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迷宮へ行こう ~探索のお供はケモミミ幼女~  作者: 青雲あゆむ
第4章 上級冒険者編

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55.レベルアップ

 ガルバッドが魔力を可視化する道具を作ってくれたため、訓練が効率的にできるようになった。

 元々、みんな魔闘術はある程度できていたのだから、後はその状態を確認し、より良い方向へ矯正した形だ。

 そして俺の”石槍屹立”にも、その恩恵は反映されていた。


石槍屹立ハルバ・アガマト

「……ふむ、だいぶ良くなりましたね」

「ああ、そうだろ。ちょっと貸してみて」


 アルトゥリアスが魔道具を目に当てながら、石の槍への魔力のまとい具合を褒めてくれた。

 ”魔眼鏡まがんきょう”と名付けられたその魔道具を俺も借りて見ると、石槍の先端が強い光を伴っているのを確認できた。

 ここ2、3日、いろいろと試行錯誤した結果だ。


 地精霊ガイアに根気よくこちらの意図を説明し、多めに魔力を渡すことでようやく実現できた。

 しかも魔力の消費が激しいので、いかに先端部分に魔力を付与するかに苦心した労作である。


「うん、ここまでやれれば、そろそろいいよね?」

「ええ、1角餓鬼オーガに挑みましょう」

「やってやるでしゅ」

「クエ~」


 こうして俺たちは、再び11層へ挑むことにした。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「せいっ!」

「やあっ!」

「えいっ!」


 翌日は朝から10層へ潜り、オークを倒していった。

 オーガほどではないにしろ、オークも強敵なので、それなりに覚悟していたのだが、それは空振りに終わる。


「なあ、オークってこんなに弱かったか?」

「ん~ん、もっと手強かったよ。私たちけっこう、強くなってない~」

「ちょうしがいい、でしゅ」


 オークの肉体も多少は魔力で守られているためか、魔闘術は有効である。

 そして”魔眼鏡”で魔力の収束率を高める訓練をした結果、俺たちの攻撃力が向上していたのだ。

 おかげで前衛陣だけでほとんど始末できてしまい、俺とアルトゥリアスはたまにサポートするぐらいで済んでいた。

 さすがに10層の奥ではその数に苦戦したが、半日ほどで階段に到達してしまう。


「よ~し、いよいよオーガを相手にするから、気を引き締めていこう」

「ああ、いよいよだな」

「ルーアン、嬉しそう~」

「んなことねえよ。ちょっと腕が鳴るけどな」


 そんな感じで微妙に緩い雰囲気だったが、実際にオーガに遭遇するとそれも一気に引き締まる。


「『大地拘束トゥルバ・エンタズ』……『石槍屹立ハルバ・アガマト』」

「グアアァッ……」


 同時に現れた2体のオーガの片方に、俺が魔法で先制した。

 すると以前は弾かれた石の槍が、ブッスリとオーガの股間に突き刺さる。

 そしてそのオーガは、そのまま息絶えてしまった。


「うっわ、エグ……」

「ひどいよ、タケアキ」

「ひどくないでしゅ。『疾風迅雷ハラカ・タザリ』」


 なぜかルーアンとメシャが俺を非難するが、ニケがそれに反論しつつ、残りのオーガに斬りかかった。

 いきなり仲間を仕留められたせいか、そのオーガは動きを止めている

 そこへ魔法で加速したニケが一瞬で近接し、聖銀鋼の剣を振り下ろした。


「グバッ……グアアッ」

「やったでしゅ」


 ニケの攻撃は見事に敵の喉を切り裂き、オーガを一撃で沈めてしまう。

 それを見たニケが、ガッツポーズをきめていた。

 するとメシャが手を叩きながら、はしゃぐ。


「すご~い、ニケちゃ~ん。一発だったね~」

「あい、くんれんのせいか、でしゅ」

「クア~ッ、おいしいとこ、持ってかれたな。次は負けねえぞ」

「フハハッ、儂も負けておれんのう」


 するといつもは冷静なアルトゥリアスが、珍しく競り合いに乗ってくる。


「ふむ、とりあえずオーガ対策は成功したようですね。魔闘術にしろ、タケアキの石槍にしろ、しっかりと通じています。私も負けてはいられませんね」

「そうだね。アルトゥリアスも散々、訓練したんだから」

「そうですね。それでは魔石と角を取って、先へ進みましょう」

「おう」


 採取を終えると、さっそく動きだす。

 するとさして行かないうちに、4体のオーガが現れた。


「タケアキ、前側の2体を拘束してもらえますか?」

「了解。『大地拘束トゥルバ・エンタズ』」

「「グアアッ」」


 アルトゥリアスの要望に応え、2体まとめてオーガの足を止める。

 攻撃をアルトゥリアスに任せ、拘束に集中したがゆえに可能な技だ。

 その拘束から逃げようともがくオーガに、アルトゥリアスの矢が飛んだ。


減圧回廊カリル・タリク

「グギャアーッ!」


 1匹のオーガの目に、深々と矢が突き立った。

 その矢は脳髄をえぐり、敵に致命傷を与えている。

 魔闘術を適用できない弓射に対する回答が、これだった。


 いかに風精霊シェールを遠隔操作できるようになったとはいえ、矢に魔力を乗せることはできない。

 矢がアルトゥリアスの手を離れた時点で、魔力は霧散してしまうからだ。

 そうするといかに”減圧回廊”で加速された矢でも、オーガへの攻撃力は期待できなかった。


 ならば無理に硬い所を狙わず、弱い部分を攻めればいい、と考えを切り替えた。

 強固な防御力を持たず、しかも脳みそに直結する目ン玉は、恰好な標的となる。

 もちろん、いかに足を取られているとはいえ、動き回るオーガの目玉を射抜くなど、至難の技だ。


 そこでアルトゥリアスは、標的との距離を詰めつつ、シェールをすばやく動かすことに腐心した。

 そうすれば矢の命中率は高まるし、破壊力も増すからだ。

 これによってアルトゥリアスも、充分な破壊力を持つことができた。


 もう1体のオーガもアルトゥリアスが仕留めているうちに、残りの2体に前衛が襲いかかる。

 自分たちも負けじとルーアンとメシャが、”疾風迅雷”で飛び出した。

 彼らは1体のオーガに近寄ると、その膝に斬りつける。


 以前は跳ね返されていた刃が、今度はしっかりと通る。

 その攻撃は敵の態勢を崩し、頭を下げさせる。

 すかさずルーアンとメシャの攻撃が、敵の頭部に降り注いだ。


「グラアーッ!」

「うわ、あぶね」

「しぶと~い」


 ブチ切れた敵が鉄棍メイスを振り回したので、彼らは一旦距離を取る。

 幸いなことにケガは無いようだ。

 ルーアンとメシャは、その後は慎重に攻撃を繰り返し、敵を弱らせていった。


 その一方で、もう1体のオーガには、ニケとガルバッドが攻撃を仕掛ける。

 ガルバッドが盾と戦斧で防御的に対応している代わりに、ニケは精力的に飛び回り、敵に手傷を負わせていく。

 やがて膝を着いたオーガの首筋に、ガルバッドの戦斧が食い込んだ。


「ブハアッ……やっと倒せたわい」

「やったでしゅ」


 するとわずかに早く敵を仕留めていたルーアンとメシャが、軽口を叩く。


「おいおい、ずいぶん手こずってたじゃねえか。待ちくたびれちまったぜ」

「何いってんの。そんなに変わんなかったじゃない」

「い~や、俺たちの方がだいぶ早かったぜ」

「そんなの、かんけいない、でしゅ」

「ヘヘッ、ちげえねえ」


 ようやくオーガに対抗できる力を手に入れたおかげで、仲間たちの雰囲気は明るい。

 この調子なら、この先も戦える。

 そんな気がしていた。

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