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迷宮へ行こう ~探索のお供はケモミミ幼女~  作者: 青雲あゆむ
第4章 上級冒険者編

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83.12層の奥へ

 俺たちは12層で、3体もの牛頭戦鬼ミノタウロスと戦い、勝利した。

 ただしゼロスが若干のダメージを受けたので、大事を取って引き返した。

 地上へ戻ると、魔石を売ってから、冒険者ギルドを訪れる。

 ミノタウロスの討伐を報告した際、こまめに報告を入れるよう、頼まれていたからだ。


「え~っ、3体ものミノタウロスと戦ったの?!」

「声がでかいって」

「あ、ごめんなさい……だけど今までは、ミノタウロスは1体までしか出てこなかったんでしょ? それがいきなり3体だなんて……ニケちゃんが心配だわ」

「心配するとこ、そこかよ? ニケはこれでも、立派な戦士なんだぞ」

「そうでしゅ。しつれいなこと、いうなでしゅ」

「うう、またニケちゃんに怒られた……」


 すっかり俺たちの担当になったステラが、ニケに怒られて悲しそうな顔をしている。

 しかしすぐに立ち直って、話を続けた。


「それで、他に何か変わったことはあった?」

「いや、ちょくちょく薬草や鉱石が見つかる程度で、大きな変化はないな。せいぜい、俺たちの強化度が上がったぐらいか」

「そうなのよね~。強化度8なんて、初めて見たわ~」


 ミノタウロスを10体ほど倒したことにより、とうとう俺たちの強化度が8に上がっていた。

 新人も7に上がっており、ミノタウロスを倒して得られる生命力が、いかに大きいかが分かる。

 そんな話を済ませると、俺たちは拠点へ帰宅した。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ゼロスのケガがあったので、1日だけ休息を取ってから、再び12層へ潜った。

 前半部分は地図ができているので、すいすいと奥へ進む。

 やがてまたミノタウロスが3体いる部屋へ、たどり着いた。


「それじゃあ、今度はニケとゼロスが足止めな。前衛は手が減るけど、打ち合わせどおりにやりくりしてみて。俺たちもバックアップするから」

「おう、2度めだし、なんとかなるだろう。な?」

「間合いを工夫して、封じ込めるっす」

「僕もがんばります!」


 前衛がルーアン、メシャ、ガルバッド、ニケ、バタル、ザンテの6人から、ニケが抜けて5人になる。

 その分、残った者の負担は増えるため、休養の間にその辺の対策は話し合っていた。

 結果、互いの位置関係を工夫して、補おうという話になった。

 やってみないと分からない部分もあるが、それほど致命的なことにはならないと判断している。

 さらにアルトゥリアスも、それに協力する。


「おそらくニケさんが入れば、斧の個体は安心して任せられるでしょう。その分、私が剣と槍の個体を牽制しますよ」

「ああ、そうだな。よろしく頼むぜ、アルトゥリアス」


 アルトゥリアスは戦闘中、弓矢を構えて全体の状況を注視している。

 そして危なくなったところに、魔力付きの矢を撃ち込み、牽制しているのだ。

 今回はニケがゼロスと協力して斧の個体を押さえ込むので、そちらは以前より安定するだろう。

 その余裕を、アルトゥリアスが剣と槍の個体に振り分ける算段だ。

 ただし、あくまで予想にすぎないので、あまり過信せず、臨機応変にやる予定ではある。


「よし、みんな準備はいいか?」

「あい、ばんたんでしゅ」

「クエ~」


 ニケは荷物を取り払ったゼロスの背に騎乗し、突っこむ気満々だ。

 ちなみにゼロスの背に積んでいた荷物は、戦闘前にすばやく外せるような仕組みを取り入れている。

 その辺はいつものように、ガルバッドがうまくやってくれた。

 優秀な職人が仲間にいると、金銭的にも時間的にも、とても助かることを、改めて実感する話だ。


「よし、戦闘開始!」

「「「おうっ」」」

「いくでしゅ、ゼロス!」

「クエ~」


 俺の合図で前衛陣が走りだせば、ニケを乗せたゼロスも突進する。

 普段から姉弟のように仲のよい彼らなら、しっかり務めを果たしてくれると信じたい。

 そして俺たち後衛も、自身の仕事に取り掛かる。


大地拘束トゥルバ・エンタズ

茨棘締結ワキザ・ラッド

「グオッ」


 今回もまず剣の個体を足止めした。

 予想外の攻撃にミノタウロスは怒り狂うが、俺たちが工夫した拘束技は、そう簡単には破れない。

 足元に気を取られているうちに、バタルとザンテが襲いかかった。


「とうっ!」

「やあっ!」

「うりゃっ!」

「えいっ!」

「どっせい!」


 加速魔法で飛ぶように斬りかかった年少組に遅れ、ルーアンとメシャも槍で突きかかる。

 さらにちょっと遅れてガルバッドが斧を叩きつけると、ミノタウロスの強靭な足腰も若干の動揺を見せた。

 どうやらニケが抜けた影響は、それほど大きくないようだ。

 それを横目で確認しつつ、今度は槍の個体に精霊術を仕掛ける。


大地拘束トゥルバ・エンタズ

茨棘締結ワキザ・ラッド

「グウッ」


 こちらも足止めに成功したところで、アルトゥリアスが矢を放った。


減圧回廊カリル・タリク

「グアアッ」


 やじりに魔力を籠められたエルフ謹製きんせいの矢が、ミノタウロスの魔力防御を貫いた。

 敵の胸に突き刺さった矢は、多少のダメージを与えたようだ。

 そんな援護も受けつつ、俺とレーネリーアが交互に拘束魔法を槍の個体に掛け、足止めしていた。

 その一方で、ニケとゼロスも健闘している。


疾風迅雷ハラカ・タザリ

「クエ~」


 ニケが魔法で加速して飛び出せば、ゼロスは少し遅れて敵に突っこんでいく。

 そしてニケが上半身に攻撃してから飛びのけば、ゼロスが下半身を攻撃するといった具合に、連携が取れていた。

 さすがは義姉弟というだけあって、息が合っている。

 どうやらこちらは安心して任せておけそうだ。


 こうして2体のミノタウロスを足止めしているうちに、とうとう剣の個体の動きに、陰りが見えはじめた。


「アルトゥリアス、剣持ちを仕留めるよ。『氷槍生成タルジュ・サナ』」

「了解です。『流風投射マジュラ・ラマー』」


 俺が氷槍を作り出した数瞬後、目にも留まらぬスピードで、それが発射された。

 それは前衛陣に気を取られていたミノタウロスのどてっぱらに、深々と突き刺さる。


「グアッ、グオオオ……」


 剣の個体が苦しそうに動きを止めたところへ、年少組が追い討ちを掛ける。


剛力無双クアト・カヴィア

鋭刃金剛カウィ・サイフ


 腕力を増したバタルが敵の腹を切り裂けば、鋭さを増したザンテが、その喉をかき切る。

 さしものミノタウロスも、その攻撃には耐えられず、地響きを立てて崩れ落ちた。


「フウッ、まずは1体っす」

「おう、よくやった。次は槍のやつだぞ」

「はいっ」


 前衛は休む暇もなく、槍の個体に取り掛かった。

 今はレーネリーアが1人で足止めしてる状態で、あまり余裕がないからだ。

 しかし前衛が攻撃に入って、ようやくひと息ついていた。


「レーネリーア、お疲れ」

「ほんとですよ~。人使いが荒いのではないですか~」

「そんなことないって。みんな一生懸命やってるだろ?」

「そうですけど~」


 そんな彼女の愚痴を聞き流しながら、ニケたちを見ると、相変わらず元気にやっていた。

 ニケがピョンコピョンコと跳ね回れば、ゼロスはドスドスと駆け回る。

 一見、勝手に動いているようで、彼女たちは互いに助け合っていた。


 やがて槍の個体も倒されると、斧の個体に総攻撃が掛けられる。

 みんなそれなりに疲れていたが、最後の力を振り絞って、敵に立ち向かった。

 やがて最後のミノタウロスも、動きが鈍ってきた。


「これで最後だ。『氷槍生成タルジュ・サナ』」

「はい。『流風投射マジュラ・ラマー』」


 俺とアルトゥリアスの魔力を振り絞った氷槍が、斧の個体に突き刺さる。

 するとそれは当たりどころが良かったのか、一撃で敵を絶命させてしまった。

 最後のミノタウロスが、地響きを立てて地面に倒れる。


「「「やった~!」」」


 今回はノーダメージで敵を倒せたこともあり、皆が歓声を上げていた。

 それなりに苦労も多いが、自身の成長を感じられるのはいいものだ。

 願わくば、この調子で12層を突破したいものだが。

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