表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮へ行こう ~探索のお供はケモミミ幼女~  作者: 青雲あゆむ
第5章 特級冒険者編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/115

91.孤児救済計画

 ギルドの前で石を投げてきた浮浪児たちは、昔ニケをいじめたガキどもだった。

 しかし飯を食わせて話をしてみれば、素直に謝ってみせたりもする。

 それでもやはり馬鹿なので、失言をして雰囲気が悪くなりかけたところへ、仲裁に入った。


「まあまあ、ルーアン。子供の言うことに、いちいち目くじら立てるなよ」

「だけどよう、タケアキ。こいつ俺らの前で、堂々と獣人を差別してんだぜ」

「とりあえず俺に任せてよ。ちゃんと言って聞かせるから」

「まあ、タケアキがそう言うなら……」


 とりあえずルーアンを黙らせると、俺は改めてガキどもに向かい合った。


「お前らの他にも、家なしの孤児とか、いっぱいいるのか?」

「……は、はい。この街だけでも、孤児のグループはいくつかあります」


 ちょっと間を置いて、ニグンがそう答える。


「ふむ、やっぱりな。それで人族と獣人族は、別々に分かれてるのか?」

「ええ、そうですね。普通は獣人と知り合う機会も、ないですから」

「だろうな。それでそれぞれの行動範囲を設けて、住み分けてるところに、ニケが入り込んできた。それにムカついて、意地悪したって感じか?」


 するとニグンはバツが悪そうに、それを認める。


「えっと、まあ……そんな感じです。今考えてみると、あんな小さい子供に、ひどいことをしたかもしれません」

「そうだな。ニケはお前らの妨害で宿も食料も失くして、路地裏で死にかけてたんだぞ」

「そんなことしてたのかっ!」

「ひっ、すみません」

「ごめんなさい、ごめんなさい」


 ある程度、事情を知っているくせに、ルーアンが改めて怒ってみせると、ガキどもが怯えて謝る。

 俺は苦笑しながら、彼をなだめた。


「まあまあ、生きるのに必死な子供に、そこまで言うのも酷だよ。ニケもそんなに怒ってないだろ?」

「ん~……ちょっとふくざつだけど、あたしはこうして、タケしゃまにあえたから。そんなに、おこってないでしゅ」

「うん、いい子だ」

「エヘヘ……」


 またニケの頭をなでてやると、フニャッと表情が和らいで、尻尾がフリフリする。

 安定のかわいらしさだ。

 ちょっとなごんでから、またガキどもに向かい合う。


「それで、だ。これも何かの縁だから、俺はこの街で困ってる孤児に対して、少し手助けしたいと思う」

「えっ、なんでですか?」

「おいおい、タケアキ。何、言いだすんだよ?」


 ガキどもが揃って不思議そうな顔をすると同時に、ルーアンが不満の声を漏らす。

 しかし俺はそんな彼をなだめて、説得に掛かる。


「まあ、聞けって。お前らがニケに意地悪したのも、ニケが死にそうになったのも、孤児の受け皿がないからだろ? 俺はもう、ニケみたいな子供を見たくないんだ。だから孤児を支援する仕組みを作って、かわいそうな子供を、少しでも減らしたい」

「だけどタケアキ。そんなの、俺たちの仕事じゃねえぜ。それこそ、領主様のお仕事だ」

「俺もそう思うよ。だけど俺たちは特級冒険者になっただろ? 特級ってのは貴族に準ずる立場だからな。その真似事をしても、それほどおかしい話じゃない。それに実はもうひとつ、狙いがあるんだ」


 俺がちょっと間をおいたところで、アルトゥリアスがそれを言い当てた。


「フフフ、孤児の中から、冒険者を育てるんですね?」

「さすが、アルトゥリアス。なんで分かった?」

「それこそタケアキの考えそうなことですからね。冒険者を増やすというのであれば、その頂点に立つ者として名目も立ちます」


 するとオデロが、すごい勢いで噛みついてきた。


「ちょ、ちょっと待てよ。俺たちに、迷宮へ潜れって言うのか? そんなの無理だよ。死んじまうじゃねえか!」

「落ち着きなさい。何も裸であなたたちを、迷宮へ放り出すのではないのですから。察するに、希望者に装備を貸し与え、多少の訓練を施してから、迷宮へ送るのでしょう?」


 するとアルトゥリアスが、バッチリ俺の考えを読み、言葉にしてくれた。


「さすがはアルトゥリアス。よく分かってるな……俺は何も、無理に迷宮探索をさせようってんじゃないんだ。やる気のある人間に、その機会を与えたいだけだ。それにこれは俺たちだけでやるんじゃなくて、領主様や冒険者ギルドにも、協力してもらおうと考えているんだ」


 すると仲間たちが、次々に賛同の意を表す。


「フハハッ、それは良い考えじゃな。まさに特級冒険者として、あるべき姿じゃ」

「アハハ、ほんと~。なんか正義の味方って感じだね~」

「ウフフ、そうよね~。ニケちゃんみたいな子供が困ってるんなら、私も力を貸すわ~」

「さすがは、タケしゃまでしゅ」

「俺も賛成っす」

「僕もひもじい辛さはよく知ってるから、手伝います!」

「チッ、なら俺も、少しは手伝ってやらあ」


 どうやらみんな協力してくれるようなので、俺は感謝をしつつ、さっそく指示を出す。


「みんな、ありがとう。それじゃあ、俺の方でまずはギルドに話を通すから、孤児を集めてもらえないかな。ニグン、できるか?」

「え……まあ、知り合いに話をするぐらいは、できますけど」

「よし。さすがに今日は無理だから、明日どこかで、炊き出しでもやるか。孤児を集めて、料理を振る舞うんだ。そこで相談しよう」

「うむ、料理の準備なら、儂に任せておけ」

「じゃあ、ガキども集めるのは、俺とこいつらで相談すらあ」

「ああ、頼むよ。俺はギルドへ行ってくる。ニケも行くか?」

「あい♪」


 さっそくガルバッドとルーアンが協力を申し出てくれたので、彼らに後を託し、俺とニケは店を出た。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 再びギルドへ舞い戻ると、まずはステラを捕まえる。


「ステラさん、ちょっと話があるんだけど」

「あら、タケアキさん、ニケちゃん。どんな話?」

「ちょっと込み入った話なんだけど」

「へ~、それならこっちに来て」


 ステラに導かれ、職員が使う小部屋に入る。

 彼女はお茶を準備すると、俺たちの前に座った。


「それで、どんなお話し?」

「ああ、実はさっき、孤児に絡まれてね」

「ああ、ギルドの前で揉めてたあれね。それでどうしたの?」

「うん、彼らとは和解できたんだけど、話の流れで彼らの面倒をみることになったんだ」


 ちょうどお茶を飲もうとしていたステラが、急にむせる。


「ゲホッ……ゴホッ、ゴホッ……な、なんでそんな話になるのよ?」

「うん……実はあいつら、昔ニケに意地悪をしたことがあってね。そのおかげで、ニケは死にかけてたんだ」

「なら、なおさら……」

「だけどね、それは大人に頼れない暮らしのせいなんだ。自分たちに余裕がないから、いがみ合って、弱者をいじめる。そうなっちまったのは、彼らの責任じゃないだろ」

「そ、それはそうかもしれないけど……」

「実は俺も、ダメな親に苦労させられたくちでね。そのせいか、放っておけないんだ」


 そう言うと、ステラも話を聞く顔になった。


「ふうん……それで私に相談って、なんなの?」

「うん、ただ孤児の面倒をみるんじゃなくて、職も斡旋あっせんしたいんだ。そしてその第一候補が、冒険者になる」

「うわっ、物好きね~……つまり冒険者のタマゴを増やすから、ギルドにも協力しろってこと?」

「そのとおり。可能なら、領主様も巻き込みたいと思ってる」

「っ! あなたねえ……」


 ステラは頭痛でもするかのように、額に手を当て、顔をしかめる。

 しかし彼女はしばし考えを巡らせると、真面目な顔に戻った。


「……案外、悪くないかもしれないわね。今この街は迷宮の階層更新で、にぎわいつつあるの。そこに合わせて新人を増やせば、一気に経済が活性化するかもしれないわ。でも孤児を迷宮に送り込んだりして、大丈夫?」

「ある程度の装備を与えて、訓練を施せば、それなりになるさ。もちろん俺たちだけじゃ手が足りないから、ギルドにも協力して欲しい」

「うわ、呆れるほどの厚遇。そんなことして、本当に大丈夫? ただ甘やかしたって、つけあがるだけかもしれないわよ」

「いずれ装備や訓練の対価は取り立てるし、やる気のない奴にまでは、手を掛けないよ。あくまで彼らに働く機会を与えて、自活させたいんだ」

「そんなことして、なんの意味があるのよ?」


 ステラの疑わしげな視線を受けつつも、俺はポフポフとニケの金色の髪をなでながら、答えた。


「ニケもついこの間まで、浮浪児だったんだ。それこそ飢え死に寸前のね。だけど彼女は、想像以上の能力を示して、特級冒険者に成り上がった。だったら似たような浮浪児にも、機会を与えられないかと思ってね」

「そんなの、あなたの仕事じゃないわ」

「いや、仮にも特級冒険者となったんだ。だったら社会のため、冒険者のために、何かしてもいいと思わないか?」

「……馬鹿よ、あんた。大馬鹿」


 ステラが呆れたように言うと、ニケが反論する。


「タケしゃま、ばかじゃないでしゅ。タケしゃまは、おもいやりのある、いいひとでしゅ」

「はいはい、そうね。いい人かもしれない。だけど私の仕事も、増えるのよ」

「でも、ひとだすけは、いいことでしゅ」


 ニケのつぶらな瞳でうるうると見つめられ、ステラはやがて深いため息をついた。


「は~~~っ……ニケちゃんにそんなこと言われたら、断れないじゃない。狙ってやってるわね?」

「バレたか。だけどあんたもけっこう、お人好しだからな。かえって協力しやすいんじゃないか?」

「憎たらしい……でもいいわ、協力してあげる」

「ありがとう。それでこそステラさんだ」

「調子のいいこと言って……もう」


 そう言って苦笑いするステラは、それほど嫌そうではなかった。

 これでギルドの方は、なんとかなりそうだ。

 次は領主も巻き込んで、計画を進めるとしようじゃないか。

予想どおり、あまり執筆が進んでいないので、投稿ペースを落とさせてもらいます。

以後は3日に1度の投稿となります。

面目ない。

エタだけは回避したいと思うので、応援いただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ