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迷宮へ行こう ~探索のお供はケモミミ幼女~  作者: 青雲あゆむ
第4章 上級冒険者編

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66.第3の忌み子

 ルーアンとメシャの故郷へ行ったら、いきなり猫人族と揉めてしまった。

 そこへ駆けつけた村長むらおさと話していると、お目当ての少年が現れ、ルーアンは軽い感じで彼を誘う。


「どうだ、ザンテ。俺たちと一緒に来ないか?」

「「「はあっ?!」」」


 その予想外の言葉に、周りの猫人たちが驚愕の声を上げた。


「ちょ、ちょっと待て、ルーアン。お前、ザンテを連れていくつもりか?」

「ああ、そうだけど、それがどうかしたか?」

「どうかしたかって、忌み子なんか、どうするんじゃ?」

「そんなのあんたに、関係ないだろうが。どうせ忌み子は不吉だとかいって、嫌ってるんだ。連れ出すのに問題はないだろう」

「い、いや、そりゃまあ、そうなんじゃが……」


 真っ先に立ち直った村長が、ルーアンに食ってかかる。

 しかしルーアンはそれを歯牙にも掛けず、切って捨てた。

 すると今度はガブルが、さも馬鹿にしたように絡んできた。


「フヘヘッ、村から逃げ出した腰抜け野郎が、今度は忌み子を連れ出すか? まったくお似合いだな」

「「そうだそうだ」」


 周りの取り巻きたちもガブルの尻馬に乗って、はやし立てる。

 しかしルーアンはそれらを一切無視し、再びザンテに問う。


「こんな奴らの言うことなんて、気にする必要はない。それでザンテ、お前は村の外へ出たくないか?」

「ええっ? そんなこと、急に言われてもぅ……」


 ザンテはもじもじと返事をためらっている。

 たしかに急に一緒に来いと言われ、はいそうですか、とうなずけるはずもない。

 すると村長が、そら見たことかと調子づく。


「ほら、ザンテは嫌がっておるではないか。それにこやつには、こやつなりの仕事があるんじゃ」

「何が仕事だ! 汚れ仕事や雑用でこき使ってるだけじゃねえか。おまけにそれに見合う対価を出しているとは、とうてい思えないがな」

「な、何を言う! 忌み子であるにもかかわらず、村で使ってやっておるんじゃぞ。感謝こそされ、非難される覚えはないわっ!」


 図星を指されたのか、村長が顔をまっ赤にして反論する。

 するとルーアンはニヤリと笑い、取引きを申し出た。


「ああ、そうだな。忌み子と一緒に働きたいやつなんて、いねえよな。それなら俺たちがザンテを連れ出しても、不都合はないよなぁ?」

「グッ……それとこれとは話が……」

「いいじゃねえか、親父」


 村長が言葉に詰まったところで、ガブルが割り込んだ。

 奴は得意げな顔で、持論を展開する。


「前からこんな気持ち悪いガキを見るのは、不愉快だったんだ。ルーアンが引き取ってくれるってんなら、出しちまおうぜ」

「馬鹿もん! こんな奴にも、割り当てられた仕事というものがあるのじゃ。勝手に出ていかれては、皆が困るのじゃぞ」


 そんな事を当然のように言う村長に、ルーアンは心底、軽蔑するような目を向けた。


「ケッ、ろくに報酬も出さないで、割り当てられた仕事だぁ? 知ってるんだぜ。あんたらがザンテに、最低限の食い扶持ぶちしか与えてないってことは」

「な、何を人聞きの悪い! 決して豊かでない村の財政で、まかなっておるんじゃぞ!」

「豊かでない財政が、聞いてあきれらあ! だったらなんでこいつらみたいな穀潰ごくつぶしが、ほとんど何もしないで生きていけるんだ?」


 ルーアンがビシッと差した指の先には、ガブルたちがいた。

 自分たちが穀潰し扱いされたことに気がついた奴らが、騒ぎはじめる。


「ああん、俺らが穀潰しだと? 俺たちは村の自警団として、ちゃんと働いてんだぞ」

「そうだそうだ、誰のおかげで安心して暮らせると思ってやがる」

「これでも俺たちは、寸暇を惜しんで村の周りを警戒してんだ」


 しかしそれに同調しているのは、ガブルの周りの10人くらいにしか見えなかった。

 それどころか一部の人間には、忌々しそうに顔をしかめている者もいた。

 そんなガブルたちの言い分を、ルーアンが鼻で笑う。


「ハッ、笑わせんな。お前らがまともに巡回してるのなんて、見たことがねえや。最近はこの辺で凶暴な魔物が出ねえからって、ふかしてんじゃねえぞ」

「んだと、こら。ぶっ殺すぞ」

「ああ、やれるもんならやってみろよ。迷宮で鍛えられた俺の力、見せてやろうじゃねえか」


 ルーアンがそう言って前に出ると、騒いでいた奴らが引き下がる。

 やがて奴らの期待の視線を受けたガブルが、虚勢を張りながら前に出てきた。

 奴は腰にぶら下げていた剣を抜くと、ルーアンに向けながら挑発をする。


「ヘッ、以前、さんざんにぶちのめされたのを、もう忘れたのか? てめえなんざ、いくら鍛えたって怖くねえんだよ!」

「ごたくはいいから、さっさと掛かってきやがれ、この三下!」

「野郎っ!」


 逆に挑発され、ガブルが真剣で斬りかかってきた。

 しかしルーアンは動揺を見せず、紙一重でその攻撃を避ける。

 そしてすばやく抜いた自分の剣の腹で、ガブルの顔をひっぱたいた。


「グボッ……い、いてえじゃねえか、こら!」


 さすがに一発ぐらいではひるまず、ガブルは再び剣を振り回す。

 しかしただ力任せのその攻撃は、ルーアンにとってはいかほどの脅威にもなっていなかった。

 彼は冷静に敵の攻撃を読み切り、スイスイと避けながら、相手を打ちすえる。

 ヒュンヒュン、ヒュンヒュンと剣が舞う中で、ドスッ、バシッ、ボキッという不気味な音が響いている。

 やがて体中に打撲傷を負ったガブルが、とうとう音を上げた。


「ヒ、ヒイッ。やめてくれ。俺が悪かった。謝る。このとおりだ」


 すでにまともに立っていられない奴は、無様に地べたに這いつくばり、ルーアンに許しを請うた。

 さっきまでの勢いはどこへやら、その瞳には恐怖が浮かんでいる。

 そんなゲス野郎を見下ろしながら、ルーアンは奴を糾弾した。


「いいか! こいつは半年前、俺の妹を集団で犯したんだ。しかもこいつは村長の権威を借りて、罪を握りつぶしやがった。あの時は俺に力がなくて、返り討ちにあったが、結果はこのとおりだ。あの時の落とし前として、こいつの利き腕をもらうぜ」


 容赦なく振り下ろされた剣の峰が、ガブルの右上腕の骨を砕く。

 その激痛にガブルは叫び、のたうち回った。


「ギャーッ、いてえっ、いてえようっ。ウワーッ!」


 涙ばかりでなく、小便まで漏らすその姿は、ひどく見苦しかった。

 いっそ哀れを誘うほどではあったが、奴はルーアンとメシャの仇だ。

 俺たちが冷ややかにそれを見ていると、村長が怒りだした。


「なんということを仕出かしたのじゃ、ルーアンっ! そもそもメシャの件については、証拠不十分で沙汰止さたやみになったではないか!」

「ああん? あんた、メシャが嘘を吐いたってのか? てめえがそんなだから、この馬鹿がのさばるんだよっ!」

「やかましい! お前にそんなことを言われる筋合いはないわい。いずれにしろ、ここまでやったからには、2度と村への立ち入りは許さんぞ!」

「こっちこそこんな村、2度と近づくか! それでザンテ、お前はどうする?」


 それまでザンテは、ほうけたようにルーアンのケンカを見ていた。

 そして改めて話を振られると、彼はしばらく悩んでから、真剣な顔で問うた。


「る、ルーアンさん。僕もあなたみたいに、強くなれますか?」

「ああ、なれるぞ。俺たちと一緒に迷宮に潜って鍛えれば、いずれはお前も立派な戦士だ」

「本当、ですか? でもなんで、僕なんですか? こんな忌み子の、いらん子が?」


 ザンテはポロポロと涙を流しながら、なぜかと問う。

 そんな彼に笑いかけながら、ルーアンはニケやバタルを紹介した。


「忌み子なんて、気にすんな。そんなのくだらねえ迷信なんだから。それを証拠に見ろ、うちにはもう2人も毛色の違う子がいるんだぞ」

「本当だ。でもなんで、あえて僕を?」

「忌み子と呼ばれるような存在にはな、鍛えれば大化けする可能性があるらしいんだ。その証拠にこのニケは、見た目よりもずっと強いんだぞ。だからザンテ、俺たちと一緒に行こう」


 そう言ってルーアンが手を差し出すと、ためらいつつもザンテはその手を取った。


「よろしく、お願いします」

「おう、任せろ。決して悪いようにはしねえから」


 こうして良い感じに話がまとまりかけたところで、またまた村長が口を挟んだ。


「こら~っ、勝手に話を進めるな! ザンテは村の一員なんじゃぞ!」

「だからそんなことは、一度でもザンテをまともに扱ってから言えよ。お前らがいいようにこき使ってきたから、ザンテは決心したんだぞ。どうせいい思い出なんか、ほとんどないだろ?」

「……はい、親が死んでからは、いつも苦しくて、寂しかったです」


 一瞬、躊躇ちゅうちょしながらも、ザンテははっきりと言いきった。

 よほど肩身の狭い思いをしてきたのだろう。

 しかし村長の方も、それでは収まらない。


「ダメじゃ。勝手に出ていくことは許さん。それでも出ていくと言うのなら……おい」


 そう言って彼が背後に合図すると、村の男衆が手に手に武器を持って現れた。


「これだけの者を相手に、逃げ切れると思うか?」


 その村長の脅しに対し、ルーアンは頭をガリガリかいてからため息をつき、俺の方を向いた。


「ハ~ッ……しっかたねえな。例のもの、見せてやってくれるか? タケアキ」

「了解。ガイア、テティス」

「シェール」

「アーデちゃ~ん」


 その瞬間、その場に3体の中位精霊と1体の上位精霊が現れた。

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