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迷宮へ行こう ~探索のお供はケモミミ幼女~  作者: 青雲あゆむ
第4章 上級冒険者編

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82.ゼロスの戦力化

 12層で3体もの牛頭戦鬼ミノタウロスに遭遇した俺たちは、ゼロスの戦力化に動いた。

 ガルバッドがゼロス用の防具を製作し、さらにミノタウロス戦の立ち回りを訓練すると、だいぶ頼もしくなる。

 ある程度、目処がついた俺たちは、再び12層へ潜った。

 その途中で、まずはオークとオーガとの戦闘になったのだが、さっそくゼロスは役に立ってくれた。


「よし、ご苦労だったな、ゼロス」

「クエ~」

「後は任せとけ」


 ゼロスが足止めしていたオーガを引き取ると、仲間たちがさっさとトドメを刺し、わりと早期に戦闘が終結する。

 さすがに単体でオーガを倒すには至らないが、ゼロスが1体を足止めしてくれるだけで、その分戦力が集中できて、効率が良かった。

 おかげで敵の殲滅速度が向上し、みんなの負担が減ったのは、予想以上だった。


「フウッ、ゼロスの戦力化は、大正解だったな。仕事が楽だぜ」

「ああ、ほんとだな。こんなことなら、もっと早くやってればよかったよ」

「フフフ、それは言っても仕方ないですよ」

「まあ、そうだけどね」

「ゼロス、いいこでしゅ」

「クエ~」


 当のゼロスもニケに頭を撫でられて、ご満悦である。

 その後も快調に敵を倒し続け、その日のうちに12層へ侵入できた。

 さらにある程度すすんでから夜営をし、翌日に備える。

 比較的らくに探索できたので、その日はゆっくり眠ることができた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 そして翌日はいよいよ、3体のミノタウロスと戦うべく動きだす。

 以前、3体のミノタウロスに遭遇した場所へ行ってみると、やはり奴らはいた。


「よし、1体はゼロスに足止めしてもらうから、俺たちは残りを倒すぞ。他の攻撃が、ゼロスに行かないよう、注意な」

「おう、いよいよだな」

「がんばるっす」

「僕もがんばります!」


 みんなやる気満々で、頼もしい限りである。


「それじゃあ、戦闘開始!」

「「「おうっ」」」

「クエ~」


 開始の合図と共に、仲間たちが部屋になだれ込んだ。

 ゼロスも斧を持つミノタウロスに、一直線に向かっていく。

 そして俺とレーネリーアは、剣と槍を持つ個体に、足止めを掛けた。


大地拘束トゥルバ・エンタズ

茨棘締結ワキザ・ラッド

「グアッ」


 土といばらの2段仕立ての拘束に、まず剣を持ったミノタウロスが足を取られる。

 最初は簡単に破られた技だが、最近はミノタウロス用に工夫をして、それなりに効果を発揮している。

 すかさずその個体に、前衛陣が斬りかかった。


「グアッ……グオオオオッ!」


 主に足を狙った仲間の攻撃は、多少は通っているものの、逆に敵を怒らせた。

 しかし仲間たちはすかさず距離を取り、ちょこまかとヒット・アンド・アウェイを繰り返す。

 その間に俺とレーネリーアは、槍を持つ個体の足止めをしていた。


 ゼロスの方もしっかりと斧の個体を引きつけており、これで3体の連携を封じたことになる。

 おかげで前衛陣は剣の個体に集中することができ、俺とレーネリーアは槍個体の足止めに集中した。

 さらにアルトゥリアスが弓と風魔法を使い、前衛やゼロスが危なくなると介入する。

 そうやって粘っていると、ようやく剣の個体の動きが鈍ってきた。


「アルトゥリアス、やるよ。『氷槍生成タルジュ・サナ』」

「了解です。『流風投射マジュラ・ラマー』」


 その隙を逃さず、俺たちは特大の氷槍を、剣のミノタウロスに撃ちはなった。

 それは見事に目標の胸部を貫いて、敵に血を吐かせる。

 やがてそいつは地面に倒れ伏し、動かなくなった。


「さすがだぜ、タケアキ。よし、次は槍のやつだ」

「うす」

「はいっ」


 前衛が今度は槍の個体を攻撃しはじめたが、その時ゼロスにも危機が迫っていた。


「グエ~ッ」

「ゼロスっ! 『疾風迅雷ハラカ・タザリ』」


 なんとか敵の動きを封じていたゼロスだが、とうとう胴体に攻撃をくらってしまった。

 鎖帷子くさりかたびらで致命傷は防いでいるものの、彼が苦しそうな悲鳴を漏らす。

 それを聞いたニケが、強化魔法を使って駆けつけた。

 そしてミノタウロスの足に斬りつけると、敵がわずかにひるみ、ゼロスへの攻撃がゆるむ。


「よし! ニケはそのまま、ゼロスを援護しててくれ」

「あい、タケしゃま」


 ニケはそのまま斧の個体に張りついて、ヒット・アンド・アウェイを繰り返した。

 それまで単独で相手をしていたゼロスも、がぜん元気になり、角先の武器を振り回している。

 さすがに魔力をまとっていないので、大きく傷つけるほどでもないが、敵はやりにくそうにしていた。


 その間に俺たちは、槍のミノタウロスに集中する。

 俺とレーネリーアで足止めした敵に、ニケ以外の前衛が総攻撃を掛ける。

 すると集中的に足を傷つけられたミノタウロスの動きが、徐々に鈍ってきた。


「またいくよ。『氷槍生成タルジュ・サナ』」

「了解。『流風投射マジュラ・ラマー』」


 そこへ再びの氷槍攻撃で、槍の個体も腹部に致命傷を負う。

 敵がガクリと膝を着いたところで、バタルがその喉をかき切った。

 かくして槍のミノタウロスも、地響きを立てて倒れ、絶命する。


「よし、残りは斧の個体だけだ。全員、総攻撃」

「「「おうっ!」」」


 ニケとゼロスに足止めされていた斧の個体に、仲間が総掛かりになる。

 さすがにみんな疲れていたが、最後だと思えば体も動くものだ。

 実際にそう掛からないうちに、ミノタウロスの動きは鈍ってきた。


「これで終わりにしよう。『氷槍生成タルジュ・サナ』」

「ええ、当てますよ。『流風投射マジュラ・ラマー』」


 アルトゥリアスは魔力不足で苦しそうにしつつも、最後の氷槍を打ち出した。

 それは見事に敵の胸部を貫き、最後のミノタウロスも膝を着く。

 それでもあがこうとする敵に、ニケがとどめを刺した。


鋭刃金剛カウィ・サイフ

「グアアッ……ガァ……」


 魔法で強化した武器が、ミノタウロスの喉をかき切ると、それが致命傷となった敵は地に倒れ、2度と動かなくなる。


「ハアッ、ハアッ……やった~」

「フウッ、フウッ……勝ったっす」

「きゃ~、とうとうやったわ~!」


 歓声を上げる年少組に、レーネリーアが駆け寄って抱きしめている。

 他の大人たちも肩で息をしているが、その顔は誇らしげだった。

 そして俺は、疲労困憊ひろうこんぱいなアルトゥリアスに手を差しのべる。


「お疲れ、アルトゥリアス」

「……フウッ、本当に疲れましたよ。まだまだこの魔法も、改良が必要ですね」

「ああ、だけどこうして、勝てたじゃないか」

「ええ、今はそれを喜びましょう」


 俺の手を取って立ち上がるアルトゥリアスも、誇らしそうだった。

 いろいろと改良はしているものの、短時間に何発も氷槍を撃つのは大変だ。

 そこで敵を仕留め損ねないよう、速度と威力を高めた成果がこれなので、十分に誇っていいだろう。


 そこで仲間たちに目を向けてみると、ニケが心配そうにゼロスを撫でているのが目に入った。

 俺は彼女たちに近寄りながら、声を掛ける。


「ゼロス、大丈夫か?」

「ちょっと、ケガしてるでしゅ」

「そっか。斧で殴られてたもんな。ちょっと見せてみろ」

「クエ~」


 確認してみると、ゼロスの左肩辺りが、ちょっと腫れていた。

 鎖帷子のおかげでひどい傷にはなっていないが、強い衝撃を受けたのだから、それも当然だろう。


「ゼロスがケガしてるんだけど、治癒ポーションって効くんだっけ?」

「効くはずですよ。ゼロスのような魔物は、人間と大して変わらないですからね」

「そっか。それじゃあ、治療して様子を見よう。まずは鎖帷子を外そうか」

「あい」


 ニケと協力して鎖帷子を外すと、ゼロスのケガに治癒ポーションを塗ってみる。

 すると完全に腫れが引くまではいかなかったが、ゼロスの表情がやわらいだ。


「うん、一応、効いたみたいだな。それじゃあ少し休んでから、今日は帰ろう」

「あい。ゼロス、やすませるでしゅ」

「ああ、今日はがんばったからな。今度はいっそ、最初からニケとゼロスを組ませた方が、いいかもな」

「それがいいでしゅ。ゼロスだけだと、たいへんだから」

「そうだな。だけど彼のおかげで、3体ものミノタウロスを倒すことができたんだ。それは誇っていいぞ」

「あい。ゼロス、よくやったでしゅ」

「クエ~」


 ちょっとしたトラブルはあったが、3体のミノタウロス討伐には成功した。

 この先どうなるかは分からないが、みんなと力を合わせれば、まだまだ先へ進めそうだ。

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