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迷宮へ行こう ~探索のお供はケモミミ幼女~  作者: 青雲あゆむ
第5章 特級冒険者編

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98.新たな下級冒険者たち

 俺たちは孤児に魔法の手ほどきをしつつ、彼らに迷宮の攻略を進めさせた。

 幸いなことに、飲み込みのいい子供が、数日で身体強化魔法を使うようになり、戦力が向上していた。

 やがて人狼ワーウルフにもひけをとらなくなってきたので、いよいよ守護者に挑ませることとなる。


「グルルルル」

「どひ~、こええ……」

「びびるな。お前らはリーダーを倒すことに集中しろ」

「は、はい。行くぞ、みんな」

「お、おう」


 3層の守護者部屋に入ると、例のごとく2体のワーウルフと、1体のリーダーが出てくる。

 しかし俺とニケ、ガルバッドがついているので、瞬く間にリーダー以外は片づけた。

 後は5人の子供たちで、ワーウルフリーダーを倒すように指示をする。


「ガノンとバルウは後ろに回り込め。いいぞ、シア。その調子だ」

「「お、おう」」

「は~い」


 レヴィンの指示に従い、みんなでリーダーを囲み、攻撃を始めた。

 中でも獣人のガノン、バルウ、シアの動きがよく、その戦闘はわりと様になっていた。

 やがて袋叩きにあったワーウルフリーダーが、断末魔の声を上げて倒れ伏す。


「はあ、はあ……やった、のか?」

「ああ、たぶんやった。リーダーを、倒したんだ」

「やった~! 私たち、やったよ~、おじちゃん」

「ああ、よくやったぞ」


 猫人族のシアが大喜びで報告にきたので、頭をなでてやると、彼女は無邪気に笑っていた。

 その他の子供たちも、肩で息をしているものの、満足そうな顔をしている。


「よ~し、よくがんばったぞ、みんな。これでお前らも、下級冒険者の仲間入りだ。見習いだった子も、地上で試験を受ければ、昇格できるからな」

「フヒ~……これで俺たちも、下級冒険者かぁ。でもタケアキさんたちに寄生したみたいで、なんかスッキリしないっすね」

「その辺は俺たちがちゃんと見極めてるから、安心しろ。お前たちには、下級冒険者の資格がある。ただし4層から下は、もっと厳しいから、油断はするなよ」

「うん、わたし、がんばって、もっとつよくなるね」

「ああ、その意気だ」


 自分たちに自信を持てないレヴィンを励ませば、最年少のシアの方がやる気を見せていた。

 この子はニケほどではないにしろ、見どころがあるかもしれない。

 今後も気にかけてやろう。


 その後、魔石を回収してから、4層の水晶部屋から地上へと帰還する。

 そしてギルドで手続きをすることによって、無事に新たな下級冒険者が誕生した。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「それじゃあ、みんなの昇格を祝って乾杯!」

「「「かんぱ~い!」」」


 その晩は孤児の拠点で、祝宴を開いた。

 新たに下級冒険者となった15人の子供が、満面の笑みで乾杯すると、料理を貪りはじめる。

 俺ものんびりと酒を飲みながら、料理を楽しんでいたら、年長のレヴィンとジリットが寄ってきた。


「タケアキさん、おつかれっす」

「おつかれっす」

「ああ、お前らもな。下級冒険者になった気分はどうだ?」

「最高っすね。俺みたいなやつでも、やればできるんだって、実感してます」


 レヴィンがやけにさっぱりした顔で、そう言う。

 最初はタメ口を利いていた彼も、最近は敬語を覚えた。

 ちょっとチンピラっぽい喋り方は、ジリットの影響だ。

 するとジリットもとても嬉しそうに、心境を語る。


「俺もっすよ。まさかこんな形で、自立できるなんて、予想外っすね」

「そっか。まあ、大変なのはこれからだけどな」

「あ、それなんすけど、今後は俺たちだけでやるのって、マジすか?」

「基本的にはマジだ。だけどギルド推薦の冒険者が、面倒みてくれるように手配している。俺たちは深層の探索で忙しくなるから、直接は見れないってだけだ」


 すでにギルドには、面倒を見てくれるベテラン冒険者の募集を掛けている。

 ギルドが身元を保証できるようなベテランに、子供たちの面倒を見てもらいつつ、彼らの成長を促す計画だ。

 願わくば、上級まで上がっていけるような人材が、出てきて欲しいと思う。

 しかしレヴィンもジリットも、浮かない顔だ。


「……やっぱそうなるっすか。だけど俺たちみたいな孤児、ちゃんと相手してくれますかね?」

「ギルドでそれなりの人を選んでくれるから、大丈夫だと思うぞ。それに俺たちが後ろ盾なんだ。めったなことはないだろう」

「う~ん、そう言われれば、そうっすよね……分かりました。がんばります」

「タケアキさんたちの顔に泥を塗らないよう、気合いを入れるっす」

「おう、がんばれ」


 改めて激励してやると、レヴィンが思い出したように言う。


「あ、そうだ。ちょうどいい頃合いなんで、他の孤児を誘いにいっても、いいすかね?」

「他の孤児って、俺の誘いを断った奴らか?」

「ええ、あまりに話がうますぎるってんで、乗ってこなかったんすよね。だけどこの冒険者証を見せれば、説得力が増すでしょ?」


 そう言ってレヴィンが、銀色のプレートを掲げる。

 それは彼らが苦労して手に入れた冒険者証であり、8等級の刻印が刻まれている。


「そうだな。ちょっと前まで同じ境遇だった人間が、下級冒険者になったと知れば、話に乗ってくるかもしれないな。だけど住むところはどうするんだ?」

「まだこの拠点には余裕があるから、大丈夫っすよ。タケアキさんのお手は、わずらわせないっす」

「そうか。なら、好きにやってくれ。それにしても、お前も面倒見がいいな」

「いやいや、なんの関係もない孤児に手を差し伸べた、タケアキさんほどじゃないっすよ」

「ハハハ、それもそうか」


 彼が言うように、最初に手を差し伸べたのは俺の方だ。

 しかしそのおかげで、他の孤児も救われるなら、やった甲斐があるというものである。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 結果的に、レヴィンの説得は成功した。

 さすがに彼らが短期間で下級冒険者に成り上がった事実が、効いたのだろう。

 新たに人族の男子が7人と、獣人男子3人が、孤児の拠点で暮らすこととなる。

 これでこの街で浮浪児をやっていた子供は、全部だそうだ。


 新人の世話は基本的にレヴィンたちが見ることで、話がついていた。

 俺たちもたまに稽古をつけてやるぐらいはするが、すでに下級冒険者になった者が15人もいるのだ。

 新人の面倒ぐらい、見れるだろう。



 しかし実際に深層の攻略に取り掛かろうと動きだしたところで、面倒な話が舞い込んできた。


「他の貧民が騒いでるって?」

「そうなのよ。孤児だけ優遇するのは不公平だから、自分たちにも援助してくれって。大勢で押しかけられて、参ったわ」


 ギルドのステラから相談があると言われて来てみれば、貧民の陳情ちんじょうがあったという話だった。

 そういえば、孤児を集めたときの炊き出しにも、何人もの大人が来ていた。

 そんな奴らが中心となって、ギルドに押しかけたんだそうな。


「連中は具体的に、何を望んでるんだ?」

「いろいろ言ってたけど、基本的には武具の貸し出しと、迷宮探索のサポートね。冒険者が増えるんなら、ギルドとしてもメリットがあるだろうって」

「へ~、それならやってみれば」


 俺が突き放した言い方をすれば、ステラは唇をとがらせる。


「それができたら、苦労しないわよ。何よりも予算が無いわ」

「いやいや、そこはなんとかやりようがあるでしょ。冒険者を増やすのは、ギルドの大事な仕事だし」

「ただ増やせばいいってもんじゃないのよ。それに特級冒険者にだって、協力する義務はあると思うんだけど?」

「うわ、出た。俺たちはすでに、孤児の育成で十分貢献してるって~の」

「それを言うなら、うちだって協力してるじゃない!」


 互いに言いたいことを言っていたら、にらみ合いになった。

 しかしただにらみ合っていても埒が明かないので、俺たちは同時にため息をつき、打開策を探る。


「はぁ~~~っ……それで、そっちとしてはどうして欲しいわけ?」

「はぁ~~~っ……できればまた、資金援助をして欲しいの。そうすれば武器の貸し出しには、対応できるから」

「う~ん……なんか納得いかないな。こっちは完全な持ち出しでやってるのに、さらに負担を強いられるなんて、おかしいじゃないか」

「それを言うなら、ギルドだって同じよ。子供の支援体制を作るのに、けっこうな手間が掛かってるんだから」

「だったらつっぱねればいいだろ? いちいち取り合ってたら、仕事が増えるばかりだ」


 するとステラは苦虫を噛み潰したような顔で、愚痴をこぼす。


「10人以上もの人たちに、何回も押しかけられる身にもなってみてよ。あいつら本当にしつこいのよ」

「そいつは、嫌だな……」


 どうやら厄介なことに巻き込まれたようだ。

 しかしまあ、話を聞くぐらいは、してみるか。

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[一言] ギルドが特級冒険者の邪魔しても良いのかな?
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