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迷宮へ行こう ~探索のお供はケモミミ幼女~  作者: 青雲あゆむ
第4章 上級冒険者編

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72/115

71.中級冒険者へ

総合評価が500を超えました。

評価・ブクマありがとうございます。

 新人たちが兵士蟻ソルジャーアントの相手に慣れたので、いよいよ5層へ進む。

 ここは毒を持つ殺人蜂キラービー徘徊はいかいする場所で、通常ならとても危険な階層だ。

 しかし魔導砲インドラを持つ俺たちにとっては、さほど困難でもない。


――ズドンッ!


 俺の撃った散弾に当たり、何匹かのキラービーが落ちてくる。

 すると前衛陣がそこへ駆け寄り、武器でとどめを刺していた。


「相変わらず、便利な武器ですねぇ」

「まあ、ここぐらいの敵が相手ならね。あ、あの辺のハチをこっちに寄せてくれるかな」

「はいはい、『風流手腕リアーフ・ヤッド』」


 アルトゥリアスが精霊術を行使すると、風がキラービーに干渉して、あるポイントに集められた。

 すかさず俺がそこへ散弾をぶち込めば、さっきよりも多くのキラービーが落ちてくる。

 それにとどめを刺しながら、バタルがぼやいた。


「なんか、想像してたのと違うっす」

「そうぼやくな。以前はもうちょっと手間だったんだが、アルトゥリアスのおかげでまた楽になってやがる」

「こんなことができるようになったのも、タケアキのおかげですけどね」

「タケアキさん、アルトゥリアスさん、すごいです!」

「いやいや、アルトゥリアスの研鑽の賜物たまものだって」


 こんな感じで、キラービーの大群に遭遇しても、ほとんど危なげなく進めていた。

 普通はここで多くの死傷者が出ると教えていたので、新人にとっては拍子抜けだ。


 もっともそれは、アルトゥリアスが新しい術を開発したため、より楽になっていたのもある。

 ”風流手腕”は風を操って遠方の対象に圧力を掛ける術で、キラービーのような飛行体の位置を調整しやすい。

 見えない手によって集められた敵に散弾をぶち込めば、より効率が良いのは当然だ。


 結局その日のうちには5層を縦断し、6層で夜営することができた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 翌日は朝から6層の探索だ。

 手持ちの地図に従って進み、暗殺蟷螂アサシンマンティスの待ち受ける空間にたどり着く。

 いつもどおりに地精霊ガイアに偵察を頼むと、敵の存在を教えてくれた。

 以前はマンティスの存在を確認してもらうだけだったのが、今は敵のおおまかな位置まで把握できる。

 親和度の上昇で、コミュニケーション能力が上がったおかげだろう。


「よし、敵は2匹で、こことこの辺にいるらしい。こっちはニケとルーアン、メシャに任せるから、新人はこっちを攻撃だ。ガルバッドとアルトゥリアス、そして俺は新人をサポートするね」

「よろしくお願いするっす」

「がんばります!」


 俺の指示に従い、まずニケたちが突っこんだ。

 彼らはまっすぐに目標地点へ走ると、ガイアがマンティスをあぶり出す。


「キシャーッ!」

「ハハハ、もうあんまり怖くねえな」

「さっさとたおす、でしゅ」

「ごめんね~」


 彼らが果敢に戦闘に突入するのを横目に、新人たちも敵に接近する。

 ここでまたガイアが、マンティスの偽装を暴いた。


「キシャッ!」

「うわ、本当に出てきた」

「全然わからなかったです」

「本当ね~。とりあえず動きを止めるわよ~。『地草束縛ハシシュ・アサバ』」


 レーネリーアの精霊術で地面に生えている草がニョキニョキと伸びて、マンティスの足を絡め取ろうとする。

 しかしそれを察したマンティスが、カマを振り回して草を切断してしまった。

 考えてみれば当たり前のことだが、レーネリーアが不満をもらす。


「え~、そんなのあり~? ずるいわよ~」

「たしかにずるいっす」

「フハハハッ、こういうこともあるわい。お前らは反対側から攻撃してくれんか」

「了解です!」

「うっす、姉さんには引き続き、足止めをお願いするっす」


 バタルとザンテは元気に駆け出して、マンティスの反対側に回ろうとする。

 こちら側では、ガルバッドが盾を構えて敵を牽制する後ろで、レーネリーアが術を行使していた。


「えいっ、『地草束縛ハシシュ・アサバ』……あ、また切られちゃった。『地草束縛ハシシュ・アサバ』」


 マンティスはスパスパと草のつるを切断していたが、レーネリーアもそれに負けない速度で術を繰りだす。

 ここには豊富に草木が存在するため、植物魔法にはあまり魔力を必要としないのが幸いだ。

 やがて蔓草を処理しきれなくなったマンティスの足が縛られ、徐々に動きが鈍ってきた。


「やあっ!」

「とうっ!」


 そこへバタルとザンテが攻撃を加えれば、さすがのマンティスも防ぎきれない。

 数分間の戦闘の結果、とうとうマンティスが地に崩れ落ちた。


「フウッ、思ったよりも手こずったっす」

「ハァッ、ハァッ……僕も疲れました」

「ウフフ、2人ともご苦労様~。でもよくがんばったわよ~」


 肩で息をしながらも、満足そうな顔をするバタルとザンテ。

 珍しくレーネリーアも、彼らをねぎらっている。

 すると彼らを補佐していたガルバッドも、彼らを褒めた。


「うむ、2人ともよくやったぞ。特にザンテの伸び幅が大きいの」

「エヘヘ、本当ですか?」

「うむ、つい数週間前まで、狩りをしたことがなかったとは、とても思えんほどじゃ」

「ああ、ほんとだよね。体つきもずいぶん、ガッシリしてきたし」

「はい、いっぱい食べさせてもらってますから。今は最高に幸せです!」


 ザンテはそう言いながら、力こぶを作ってみせる。

 ついこの間までは、ヒョロヒョロのガリガリだったのに、ずいぶんと変わるものだ。

 すると今度はアルトゥリアスが、バタルを褒める。


「バタルの動きもなかなかでしたよ。ザンテが動きやすくなるよう考えているのが、さすがですね」

「うす、俺は経験者っすから」

「兄さん、ありがとうございます!」


 ちょっと顔を赤らめているバタルがかわいい。

 そんな彼に素直に礼を言えるザンテも、気持ちのいい存在だ。


 結局その日は一日中マンティスを狩り、守護者部屋の近くで夜営となった。


「今日の新人たちだけど、どう思う? 中級の認定、受けられるかな?」

「ああ、問題ないんじゃねえか? ちょっと前の俺より、強いくらいだぜ」

「アハハ、そうだね~」

「うむ、いけるんじゃないかのう」

「そうですね。おそらく大丈夫でしょう」

「たぶん、だいじょぶでしゅ」


 どうやら先輩たちの見解は一致したようだ。


「それじゃあ明日は、守護者に挑戦だね。みんながんばるように」

「うす、がんばるっす」

「はい、がんばります」

「あらあら~、楽しみね~」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 一夜明けて朝食を済ませると、俺たちは守護者部屋の前に集合した。


「それじゃあ、俺たちは配下のマンティスを押さえるから、新人だけでクイーンを倒すこと。念のため、アルトゥリアスはサポートに回ってくれるかな」

「了解っす」

「はいっ!」

「よろしくね~、アルトゥリアス」

「ええ、よろしく」


 いつものように扉を開けると、クイーンマンティスと共に、2匹の配下が現れた。

 それをまずは、アルトゥリアスの”突風”で敵を牽制すると、ルーアンたちが配下に向かっていく。

 すかさず前に出てこようとするクイーンには、レーネリーアの”地草束縛”がその足を鈍らせた。

 当然、クイーンのカマにスパスパ切られているが、バタルとザンテがそこへ斬りかかる。


「えいっ!」

「やあっ!」

「キシャーッ!」


 クイーンが威嚇してくるも、バタルたちはひるまない。

 懸命に攻撃を繰り出し、それをレーネリーアが魔法でサポートする。

 しばしば危ない場面もあったが、そこはアルトゥリアスが魔法と弓矢で補助していた。

 やがて俺たちが配下を始末する頃には、すでにクイーンも息絶え絶えだ。


「これで最後っす」

「キシャッ……」


 最後はバタルの一撃で、クイーンにとどめが刺された。

 しばらくもがいていたクイーンは、2度と動かなくなった。


「やったっす」

「やりましたね、兄さん!」

「ウフフ~、これで私たちも、中級冒険者ね~」


 そこにいるのは、すでに一端いっぱしの冒険者たちだった。

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