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迷宮へ行こう ~探索のお供はケモミミ幼女~  作者: 青雲あゆむ
第4章 上級冒険者編

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73.身体強化魔法

 新人たちに休養を取らせるため、ピクニックに来ていた俺たちだったが、狙いはそれだけではない。

 子供たちが遊びに飽きたところを見計らって、新たな指示を出した。


「よし、それじゃあ少し、魔法の練習もしようか」

「えっ、今日は休養じゃなかったんすか?」

「まあ、それが主目的ではあるけど、それだけじゃどうせ、飽きるだろ?」

「う……そうかもしれないっす」

「たしかにちょっと……飽きてきたかも」


 ザンテとバタルが言いよどんだところへ、すかさずたたみ込む。


「だろ? それに、ニケみたいな身体強化魔法、使ってみたくないか?」

「はいっ、使いたいです」

「お、俺も、やってみたいっす」


 案の定、ニケを引き合いに出すと食いつきがいい。

 年下の、しかも女の子にひけを取ってるなんて、悔しいだろうからな。

 ちなみにニケは今、俺の横でドヤ顔をしている。


「うん、そうだろうそうだろう。すでに説明してあるように、今までは2人の体ができるのを、待ってたんだ。それもそろそろ、いい頃合いだと思ってね」

「うす、望むところっす」

「がんばります!」


 身体強化魔法は、ただむやみに使えばいいというものではない。

 特に小さい子供に使わせると、体を痛めやすいらしいのだ。

 そこでバタルとザンテには、自身の力だけで戦闘をさせ、その動きに体をなじませた。

 まだ短期間だが、育ち盛りの彼らは、いい感じに育っているように見える。


「それじゃあ、まずは魔力を体内に巡らせる練習からな。ニケやルーアンも見てやって」

「あい、まかせるでしゅ」

「おう、構わねえぜ」


 その後はしばらく、身体強化魔法の練習をするう。

 最初は魔力を体内に巡らせる練習をしてから、実際に魔法を発動するのだ。


疾風迅雷ハラカ・タザリ


 何度か試しているうちに、バタルの魔法が発動した。

 彼は矢のように加速し、20メートルほどを一瞬で駆け抜けてみせる。


「うわ~、いいなぁ、兄さん。やっぱ僕、才能ないのかな?」

「馬鹿いえ。俺だって成功するまでは、けっこう掛かったんだぞ。そんなに気にすんなよ」

「そうなんですか?」

「本当だって。ほら、もっと練習するぞ」


 うらやましそうにバタルを見るザンテを、ルーアンが慰めている。

 実際問題、ルーアンやメシャも、成功までには数日かかっていた。

 いきなり成功させてしまうバタルの方が、異常なのだ。

 その後もザンテは熱心に練習していたが、さすがにその日のうちは成功しなかった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 2日も練習していると、ようやくザンテも身体強化魔法が使えるようになってきた。

 バタルよりは遅いが、それでも相当な習得スピードだ。

 それによってまた自信をつけた新人たちを、俺たちは迷宮の7層へ連れていく。


「昨日も言ったように、この階層には影狼シャドーウルフという魔物が出る。集団で襲ってくるから、用心するようにな」

「うす、楽しみっす」

「がんばります」

「ウフフ~、怖いわね~」


 あまり緊張感のない新人を連れて進むと、やがてシャドーウルフが現れた。

 漆黒の毛皮を持つ5匹のオオカミが、こちらを威嚇してくる。


「さっそく行くっす。『疾風迅雷ハラカ・タザリ』」

「僕も。『疾風迅雷ハラカ・タザリ』」

「がんばってね~。『地草束縛ハシシュ・アサバ』」


 勢いよく飛び出していく2人の少年を、レーネリーアが精霊術で援護する。

 いきなり足を植物に拘束されてうろたえるオオカミたちに、バタルたちが殴り込んだ。

 敵は次々と倒されていき、気がつけば全て駆逐されていた。


「ほ~、大したもんだ。たった3人で、倒しちまったな」

「うす、いざとなれば、みんなが助けてくれると思って、思いきりできたっす」

「はい、魔法がうまくいって、嬉しいです」


 謙虚なことを言う子供たちとは対照的に、レーネリーアは自慢げに話す。


「ウフフ、すごいでしょ~、アルトゥリアス。私も立派な冒険者ね~」

「はいはい、レーネリーアも見事でしたよ」

「……もうちょっとまじめに答えてくれても、いいのではないこと~」


 軽く流すアルトゥリアスに、レーネリーアは不満顔だ。

 しかしそれ以上は追求することもなく、俺たちは探索を続けた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 結局、その日のうちに7層を縦断し、俺たちは8層で夜営をした。


「今日は順調だったな~」

「ほんとほんと~。やっぱり人数がいると、楽だよね~」


 気楽そうに語るルーアンとメシャに、ザンテが訊ねる。


「たしかに兄さんたちは余裕そうでしたね。前はそんなに大変だったんですか?」

「そりゃもう、前衛は俺とメシャ、ニケにガルバッド、そしてゼロスぐらいだ。これだと、7匹ぐらいの相手がいいとこだな。単発なら10匹くらい、どうってことねえけど、あいつら次から次へと湧いてくるんだ」

「そうそう、短時間に何回も襲撃されて、ヘトヘトになったよね~」


 ルーアンたちが遠い目で語る話を、俺は少し訂正する。


「いや、あれでもまだましな方なんだぜ。ルーアンたちが仲間になる前は、5人だけでやってたんだから」

「あのときは、たいへんだったでしゅ」

「そんな時もありましたね」

「うむ、大変じゃった」

「クエ~」


 最も苦しかった時期を、古参メンバーが思い出し、疲れたような顔になる。

 その話に新人たちが引いていると、ルーアンはこの先の魔物を列挙して、さらに危機感をあおる。


「俺たちが加わってからも、短刀猪ナイフボア暴走牛スタンピードブルが出てきて、心の休まる暇は無かったんだぜ。しかも9層では、守護者が外に出てきやがったからな」

「あ~、あの時はマジで、死んだと思ったな~」

「うむ、儂もじゃ」


 するとニケがすっくと立ち上がり、拳を握って力説する。


「だけどあのときも、タケしゃま、たすけてくれたでしゅ。すごかったでしゅ」

「え、どうなったんですか?」


 ザンテが不思議そうに訊けば、ニケやルーアンが当時の様子を語る。

 彼らの迫真の説明に、バタルやザンテが顔をひきつらせていた。


「タケアキさん、すごかったんすね」

「うへ~、よく生きてますね、みんな」


 そんな彼らの視線がこそばゆくて、俺は正直な気持ちを白状する。


「いや、俺もニケが傷つけられて、ブチ切れただけだからな。よく覚えてないんだ」

「エヘヘ、ニケのために、おこってくれたでしゅ」


 ニケが嬉しそうに寄ってきたので、また頭を撫でてやると、彼女は表情をゆるめて、尻尾をフリフリする。

 そんな彼女を見ていると、俺はニケのためなら、なんだってできると思えてくる。

 するとレーネリーアが、俺たちをからかうように言う。


「ウフフ~、タケアキはニケちゃんが、本当に大事なのね~。でも今のタケアキだったら、もっとすごいことになっちゃうんじゃない~?」

「フフフ、そうですね。なにせ今は、上位精霊のテティスとも契約してますから。辺り一面が氷漬けになっても、不思議ではありません」

「あ~、そうだね。”精霊暴走”はコントロールできないから、否定はできないな」


 アルトゥリアスにも物騒さを指摘されても、俺は苦笑いするしかなかった。

 願わくば、あんな場面には2度と出会いたくないものだが。

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