色々と御馳走様なひと
包囲網を張って行きたいと思います。
「起床~!」
寮棟の入口から廊下を走る。
一番奥の部屋からドアを開け
「おはようございます!起床お願いします!」
部屋の誰かが返事をするまでしつこく起こす。
手前に寝ていた1年生の手が上がり
「おはようございます……」の挨拶があった。
よく見ると、奥で寝ていた先輩の足がそいつをゲシゲシ蹴っていた。
第4棟まで起床にまわり、ランニング、点呼、寮内清掃を終え
やっと朝食の時間。
急がないと一限目に遅れる
みそ汁とTKG、たくあんをかみ砕き茶で流し込んだ。
寮棟から講義棟まで歩いていたら、専攻教室の前で教授の指導が入った。
ドリップ珈琲を二人分用意して、教授と自分の前に持って行く。
珈琲は教授の差し入れで
専攻生は何時でも好きなものを飲んでいいと豆を渡された。
学生用には普通のブレンドだが
今日は教授も飲まれるのでブルマンブレンドを入れる
教授と自分の珈琲の好みが同じでよかった。
今度お疲れ様の彼に
マッサージをさせて貰えないか聞いてみよう。
首とか肩とか
背中から腰、臀部に太股
ふくらはぎと細い足首
親指より人差し指の方が長い自分好みの足
機嫌の良い時にみせる目尻によせられたシワ
細い首を上下する喉仏……。
きっと今自分の目付きはヤバい
気付かれないように視線を珈琲に移し
両手で持ったマグカップで自分のくちもとを隠した。
色々と御馳走様なひとである。
構内に教員用の職員棟(戸建て群)が在るが
教授は車で来られている。
「教授のお住まいは職員棟ではなかったですよね?」
家に学生達がなだれ込んで来ないという事だ。
下心を隠した優等生の顔で聞いてみた。
「論文の資料になる書籍をお持ちでは無いですか?」
寮生のほとんどが帰省するので金曜日の夜点呼は無い
勿論教授もご存知だ。
「ええ。私はこの年まで独り身ですが本の虫なので借り暮らしは無理です。
資料も多数ありますから今日は私と帰りましょう」
マッサージのお伺いは今夜にしよう。
色々と御馳走様なひとである。
お読み頂いてありがとうございます。
誤字等、ありましたら申し訳ございません。
金魚の話し
45センチ水槽を3つ稼動中であります。