表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮へ行こう ~探索のお供はケモミミ幼女~  作者: 青雲あゆむ
第4章 上級冒険者編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/115

57.アルトゥリアスの故郷へ

 11層で1角餓鬼オーガ狩りに励んでいた俺たちだったが、奥へ行くほど数が多くなり、難易度は飛躍的に増していった。

 やがて8体のオーガに遭遇した時、とうとう限界が訪れる。


「グアッ!」

「ガルバッド!」


 俺とアルトゥリアスだけでは抑えきれなかったオーガが、ガルバッドを盾の上からぶん殴った。

 別の奴を相手にしていた彼は、ふいを突かれてこらえきれず、2メートルほどふっ飛ばされる。

 すると彼と協力して攻めていたニケにも、危険が迫る。


「アルトゥリアス、こっちは頼む。『大地拘束トゥルバ・エンタズ』……『石槍屹立ハルバ・アガマト』」

「クッ、早くしてくださいよ」


 俺たちが抑えていたオーガをアルトゥリアスに丸投げし、俺はニケの援護に集中する。

 彼女に襲いかかろうしたオーガの足元で、石の槍がそそり立つ。

 するとそのうちの何本かがヒットし、2体のオーガが戦闘不能になった。


「タケアキっ!」

「グエ~ッ!」

「ゼロスっ!」


 しかし安心したのもつかの間、今度はアルトゥリアスとゼロスが危機に陥っていた。

 とうとうアルトゥリアスの防御が間に合わず、ゼロスがオーガに殴られたのだ。

 苦鳴を上げるゼロスにニケが駆け寄ろうとするも、敵が邪魔をする。


「任せろ。『大地拘束トゥルバ・エンタズ』」

「ありがとでしゅ……たあっ!」

減圧回廊カリル・タリク


 俺が力を振り絞って3体のオーガを拘束すると、ニケとアルトゥリアスがとどめを刺していく。

 しばらくすると3体のオーガは駆逐され、その頃にはルーアンたちも敵を倒していた。


「タケしゃま、だいじょぶ、でしゅか?」

「ああ、俺は大丈夫。ガルバッドとゼロスを看てやれ」

「あい、いってくるでしゅ」


 魔法の使い過ぎでへたり込んだ俺をニケが心配してくれるが、仲間の治療を優先させた。

 俺も頭がクラクラして大変だったが、少し休んだら落ち着いてきた。

 そこでガルバッドとゼロスの様子を見にいく。


「ガルバッドはどんな状況?」

「幸いにも、深手ではないですよ。盾の上から殴られたので、打撲傷ぐらいです」

「あいたたっ……面目ない」


 ガルバッドの治療をしていたアルトゥリアスが、状況を教えてくれる。

 ガルバッドはグッタリと横たわっているが、大事に至らなかったのは幸いだ。


「それは良かった。ガルバッドも気にするなよ。ゼロスの方はどうだ?」

「……ケガしてるけど、くすりでなんとか、なりそうでしゅ」

「クエ~……」


 ゼロスは肩口から血を流していたが、こちらも大事はなさそうだ。

 弱々しく鳴くゼロスの鼻面を撫でてやると、嬉しそうにこすり付けてくる。

 そうして彼らの治療を見守っていると、ルーアンとメシャが戻ってきた。


「魔石と角は回収したぜ。それにしても、今回は危なかったな」

「ああ、どうやら今の俺たちじゃ、7体のオーガまでが限界、かな……」

「そうみたいだな……そうするとまた、対策を考えないといけねえな」


 難しい顔で考え込む仲間たちに、俺はかねてからの計画を打ち明ける。


「それなんだけど、アルトゥリアスの故郷に行ってみようと思うんだ」

「アルトゥリアスの故郷って、エルフの里だろ? そんなとこ行って、どうすんだよ?」

「まずは精霊術の改良のヒントがあるんじゃないかってのと、仲間も見つかるんじゃないかって、思ってさ」

「そんなに都合よく行くかぁ?」


 ルーアンが懐疑的な声を上げる横で、俺はアルトゥリアスに話を振った。


「それは行ってみないと分からないけど、アルトゥリアスには当てがあるんでしょ?」


 するとアルトゥリアスは、嬉しそうに顔をほころばせた。


「ええ、すでに何人か心当たりがあります。故郷でくすぶっているのは、私だけではないでしょうからね」

「だよね。それに俺たちが新しい精霊術を披露したら、興味を持ってくれるかもしれないし。ということでみんな、また旅に出ないか?」


 そう提案すると、仲間からは快い返事が返ってくる。


「そういうことか。なら行くしかねえな」

「うんうん、さんせ~」

「たのしみ、でしゅ」

「フハハッ、さすがはアルトゥリアスじゃのう」

「クエ~」


 こうして満場一致で、新たな旅に出ることが決まった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ガルバッドとゼロスの治療が一段落すると、俺たちは早々に地上へ帰還した。

 そして翌日を休養と旅の準備に充てると、翌々日には旅に出る。

 ゼロスのひく車に乗り、一路北を目指したのだ。


「フッフフ~ンフフーン、フッフフ~ン♪」

「ご機嫌そうだな、ニケ」

「あい、みんなとたびするの、たのしいでしゅ」

「ああ、そうだな」


 今は俺とニケが御者台に座り、俺が手綱を握っている。

 上機嫌で鼻歌を歌うニケに訊ねると、彼女は楽しそうに答えた。

 すると後ろからルーアンが話しかけてくる。


「それにしても、また乗り心地がよくなってね~か、この車?」

「フハハッ、そうじゃろう、そうじゃろう。常に改良しておるからな」

「さすがはガルバッドですね。このような馬車、貴族でも持っていないでしょう」

「うんうん、そうだよね~。今日は天気もいいし、サイコーだね」

「ああ、ちげえねえ」

「クエ~」


 みんなの楽しそうな声に応えるかのように、ゼロスも嬉しそうな声を上げる。

 普段は狭苦しい迷宮にも、おとなしく付いてくるゼロスだが、やはり太陽の下を走るのが気持ちよいのだろう。

 その後も特にトラブルもなく、俺たちは順調に旅を続けた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 やがて4日ほど走ったところで、とうとう道が途切れたので、竜車を隠して徒歩で移動する。

 そして2日も歩いた結果、俺たちは大きな木の前にたどり着いていた。


狼煙ムルシダウィ


 アルトゥリアスが古代語をつぶやいてしばらく待つと、木の上から声が掛けられた。

 どうやら今のが合図になっていたらしい。


「何者だ? この先は我らが父祖の地。何人なんぴとも立ち入りは許さぬぞ!」

「私はエドレア庄のアルトゥリアス。久しぶりに故郷へ戻ってきました。立ち入りの許可を願います」

「アルトゥリアスだと? たしかにそのような名に覚えはある。しかし貴様だけならばいざ知らず、山人ドワーフ普人ヒューマンもいるのでは、立ち入りは許可できんな」


 案の定、アルトゥリアス以外の立ち入りは拒否された。

 するとアルトゥリアスはため息をつきながら、さらに説明を加える。


「こちらのヒューマンは中位の精霊持ちですよ。そのような存在を、あなたたちは拒むのですか?」

「なんだと? そんな馬鹿なことがあるか。本当なら証拠を見せてみろ!」

「ええ、見せてあげましょう……タケアキ。ガイアを呼んでください」

「ああ……ガイア」

「♪」


 アルトゥリアスの求めに応じて俺は、地精霊ガイアを召喚する。

 すると次の瞬間には2人のエルフ男性が、俺たちの前に降り立っていた。


「馬鹿な。本当に精霊様が現れた……」

「しかしヒューマンが精霊様と契約など……」


 どうやら中位精霊ってのは、エルフ族にとってよほどの権威があるらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ