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迷宮へ行こう ~探索のお供はケモミミ幼女~  作者: 青雲あゆむ
第4章 上級冒険者編

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78.複合魔法の開発

 初めて踏み込んだ12層には、牛頭戦鬼ミノタウロスがいた。

 しかしその硬そうな巨体には、俺たちの攻撃はあまり効きそうにない。

 新たな戦法が必要だと考えていたところへ、アルトゥリアスから複合魔法の提案があった。

 そこで俺たちは11層へ取って返し、新魔法の開発にいそしむこととなる。


氷槍生成タルジュ・サナ

流風投射マジュラ・ラマー


 俺が水精霊テティスの力を借りて氷槍を作れば、アルトゥリアスが風精霊シェールの力を借りてそれを飛ばす。

 しかもそれは”減圧回廊”を応用したもので、威力も命中率も高い。

 最初こそ手間取ったが、じきに2人の息も合ってきて、すばやく術を行使できるようになってきた。

 深々と迷宮の壁に突き刺さった槍を見て、ルーアンが呆れた声を出す。


「おいおい、呆れた威力だな。たしか迷宮の壁ってのは、破壊不能なんじゃなかったか?」

「いや、絶対に不可能というわけでもないんじゃろう。おそらく魔力をまとった攻撃ならば、多少は壊せるということじゃ。あまり割に合わんがのう」

「まあ~。ということは、氷槍に魔力をまとわせる試みは、成功しているのね~」

「さすがは、タケしゃまでしゅ」


 彼らの言うように、俺は氷槍に魔力をまとわせるよう、努力していた。

 そうでもしなければ、ミノタウロスには通用しないと思ったからだ。

 幸いにもテティスは非常に有能で、自ら生み出した氷槍なら、魔力を付与できるらしい。

 ガルバッドが作った魔眼鏡まがんきょうでも確認してみたが、ちゃんと先端部分に魔力が集まっていた。


「ふう、とりあえずはこんなところかな?」

「ええ、これならミノタウロスにも、通用しそうです。ひと晩やすんでから、オーガで試してみましょうか」

「ああ、それがいいだろうね」



 さすがにアルトゥリアスの魔力消耗が激しかったので、その日は11層で夜営をした。

 そして翌日、試し撃ち用にオーガの群れを探す。

 しかしその群れは幸か不幸か、10体もの大群だった。


「せっかくだから、部屋の外からぶち込んで、数を減らそうか」

「ええ、それがいいでしょう」

「オーガがかわいそうに思える日が来るなんて、考えたこともなかったぜ……」


 俺とアルトゥリアスが気軽に数を減らすと言えば、ルーアンがオーガがかわいそうに見えてきたとぼやく。

 その考えも分からないではないが、より上を目指すなら当然のことだ。

 今までだって、ゴブリンやオークを踏み台にしてきたのだから。


「それじゃ、行くよ。『氷槍生成タルジュ・サナ』」

「了解。『流風投射マジュラ・ラマー』」


 その瞬間、目にも留まらぬスピードで、氷の槍が宙を走った。

 そしてそれは見事に、1体のオーガを貫いた。


「ウガアッ!」

「よし、次。『氷槍生成タルジュ・サナ』」

「はい、『流風投射マジュラ・ラマー』」

「グボウッ!」


 結局、氷槍によってオーガを3体仕留めたが、一方的な攻撃はそこまでだった。


「魔力切れです、タケアキ」

「……ちょっと早いけど、仕方ないか。今後の課題だね」

「ええ。さあ、来ましたよ、皆さん」

「おう、3体も減ったんだから、余裕だろ」

「だよね~」


 申し訳なさそうな顔をするアルトゥリアスに、ルーアンやメシャが軽く応じて、前に出る。

 その後は今までどおりの攻撃で、オーガを殲滅した。


「フウッ、予想どおり、大したことなかったな」

「あい、タケしゃまと、アルトゥリアスの、おかげでしゅ」

「うむ。さっきの氷槍はすごかったのう」

「だよね~、魔法ってすご~い」


 ルーアンとニケがそんなことを言えば、新人たちも追従する。


「うす、あんなに強いオーガが、一発だなんて……」

「さすがはタケアキさんと、アルトゥリアスさんです」

「同じ精霊術師として、私もがんばらなくっちゃ~」


 そんな感じで絶賛されていたのだが、アルトゥリアスは浮かない顔である。


「う~む、とはいえ、たったの3発しか撃てないのでは、心細いですね」


 アルトゥリアスの”流風投射”にはかなりの魔力を使うのか、1回の戦闘では3発しか撃てない。

 ギリギリまで絞れば、まだ多少はいけるようだが、後のことを考えると余裕は必要だ。

 はたして3発の氷槍で、ミノタウロスとどれほど戦えるだろうか。


「たしかに。ミノタウロスがどれぐらい強いか、分からないからね」

「……ちょっと残念ですが、今回はここで引き上げませんか?」


 元々、慎重なアルトゥリアスだが、今回はいつにも増して慎重な提案をしてくる。

 しかし俺は、それを妥当なものだと考えた。


「……うん、俺もそれがいいと思う。みんなも、いいかな?」

「アルトゥリアスとタケアキがそう言うんなら、かまわねえぜ。それだけヤバい敵ってことだろ?」

「だよね~」

「儂もかまわんぞ」

「さんせい、でしゅ」

「私も~」

「従うっす」

「僕もいいです!」

「クエ~」


 なんと驚きの、全員一致である。


「よし、それじゃあ、地上へ戻ろう」

「「おうっ」」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 無事に自宅へ戻った俺たちだが、1日だけ休んでから早々に迷宮へと舞い戻った。

 ちなみに俺たちが12層へ至ったことは、他にはまだ伏せてある。

 新しい魔物を確認して、そのまま戻りましたでは、かっこがつかないからだ。

 せっかくならミノタウロスの魔石を持ち帰り、堂々と報告してやろうと、意見が一致した。


 まず10層へ跳んでから、まっしぐらに12層を目指す。

 その間、10層のオークはもちろん、11層のオーガですら、それほど苦戦しなくなっていた。

 俺たちの地力じりきは、着実に向上している。

 そんな実感も得ながら、とうとう12層に下りる階段前へとたどり着く。


「さて、とうとう着いたけど、今日中にやる?」

「いえ、もう夕刻ですから、今日は休養しましょう。体力も魔力も消耗していますからね」


 アルトゥリアスが冒険者証を見ながら、そう提案する。

 俺も確認すると、たしかに月のマークが出ていた。

 ここは休養するのが吉であろう。


「まあ、そうだね。それじゃあ、夜営場所を探そうか」

「あい、やすむでしゅ」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 そして一夜明けると、俺たちは準備万端で12層へ侵入する。

 以前と同じ道を進むと、ミノタウロスの待つ場所へとたどり着いた。


「それじゃあ、いくよ。『氷槍生成タルジュ・サナ』」

「はい、『流風投射マジュラ・ラマー』」


 部屋の外から精霊術を行使すると、またもや目にも留まらぬスピードで氷槍が空間を駆け抜けた。

 それは見事に、ミノタウロスの体を貫くだろうと期待していたのだが、それは裏切られる。


――カーンッ!


「ゲッ、はね返した!」

「うそだろ?!」


 なんと、ミノタウロスはその斧で、氷槍を弾き飛ばしたのだ。

 どうやらオーガよりも、よほどいい目を持っているらしい。

 俺はうろたえる仲間たちに、指示を出す。


「今のは予想外だったけど、まだチャンスはある。多少は敵を弱らせないと、通じないだろう。俺たちで足を止めるから、前衛はみんなで攻撃してくれ」

「了解」

「おう」

「うす」

「はいっ」

「やるでしゅ」


 前衛陣が元気よく駆けていく。

 それを見送りながら、後衛も支援を始めた。

 かつてない強敵との戦いが、今はじまった。

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