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迷宮へ行こう ~探索のお供はケモミミ幼女~  作者: 青雲あゆむ
第5章 特級冒険者編

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95.孤児たちの成長

 孤児たちを迷宮に潜らせて3日ほど経つと、今度は2層へ降りた。

 すでにゴブリン狩りで十分に経験を積んでいた彼らは、犬頭鬼コボルドにもそれなりに対応する。


「ウー、ガウー!」

「バウバウ!」

「うわっ、けっこう強いぞ、こいつら」

「びびるな。みんなで囲むんだ」


 今は3匹のコボルドを相手に、新人が戦っている。

 もちろん俺やニケ、ガルバッドはいつでも助けに入れるよう、準備はしている。

 しかし意外に要領のいい子供たちは、さほど掛からずに敵を殲滅してしまった。


「お疲れ、ジリット。初見でよく対応できたな」

「へへへ、これぐらい、どうってことないっすよ。ゴブリンより、ちょっと力が強いぐらいっすよね」

「まあ、そうだな。だけど油断するなよ」

「うっす」


 狼人族のジリットは、素直に忠告を受け入れた。

 15歳の彼は灰色の髪に黒い目を持つイケメンで、今日のチームリーダーであり、獣人種のまとめ役でもある。

 この世界では成人とみなされる年だけあって、体もそれなりにたくましく、ちょっとした戦士の風格がないでもない。

 それでいて腰が低く、ちゃんとニケにも敬意を払うという、できた奴である。

 今いる孤児の中では、最大の有望株かもしれない。


 魔石を採取すると、俺たちはコボルドに対する注意事項を、改めて口頭で伝える。

 すると彼らはさっきの経験を元に、いくつか質問をして、より理解を深めていた。

 今日の連中はなかなか筋が良さそうだ。


 ちなみに今日のメンバーはジリットの他に、人族のニグン、ケイル、アロン、そして狐人の女の子ノインである。

 ジリットのリーダーシップが高いせいか、チームの連携も悪くない。

 その後も危なげなくコボルドを狩り続け、夕刻には地上へ戻った。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 2層での戦闘を2日も続けると、子供たちはコボルドとの戦闘に慣れたようだ。

 ここまでに全ての子供たちの強化度が上がり、身体能力も増している。

 そこで次はいよいよ3層へ行くことにした。


「ガルルルル……」

「うへえっ、こええ」

「だだだ、大丈夫だって」

「お前、声が震えてんぞ」

「ちょっと! 早く突っこみなさいよ」


 しかし子供たちは遭遇したばかりの人狼ワーウルフに、びびりまくっていた。

 今日のメンツは人族のエリオ、ニール、獣人のガノン、ベドゥン、ベナだ。

 15歳のエリオには、もっとリーダーシップを取ってほしいのだが、彼はかなりのビビリである。

 そこで女子年長のベナに叱咤され、ガノンとベドゥンが前へ出たのだが、ふいにワーウルフが襲いかかってきた。


「ガウッ!」

「ヒイイッ」

「ていっ!」


 ワーウルフがガノンに爪を振るったのだが、ニケがそれを払いのけた。

 すでに強化度が8にもなる彼女にとって、それぐらいはなんでもない動作だ。

 彼女はそのまま適度に敵をボコって弱らせてから、子供たちに後を譲る。


「よわらせたから、たおすでしゅ」

「はいっ、ありがとうございます」

「おい、行くぞ」

「お、おう」


 その後は5人でよってたかって、なんとかワーウルフを倒した。

 そのまま地面に座り込んでへたっている子供たちに、俺は苦笑しながら声を掛ける。


「お疲れさん。だけどワーウルフ1匹ぐらいで音を上げるなんて、ちょっと情けなくないか?」

「勘弁してくださいよぅ。俺、荒事には向いてないんすから」

「そういう泣き言は、聞きたくないな~。俺とニケなんて、たった2人でワーウルフ倒してたぞ。最初から」

「クエ~」

「ああ、ゼロスもいたな」


 たしかに最初は人手が足りないので、ゼロスが動き回って敵を撹乱したりもしていた。

 しかしあの頃のゼロスは小さくて、攻撃力はほぼゼロだったのだ。 

 そんな状態で、よく戦っていたものである。

 おかげでアルトゥリアスが加わってからは、格段に楽になった記憶がある。


「マジかよ。やっぱり特級冒険者になる人は、なんか違うんだ」

「ううっ、やっぱ俺、冒険者に向いてないのかな~」

「情けないわね、あんたたち。ほら、魔石を取るわよ」


 俺とニケの話を聞いて泣き言を漏らす男子を、ベナが叱責する。

 虎人とらびとの彼女は15歳という年齢もあり、体が大きく力も強い。

 そのためほとんどの男子より戦闘力が高く、軟弱な奴が歯がゆいのだろう。


 その後もベナが主導する形で狩りは進み、それなりのワーウルフの魔石を手に入れて、地上へ戻った。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 自宅へ戻ってから、他のグループの様子を訊いてみる。


「そっちの様子はどうだった? ルーアン」

「おう、けっこう順調だったぜ。ジリットとノインは見どころがあるし、ニグンやケイル、アロンもがんばってたな。なんかあったのか?」

「う~ん、エリオとニールが、すっかりワーウルフにびびっちゃってね。ベナはけっこう強いし、ガノンとベドゥンも悪くないんだけど……」

「そっか~。まあ、向き不向きはあるだろうからな……」


 するとメシャも、受け持ちの子供について語る。


「こっちはレヴィンが、がんばってたよ~。でもオデロとセッテがビビリかな~。シアちゃんの方が、よっぽど積極的~」

「ああ、やっぱり? 獣人の女の子はみんな肉食系だよな」

「アハハ、そんな感じだよね~」


 獣人女性を肉食系と形容したら、メシャが面白そうに笑っていた。

 しかしこっちは笑い事ではない。


「とにかく獣人の子は、体力もあるからなんとかなりそうだけど、問題は人族の一部だな」

「冒険者には向いてねえってか。それならいっそのこと、地上で働かせるか?」

「う~ん、そうしたいのはやまやまなんだけど、女の子だけでも苦労してるからなぁ」

「ああ、例の話か……」


 5人いる人族の女の子たちだが、拠点近くの商店やら飲食店で、働かせてもらっている。

 しかし2人ほど手癖てくせの悪い子がいて、商品やお金をちょろまかしたらしいのだ。

 そのため彼女たちは勤めを断られ、今は拠点で家事をやっている。


 一応、人様のものを盗ってはいけないと、説教はしたのだが、ついこの間までギリギリで生き伸びてきたような子供たちだ。

 今ひとつ倫理観が噛み合わず、満足に説得はできていない状況だ。

 そのような状況で、地上勤務を増やすのは難しいだろう。

 俺は頭をかきながら、ぼやいた。


「まったく……面倒だとは思っていたけど、想像以上だな」

「そりゃ仕方ねえよ。完全にわかり合うなんて、できやしねえからな。だけどこれぐらいで諦めるつもり、ねえんだろ?」

「もちろんさ。ここで投げ出すぐらいなら、最初からやらない。だけどこれからは、ちょっと厳しくするのもありだろうな。なんだかんだいって、甘えが見えてきたから」

「ん~、そうだな。与えられるばかりじゃ、勘違いもするだろう」


 するとそれまで黙って聞いていたアルトゥリアスが、話に加わってきた。


「指導を厳しくするのは賛成ですね。やはり必死にならないと身につかないことも、多いですから。ついでに不祥事を起こした子供にも、迷宮探索をさせてはどうでしょうか?」


 アルトゥリアスの厳しい提案に、俺も悪い笑顔で答える。


「実は俺も、それは考えてるんだ。一度、迷宮に叩き込んでやれば、もっと反省するかなって」

「フフフ、そうですね。迷宮で命を懸けるか、地上でまっとうに生きるか、選ばせればいいのですよ。それと、そろそろ魔術の指導も始めようかと思っています」

「あ、適性とか、分かってきた?」

「ええ、何人かは、見込みがありそうですよ」


 現状は子供たちに前衛だけやらせているが、いずれは魔術の指導もすることになっていた。

 最初からやっていないのは、まず戦闘センスがあるかどうかを見たかったのと、魔術適性の有無を確認していたからだ。

 それには魔力の扱いを教えねばならず、その成果が出てきたようだ。


 仮に前衛には不向きでも、後衛の仕事ができるなら、そちらの方が幸せだろう。

 困難な探索でも、チームワークで乗り切ればいいのだから。

 俺自身、仲間に恵まれたという実感がある。

 それを子供たちにも、教えてやりたいものだが。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ガノンが重複して2チームにいる。 代わりに、セッテがいない。
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