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迷宮へ行こう ~探索のお供はケモミミ幼女~  作者: 青雲あゆむ
第5章 特級冒険者編

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93.動き出した計画

 貧民街で炊き出しをしながら、孤児を集めてみた。

 するとレヴィンて奴にいろいろ聞かれ、そいつを説得したら、多くの孤児が集まってきた。

 その数ざっと20人といったところだ。


「よし、今からお前らのねぐらに行くぞ」

「俺たちのねぐらに来て、どうすんだよ? 自慢じゃねえが、ひでえぞ」

「いやいや、新しいねぐらのことさ。実は領主様に話を通して、この近くに家を借りたんだ。まあ、ボロ家らしいけどな」

「へ~、さすが、準備がいいんだな」

「まあな。さあ、移動するぞ」

「「「うい~っす」」」


 俺たちが先導すると、集まった孤児たちがぞろぞろとついてくる。

 そうして10分ほど歩くと、大きな建物の前にたどり着く。


「さあ、これがそうだ」

「これは家っていうより、倉庫じゃねえ?」

「ああ、元はある商人が使ってた倉庫らしいな。その店が潰れたんで、放置されてるんだ」


 ここは子爵の口利きで、紹介してもらった物件だ。

 貧民街に近いのもあって、格安で手に入った。


「そんなの使えんのかよ?」

「使えるって。もちろん多少は手を入れるがな」


 すでに資材や大工は手配してあるし、うちには万能の職人ガルバッドがいる。

 そんなに金を掛けずに、それなりの住み家に改造できると踏んでいた。


「さ、まずは中の片づけだ。また飯を食わせてやるから、働けよ」

「「「うい~っす」」」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 その後、みんなで倉庫の中を片づけていると、あっという間に夕方になった。

 とりあえず寝るところを確保できたので、みんなで夕食を摂る。


「さ~、みんな、手は洗ったか? ほら、食い物は十分にあるから、あわてるなって」


 メニューは大鍋で煮た汁物に、パンに果物といった感じだ。

 みんな腹が減っているのか、争うようにして食っている。

 そんな子供たちを見ていると、レヴィンが寄ってきた。


「いや~、久しぶりにあったかいものが食えて、助かるよ。それにしても、これからどうすんだ?」

「大筋は話したとおりだ。まずはこの拠点を整備してから、みんな仕事をしてもらう」


 するとレヴィンが、少し困った顔で言う。


「……それ、なんだけどさ、本当に迷宮に潜らせるわけ? ぶっちゃけ、びびってる奴も、けっこういるんだけど」

「そうか……別に冒険者だけが、選択肢じゃないんだけどな。だけどこの街で手っ取り早く稼ぐには、迷宮に潜るのが一番だろ?」

「う~ん、そうなんだよな~。だけど俺たちに、できるかな?」

「最低限の装備はこっちで準備してやるし、迷宮内での立ち回りなんかも教えてやる。ただし装備の代金は、後から払ってもらうぞ。なんでもかんでも世話したら、お前らのためにならないからな」

「ああ、そうだな。無理のない範囲なら、構わないよ」


 俺たちのそんな話に、周りの子供たちが聞き耳を立てていた。

 おそらく不安になった奴らが、レヴィンに相談したのだろう。

 ここでふと気になったことを、訊いてみた。


「そういえば、レヴィンはどうして孤児になったんだ? ああ、言いたくなかったら別にいいぞ」


 すると彼はあっけらかんと、話しはじめる。


「いや、それがさ~、俺の父親って、行商人だったんだよ。近くの街なんかを行き来して、物を売ってたの。だけどある日、帰ってこなくなってさ~。ど~も、盗賊にでもやられたらしいんだけど、おかげで店は破産よ。しばらくはおふくろが1人で養ってくれてたんだけど、無理がたたったのか、流行病でポックリいっちゃってさ~。以来、いろんな所を渡り歩いて、なんとか生きてきたってわけ」

「……そっか。けっこう苦労したんだな。実はけっこう、悪いこともやってたりすんのか?」

「さあ、それはどうかな~……ま、きれいごとだけじゃ、生きてこれなかったとは、言えるかな」


 レヴィンは大げさに肩をすくめ、とぼけてみせる。

 おそらくかっぱらいとか、スリみたいなことも、やってきたのだろう。


「ま、そうだろうな。俺も昔のことを責めるつもりはないんだ。ただこれからは、安易に悪事に手を出すんじゃないぞ。そして働いて余裕ができてきたら、それを周りの人にもおすそ分けして欲しいんだ。そしたら、より多くの人が幸せになれるだろ?」

「アハハ、人を思いやれるほどの余裕なんて、できるのかねえ。だけど悪事に手を出さないってのは賛成だ。まっとうに生きていけるなら、それに越したことはないからな」

「ああ、そのとおりだ」


 周りの子供たちにも目をやると、コクコクとうなずいている者がいた。

 彼らなりにこの機会を無駄にしないよう、覚悟を決めているのだろう。

 こうして孤児たちとの付き合いが始まった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 あれから2日ほど掛けて生活環境を整えると、次は職探しだ。

 まず20人の内訳はこのようになっている。


人族男子:レヴィン(15歳)、エリオ(15)、オデロ(14)、ニグン(13)、ケイル(13)、アロン(12)、ニール(11)


人族女子:エレン(15)、ニーナ(14)、シャロン(13)、ネイ(13)、アナ(12)


獣人族男子:ジリット(15)、ガノン(13)、セッテ(12)、バルウ(11)、ベドゥン(11)


獣人族女子:ベナ(15)、ノイン(12)、シア(10)


 つまり人族は男子が7人、女子が5人。

 それに獣人族の男子が5人に、女子が3人だ。

 実はこの他にも10人ほど孤児はいるらしいのだが、何か訳があるのか、俺の誘いには乗ってきてない。

 まあ、今いる連中がうまくいけば、そのうち合流するのではないかと思っている。


 そしてこの20人の中から、冒険者もしくは見習いになることを了承したものは15人だった。

 男子は12人全員で、女子は獣人の3人のみ。

 やはり人族の女子は体力に自信がないのか、普通の仕事を望んだ。

 まあ、それは想定内だったので、その子たちは孤児院の家事をしつつ、近くの店で手伝いをすることにした。


 ここまで決まると、まずは探索用の装備調達だ。

 俺は希望者たちを連れ、なじみの武具屋へ行く。


「さあ、各自、希望の武器を言えよ。防具の調整はだいたいでいいぞ。後でガルバッドが見てくれるからな」

「お、俺は剣がいい」

「俺も!」

「俺は……槍かな」


 わいわいと武器や防具を求める孤児たちに、店員が忙しそうに応じてくれる。

 この辺は、特級冒険者としての知名度がものを言った。

 そうやってひと通りの武具を揃えると、俺がまとめて金を払う。

 基本的に中古の武具で済ませたので、その代金はせいぜい金貨7枚に収まった。


 それでも子供たちは驚いていたが、俺たちの装備についてちょっと教えてやったら、さらに驚いていた。

 ぶっちゃけ、今回の10倍以上、金掛けてるからな。

 彼らも余裕ができたら、装備には金を惜しむなと教えておいた。


 装備の調達が済めば、今度はギルドへの登録だ。

 俺はガキどもを連れて、冒険者ギルドを訪れた。


「いらっしゃい、タケアキさん。その子たちが、例の孤児ね?」

「ああ、そうだ。登録を頼むよ。15を越えてるのは3人だけだから、後は見習いだけど」

「了解したわ。さあみんな、こっちへ来て」


 すでに話の通っているステラに頼むと、快く引き受けてくれた。

 そのスムーズな進み具合に、ガキどもは拍子抜けした感じだ。


「冒険者ギルドも巻き込んでるって、本当だったんだな」

「さすがは特級冒険者、なのかな?」

「なんにしろ、これで俺たちも冒険者だ」

「まだ見習いだけどね~」


 こうして孤児たちの登録は、つつがなく終わった。

 さて、次はこいつらに、探索の仕方を教えてやろうか。

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