー!! 嫌な物は嫌なんじゃー!!!!」
「アーーーーッ!!!!」
再び雄猫がゴミ箱にぶち込まれオカマを掘られる声が聞こえた訳で……変わんないじゃん?
「……どゆことモロミちゃん?」
「二人の記憶が消えたから、もう一回恋が始まっちゃったみた~い♡」
「みた~い、って……記憶って、もう一回消せる?」
「もう全てのプログラミングは終わってるから、エンターキーを格好良く押すだけで発動出来るよ?」
魔法ってそこなんかい! と脳内ツッコミを入れながら、私はタァーン!と華麗にエンターキーを押した。
「ノー!! アイムノンケ! ノーファックミー!!」
……あれ?
「嫌よ嫌よも?」
「なわけあるかー!! 嫌な物は嫌なんじゃー!!!!」
「アーーーーッ!!!!」
──タァーン!!
「ノー!! アイムノンケ! ノーファックミー!!」
……うふふ、何だか楽しくなってきたかも!?
「嫌よ嫌よも?」
「なわけあるかー!! 嫌な物は嫌なんじゃー!!!!」
「アーーーーッ!!!!」
──タァーン!!
「ノー!! アイムノンケ! ノーファックミー!!」
でも……無限ループって怖くね?
「嫌よ嫌よも?」
「なわけあるかー!! 嫌な物は嫌なんじゃー!!!!」
「アーーーーッ!!!!」
──タァーン!!
「ノー!! アイムノンケ! ノーファックミー!!」
「アーーーーッ!!!!」
──タァーン!!
「アーーーーッ!!!!」
──タァーン!!
「アーーーーッ!!!!」
──タァーン!!
「アーーーーッ!!!!」
私はクスクス笑いながらエンターキーを押し続けました。兄貴の悲鳴は毎回鮮烈だけど、だんだん飽きてきちゃったかな?
「うーん、少しメリハリが欲しいかなぁ……」
「例えば?」
「ただ抜け出すだけじゃつまんないし……あ、そっか! モロミちゃん、兄貴と付き合っちゃえば?」
「……うぇ!?」
唐突ですが次回、最終回!!




