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迷宮へ行こう ~探索のお供はケモミミ幼女~  作者: 青雲あゆむ
第4章 上級冒険者編

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75.再び10層へ

 とうとう俺たちは、新人を連れて9層を再突破した。

 これによりレーネリーアたちが4等級、つまり上級へ昇格する権利を手に入れたので、俺たちは意気揚々と冒険者ギルドへとおもむく。


「え~っ、もう9層を突破したの?!」

「ああ、なんせ俺たちが一緒だからな。これくらい、軽い軽い」

「……それだと、上級冒険者に寄生したみたいに聞こえるけど?」

「ちゃんと鍛えてるから、大丈夫だって。彼らの強化度だって、もう5になってるんだぜ」

「う~ん、それなら大丈夫か……」


 ステラに昇格の手続きを頼んだら、案の定、寄生を疑われた。

 無名の新人が、異例の早さで9層を攻略したのだから、それも仕方ないだろう。

 なに、実技試験で結果を見せればいいのだ。


 その後、ちゃんと実技試験を乗り越えて、新人たちの昇格が認められた。


「はい、レーネリーアさん、バタルさん、ザンテさん。新しい冒険者証です」

「ありがと~」

「うす、ありがとうございます」

「ありがとうございましたっ!」


 4等級に書き換えられた冒険者証を手に入れ、彼らの顔が輝いていた。

 そんな彼らを眺めながら、ステラがこっちへ話を振ってくる。


「新人の育成が終わったからには、また10層以下に戻るのよね?」

「ああ、もちろん。できれば、到達階層を更新しようと思ってるんだ」

「アハハ……数多あまたの冒険者がそんなことを言いながら、もう十年も更新されてないのよ。まあでも、あたたたちならできちゃうかもしれないわね」

「そうだろ?」

「でも、ニケちゃんには危険なこと、させちゃダメよ」

「さあ、それは――」

「よけいなこと、いうなでしゅ」


 それは保証できないと言おうとしたら、先にニケがステラに文句を言った。

 ステラもニケのことを思ってのことだろうが、ニケは立派な戦士なのだ。

 彼女の意志で戦っているのに、それを止めることはできない。

 まあ、俺には新たな切り札もあるから、なんとかなるだろうとは思うのだが。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 新人の昇格を済ませると、俺たちは王都へ向けて旅立った。

 彼らにふさわしい武器を、手に入れるためだ。

 また3日ほどで到着すると、さっそくゲイル爺さんの店へ顔を出した。


「やっとるか? 爺さん」

「おう、ガルバッドではないか。久しぶりじゃのう」

「うむ、今日はまた、武器を買いにきたぞ」

「なんじゃ、もう壊したんか?」

「いやいや、新顔を迎え入れてな」

「ほほう?」


 ガルバッドと店主の軽妙な掛け合いを経て、俺たちは彼に相談をする。


「こんにちは。新人が3人増えたんで、聖銀鋼の剣と槍を買おうと思うんですよ」

「ふむ、誰が何を使うんじゃ?」


 そこで俺たちの構想を店主に説明する。

 今回、バタルとザンテに剣を持たせると同時に、ルーアンとメシャには槍を持たせようという話になっていた。

 小柄な少年たちは剣を持って走り回り、大人は槍で中距離的な攻撃をするのだ。

 似たような武器だけ増やしても、戦いの幅が広がらないと考えてのことだ。


 そんな話を伝えると、店主がいくつか武器を持ってきてくれた。

 その中からバタルは身の丈に近い大ぶりな剣を選び、ザンテは盾と小剣を選んだ。

 そしてルーアンとメシャは、自身の身長を少し超えるぐらいの槍を選ぶ。


 もちろん全て聖銀鋼で、槍の柄には魔力を通す塗料が塗ってある。

 これにレーネリーア用の短剣を加え、金貨30枚を支払った。

 これでも少しまけてもらったぐらいだ。

 こうして、俺たちの戦闘準備は、すっかり整った。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 また3日掛けて王都から帰還すると、翌日から10層へ潜る。


「ブギイィィッ」

「お出ましだぞ。片方はルーアンとニケ、ザンテ、もう片方はメシャにバタル、ガルバッドで頼む」

「おう、サポートよろしく、ニケ」

「あい」

「行くよ、バタル」

「うす」


 2体のオークに遭遇すると、俺の指示に従って前衛が掛けだした。

 一方、残された後衛は、状況を見てサポートだ。

 幸いにも2体のオークなど大した脅威ではなく、ちょっとした足止めと弓射だけで十分だった。

 数分後には、オークを倒した前衛陣が感想を述べ合う。


「どうだった? オークは」

「うす、やっぱり硬いっすね」

「おいおい、これぐらいで硬いなんて言ってたら、次の1角餓鬼オーガには歯が立たねえぞ」

「ほんとですか? もっと修行しないといけないですね」

「おう、オーガには魔闘術が必須だから、しっかりと練習しろよ」

「「はいっ」」

「あらあら、私もがんばらなくっちゃ~」


 ルーアンの助言に、少年たちが素直にうなずく。

 そしてもう1人の新人であるレーネリーアも、意欲を見せていた。

 とりあえず、10層で十分にやれそうなのは分かったので、その後も探索を続け、新人に経験を積ませていった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 10層を攻略すること3日で、新人の魔闘術も使えるようになってきた。

 そこで俺たちは再びオーガに挑むべく、11層へ足を踏み込んだ。


「グルルルルロロォォォッ!」


 久しぶりに遭遇したオーガが、腹に響くような雄叫びを上げる。

 さすがは現状で最強の魔物だ。

 しかしもっと仲間が少ないときから、対応してきた敵でもある。

 仲間たちは少しもひるまず、敵に向かっていった。


「行くぜっ、『疾風迅雷ハラカ・タザリ』」

「うす、『疾風迅雷ハラカ・タザリ』」

「僕も、『疾風迅雷ハラカ・タザリ』」


 もちろん後衛陣も黙っていない。


大地拘束トゥルバ・エンタズ

圧空障壁ハワ・ジダール

茨棘締結ワキザ・ラッド


 土の足かせ、風の障壁、そして茨の触手が、オーガの動きを鈍らせる。

 その隙を逃さず、戦士たちが敵に突っ込んだ。

 彼らは魔法で加速し、さらに腕力も強化して、敵を斬り、突き刺していく。

 やがてその猛攻に、2体のオーガはあっけなく崩れ落ちた。


「やった~、オーガを倒しましたよ!」

「本当に硬かったっすね」

「ああ、だけどまあまあだったぞ」

「ほんと、最初はもっと掛かったもんね~」

「そうだったんですか~」


 思っていた以上に早く倒せたので、新人たちも上機嫌だ。

 その後は魔石とつのを取り、さらに奥へと進めば、予想以上に早く、団体さんが出現した。


「おいおい、8体もいるぞ」

「これはいよいよ、タケアキの出番じゃな」

「ああ、みんなは下がっていて。テティス」


 俺は水精霊テティスを呼び出すと、ゼロスの荷物から革袋を取り出した。

 その袋を軽く振り回しながら、俺は呪文を唱える。


氷槍乱舞タルジュ・ラクス


 その日、ベルデン迷宮で初めて、上位の精霊術が炸裂した。

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