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君、愛し恋し  作者: can
16/26

車検

黒毛和牛の種牛は1トン越えのご立派様。

よろしくお願いします。





「教授?」

前方を歩いているスーツの後姿に走る速度を上げる。

豆大福を買いに行くついでに獣舎に寄るつもりだったのでジャージを着ている。

大人と子供の様で、スーツの隣にジャージで立ちたくはなかったが

こんな所を一人で歩いている教授が心配だ。

驚かさないように鞄を持つ方の肘をそっと掴んで声を掛ける。

「お車はどうされたんですか?」

後ろから走って来た足音が聞こえていなかったのか

目を見開いて固まるという珍しい教授の顔が見られた。

「あ、ええと、車検に出していてね。今晩納車で……」

視線が肘に来たので、仕方なく手を離す。

「駅までご一緒します」

ひと気の無い道を歩かせるつもりはない。


農道の手前から、カーン…カーン…カーン……。

音が鳴り止まない。

「火事でしょうか?」

教授が不安顔できいてくる。

「すみません、少しお時間いいですか?」

ナンパみたいな言い方をしてしまったが

笑顔付きで承諾を頂いた。

大きな角で太い鉄柵を叩き鳴らしていた彼と目が合う。

柵に顔を押し付けるようにして待っている。

彼の為に軍手まではめてきていたので鼻筋を存分に撫でる。

種牛は体調を崩さないように洗わない。

少し強めに撫でられるのが彼のお気に入りだ。

この獣舎にいる彼らは県下を担うエリート集団である。

彼の獣舎は角にあり見つかると必ず呼んで来る。

とても大切に飼育されているので臭くは無いが

素手でなでくりまわすと流石に手が匂う。

自分と彼の気が済むまで撫でる。(足らないと角で柵をまた鳴らす)

革靴を履いた教授は

少しだけ離れたところで笑いながら待っていてくれた。

目尻のシワがセクシーで困る。


看板も何もないただの通り沿いの民家。

カラカラとガラスがはめられた軽い引戸を開けて二人で中に入る。

赤い棒寒天を使ったものと、普通のこしあんの丁稚羊羹。

あとは豆大福しか置いていない。

ここの豆大福は塩が効いていて甘すぎず美味しい。

何時ものおばあさんが

「今日はお客さんかい?食べていき」

お茶とおしぼりを出してくれた。

確かに何時も豆大福を一個だけ買って帰る自分は客じゃないかもしれない。

教授が丁稚羊羹を2セットと箱入りの豆大福を持ち帰り用で購入している。

「今迄知りませんでしたが、こちらのはとても美味しいですね」

教授と豆大福をならんでたべていたら

「ええ男さんやねぇ」

おばあさんの溜息のような小さな声が聞こえた。

はい。自分の()()()さんですよと心の中でつぶやく。


「ありがとう。良いお持たせが買えました」

無理に付き合わせてしまったと申し訳なく思っていたら

納車に来るカークリニックは弟さんで

渡す良い土産が買えたとお礼を言われた。

駅で教授に手を振っていたら

「遠距離恋愛の恋人同士みたいですね」

言われて固まっているうちに笑いながら教授が帰って行かれた。










お読み頂いてありがとうございます。

誤字等、ありましたら申し訳ございません。

牛の話し

発情期のみる姉さんは

エリート種牛さんの精子を人工授精される。

受精率を上げる為に

人間に二の腕まで突っ込まれて発情検査を受ける。

エリートの種はお安くない。

放牧中にナンパな若い兄ちゃんが

みる姉さんに乗っかり“ドカッ“とやらかす事がある。

やからな兄ちゃんの受精率が良いとか……。

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