表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮へ行こう ~探索のお供はケモミミ幼女~  作者: 青雲あゆむ
第4章 上級冒険者編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/115

74.新たな上級冒険者

 新人を連れて7層を踏破した俺たちは、いよいよ8層の短刀猪ナイフボア対峙たいじした。


地草束縛ハシシュ・アサバ

「ブギイッ」


 レーネリーアの精霊術がボアの足を絡め取れば、敵は暴れて束縛を逃れようとする。

 その隙を逃さず、バタルとザンテが飛び出した。


疾風迅雷ハラカ・タザリ

「僕も、『疾風迅雷ハラカ・タザリ』」


 身体強化で矢のように飛び出した2人が、動きの止まったナイフボアに斬りかかる。

 彼らはその毛皮の硬さに驚きながらも、休まずに攻撃を加えていく。

 やがてフラフラになったボアの懐に入り込んだバタルが、致命的な一撃を放つ。


鋭刃金剛カウィ・サイフ

「ブギィィッ…………ゴフッ」


 切れ味を増した斬撃により、喉を切り裂かれたナイフボアの体が崩れ落ちる。

 その瞬間、討伐を確信した少年たちが、雄叫びを上げた。


「うお~っ! やったっす」

「やりましたね、兄さん!」


 バタルとザンテは汗まみれになりながらも、その顔は輝いていた。

 そんな彼らをねぎらいながら、俺たちは近づいていく。


「お疲れお疲れ、よくやったな、2人とも」

「ちょっと~、私もがんばったのよ~」

「あ~、そうだね、レーネリーアもがんばった、がんばった」

「なんか言い方がなおざり~」


 俺がレーネリーアをいなしている間も、ルーアンが少年たちを褒める。


「おう、2人とも魔法が上手うまくなってきたな」

「うす、だいぶ慣れてきたっす」

「はい、これも兄さんや姉さんのおかげです」

「アハハ~、2人が努力したおかげだって~」


 しかしそんな浮かれた雰囲気を、アルトゥリアスが引き締める。


「さあさあ、あまり無駄口を叩いていないで、次に行きますよ。新人たちには、もっと強くなってもらわねばなりませんからね」

「フハハッ、そうじゃそうじゃ。もっと数が増えれば、ナイフボアはさらに厄介になるんじゃぞ」

「うす、気合いれるっす」

「はいっ、がんばります」

「う~ん、私はあまり働きたくないんだけど~」


 その後はレーネリーアの願いもむなしく、ナイフボアをバンバン狩らせた。

 もちろん数が多い時は俺たちも手伝ったが、基本的に新人に狩らせる形だ。

 そうして彼らに生命力を取り込ませ、さらに魔石を彼らの実績として売りさばく。

 これによって彼らの強化度を上げると同時に、冒険者等級も上げていった。


 そんな探索を3日続けただけで、新人たちはずいぶんとたくましくなった。

 そこで俺たちは、彼らを次の段階へ放り込むことにしたのだ。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ブモーッ!」

「『地草束縛ハシシュ・アサバ』……あら~っ」


 しかし9層の暴走牛スタンピードブルは、やはりひと味ちがった。

 奴らはレーネリーアの植物魔法など、紙のように引きちぎってのけたのだ。

 仕方ないので、俺が役割を替わる。


「『土壁防御ジダル・ディファー』……『大地拘束トゥルバ・エンタズ』」

「さすがタケアキだ。行くぜ、お前ら。『疾風迅雷ハラカ・タザリ』」

「うす、『疾風迅雷ハラカ・タザリ』」

「はいっ、『疾風迅雷ハラカ・タザリ』」


 なんとか俺が足止めしたブルに、ルーアンが先陣を切って走りだす。

 それに呼応するように、バタル、ザンテも加速する。

 もちろんニケやガルバッドも負けてはいない。


「えいっ、『鋭刃金剛カウィ・サイフ』」

「ブフーッ」

「こっちも負けておれんぞ。『剛力無双クアト・カヴィア』」

「モ”ーッ」


 さらに俺たち後衛は、魔法で援護だ。


石槍屹立ハルバ・アガマト

減圧回廊カリル・タリク

「私も負けてないわよ~、『茨棘締結ワキザ・ラッド』」


 その辺の植物では効果がないと見たレーネリーアは、茨の種を地面にまき、それで敵を締めつけている。

 さすがにそれだけで致命傷には至らないが、前衛の攻撃も交えると、それなりの戦力になっていた。

 やがて10頭ものスタンピードブルが、全て殲滅される。


 以前はずいぶんと苦労したのに、今回はずいぶんと楽だった。

 それは人数が増えたことに加え、エルフの里で精霊術を磨いてきたのも大きいだろう。

 ブルを殲滅した仲間たちが、集まってくる。


「フウッ、相変わらず手強てごわいな、スタンピードブルは」

「だね~。だけど前よりずいぶん楽だよ~」

「うむ、そのとおりじゃな。パーティーの強化は、大成功じゃ」

「ええ、これほど楽になるとは、思いませんでした」


 先輩連中が満足そうに感想を漏らせば、新人たちは呆れた顔を見せる。


「これで楽って、とんでもないわ~」

「うす、今までで一番、命の危険を感じたっす」

「ウシさん、怖いです」


 レーネリーアやバタルは青ざめているし、ザンテなど涙目だ。

 するとルーアンがおかしそうに、昔話をする。


「馬鹿いえ。俺たちは6人とゼロスだけで、この9層を突破したんだぞ。そこに頭数が3人も増えたんだから、余裕だってえの」

「そうそう~。あの時はほんと、生きた心地がしなかったよ~」


 メシャもその話に乗ると、ガルバッドやアルトゥリアスもため息をつきながら、当時を回想する。


「まったくじゃ。おまけに最後は、守護者の登場じゃったからの」

「あれには本当にやられましたね。タケアキがいなければ、確実に全滅でしたよ」

「フフン、タケしゃま、すごかったでしゅ」


 またまたニケがドヤ顔で自慢を始めたので、俺は笑って話をそらす。


「アハハ、でも今はみんなも強くなったから、よほど安心でしょ。いざとなっても、テティスがいるしね」

「ええ、なんといっても、我々の敵は11層のオーガですからね。ということでレーネリーア、あなたたちには、バリバリ戦ってもらいますよ」


 俺の話に便乗しつつ、アルトゥリアスが新人に圧力を掛ける。

 すると彼らは弱音を漏らしつつも、次の戦いへ向かうのだった。


「え~っ、今日はもうゆっくりしたいのに~」

「俺もそう言いたいとこだけど、がんばるっす」

「う~、僕もがんばります」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 その後、5日ほど掛けて、新人たちを9層で鍛えた。

 最初は弱音を吐いていた彼らだが、今では見違えるほどたくましくなっている。

 そしていよいよ俺たちは、守護者に挑むことにした。


「それじゃあ、みんな、行くよ」

「おう」

「了解です」


 9層の最深部にある扉横の水晶に手を当てると、扉が横にスライドする。

 ポッカリと開いた入り口に入ると、内部が明るくなり、3体のスタンピードブルが現れた。

 もちろんそのうちの1体は、赤い角を持つ巨牛である。


「ブフーッ!」

「ンモーッ!」


 敵が大きな声を上げ、威嚇してくるが、その程度でひるむような仲間はもういない。


土壁防御ジダル・ディファー

圧空障壁ハワ・ジダール

茨棘締結ワキザ・ラッド

「ブモーーーッッッ!」


 いきなり精霊術の3連打で、まず赤角ブルの動きを止めた。

 そしてその間に、前衛陣がその配下に斬りかかっていく。


疾風迅雷ハラカ・タザリ

剛力無双クアト・カヴィア

鋭刃金剛カウィ・サイフ


 ニケの刃が、ルーアンの剣が、メシャの双剣が、ガルバッドの戦斧が敵に降り注ぐ。

 敵も抵抗しているものの、すでに10層以下で戦う俺たちの前では、さほどの脅威でない。

 あっという間に致命傷を与えると、2体の配下は早々に倒れた。


 そして赤角ブルには、バタルとザンテが、果敢に立ち向かっていく。

 彼らは小さいながらもすばやく動き、着実にダメージを与えていった。

 レーネリーアも茨の棘で敵を締め上げ、要所要所で弓矢を撃っている。

 やがて、力尽きた赤角ブルが、地響きを立てて崩れ落ちた。


「やった~!」

「フウッ、フウッ……やったっす」

「ハァッ……ハァッ……勝ち、ました」


 ここにまた、新たな上級冒険者が生まれたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ