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迷宮へ行こう ~探索のお供はケモミミ幼女~  作者: 青雲あゆむ
第4章 上級冒険者編

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53.ベルデンへの帰還

 見事、”宵闇の爪”の悪事を暴いた俺たちは、2人の魔術師のみを連行して、地上へ帰還した。

 キーゲンを始めとする他の犯罪者たちは、全て息の根を止め、迷宮に放置してきた。

 あんな奴ら、生かす価値もないし、暴れられても困るからだ。


 その点、魔術師は魔法さえ封じてしまえば、脅威にならないし、奴隷として高く売れたりもする。

 あっさりと死刑にされる可能性もあるが、多少は証人も必要だろうということで、奴らだけは連れ帰ることにしたのだ。

 そして迷宮を出てから衛兵に事情を説明すると、大騒ぎになった。


 何しろ、官憲も目をつけていた犯罪者集団の逮捕・殲滅だ。

 俺たちはただちに取調室へ連れて行かれ、しつこく聞き取りをされた。

 正直、勘弁して欲しかったが、当事者の義務と思って付き合った。


 何しろ俺たちは純粋な被害者であり、正当防衛で敵を殲滅しただけなのだ。

 もちろんこうも簡単に連中を逮捕できたことに、疑いを持たれないはずもない。

 しかし俺たちはガルバッドのことも隠さずに、事実を語った。


 ガルバッドの想い人の仇を取るため、”宵闇の爪”について調べたら、奴らが真っ黒だったこと。

 そして俺たちが調べ回っていることに気が付き、奴らが襲ってくることも予想していたことも。

 なにしろ俺たちの中には、メシャとニケという女性陣がいるのだ。

 奴らが薄汚い欲望を満たすために、襲ってくることは想像に難くなかった。


 特にキーゲンの野郎は、ロリコンだったからな。

 どうやらガルバッドの想い人も、幼な気な雰囲気だったらしい。

 それゆえにキーゲンに狙われてしまったのは、不幸というしかない。


 とにかく”宵闇の爪”の襲撃を予想していた俺たちは、それに備えた。

 まず薬学に明るいアルトゥリアスが、敵の使いそうな薬を想定し、そのための解毒薬も準備した。

 そして嗅覚に優れたニケが異常を感じたら、ただちに風魔法で空気を入れ替え、解毒薬を飲む手順になっていたのだ。


 そのうえで薬が効いたふりをして、敵を待ち伏せたって寸法だ。

 もちろん敵が未知の薬や手段を用いることも考えられた。

 しかしそのために俺とアルトゥリアスは、ガイアとシェールを偵察に出し、敵の動向を把握していたのだ。


 幸いにも敵は想定どおりに動き、さほど危険もなく返り討ちにできた。

 万一の場合は、俺の”精霊暴走”で切り抜けるつもりだったが、そんな必要もなく済んだ。

 そんな内情を、精霊のことだけはぼかしつつ、正直に語ってやった。


 特に”宵闇の爪”がギルド職員と結託し、犯罪歴を隠蔽してたって話は、ギルドに激震をもたらした。

 くだんの職員はその日のうちに逮捕され、拷問の末に罪を認めたって話だ。

 その男は当然、死刑になる予定だし、家族も財産を没収されて国外追放になるらしい。

 家族も事実上の死刑みたいなもんだが、それも仕方ない。

 それほどの重罪だったのだ。


 それから俺たちが連れ帰った魔術師は、奴隷身分に落とされ、軍属になったそうだ。

 今後は最前線で、過酷な生活が待っているだろう。

 はたしてキーゲンたちと一緒に死ぬのと、どちらが幸せだったのか。


 こうして事件は一件落着となり、俺たちは金貨20枚ほどの報奨金を得て解放された。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「タケしゃま、ベルデンのかべ、でしゅ」

「ああ、久しぶりだな」


 ほぼ3週間ぶりに帰還したベルデンを見て、ニケが尻尾をフリフリさせている。

 取り調べや報奨金の受取りで、なんだかんだと時間を食ってしまった。

 おかげでずいぶん久しぶりな気がする。

 その日はまっすぐ自宅へ戻り、ゆっくりと休養を取った。


 そして翌日早々にギルドを訪れたのだが、すぐにステラに見つかった。


「あっ、やっと来たわね。ちょっと話を聞かせなさいよ」


 そのまま彼女は俺の腕を掴み、強引に会議室に連れ込む。

 そして目をいからせながら、質問を開始した。


「ボーエンの迷宮で犯罪者を逮捕したって聞いたけど、何があったのよ?」

「なんであんたが、それを知ってるんだよ?」

「ギルド職員が不正を犯して、死刑になったって情報が流れてきたのよ。その中にあんたらのパーティー名もあったの。一応、今回の功労に報いるため、便宜を図ってやれって指示も来てるわ」

「へ~、何かしてくれるのか?」

「それは話を聞いてからよ。まずは状況を説明しなさい」

「へいへい、実は――」


 それからステラに、王都で起きたことを説明してやる。

 彼女は最初はおとなしく聞いていたものの、やがて頭痛をこらえるような顔になって、文句を言った。


「あんたねぇ、よその街で何やってんのよ?」

「ちゃんと仲間の仇討ちっていう目的があって、やったことだ。あんたにどうこう言われる筋合いはないね」

「いくつもの上級パーティーを、葬ってきたような奴らだったんでしょ? わざわざニケちゃんを連れて、危険に突っこむことないじゃない!」

「はぁ? 何いってんだ。ニケを仲間外れになんか、するわけないだろうに。なあ、ニケ」

「あい。よけいなこと、いうなでしゅ」

「ええ~……」


 ズバッとニケに文句を言われ、ステラが情けない顔をする。

 しかし彼女はすぐに立ち直って、話を続けた。


「クッ、まあ、それはいいわ。あなたたちの話を聞いて、事情がよく分かったから、私からも改善案を上げておくわ。実は私も、ギルドの管理体制には不安があったのよ」

「まあ、そうだろうな。せっかく対策をしたはずの犯罪対策が、職員の加担で無意味になっちゃうんだから」

「まったくよ。こんなんじゃいつまで経っても、信頼関係は築けないわ」


 真面目な顔で嘆くステラを見て、俺は少し安心した。


「クスッ。あんたのそういうとこ、いいと思うぜ。なんていうか、一生懸命で」

「何よ……気持ち悪いわね」

「まあ、気にすんな。とりあえず今回のことは、ギルドに貸しってことで、覚えておいてくれ」

「そうね。また何か、割のいい仕事でもあれば、優先的に回すわ」

「ああ、頼んだ。それじゃあな」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 話が終わると、俺たちはさっそく迷宮へ潜った。

 久しぶりに潜ったベルデン迷宮は、妙に懐かしい感じがある。

 10層の大豚鬼オークは手強いが、人形やゴーレムとは違った良さがあると、再認識できた。


「『大地拘束トゥルバ・エンタズ』……『石槍屹立ハルバ・アガマト』」

「プギャァァァッ!」

「よし、行くぞ。『疾風迅雷ハラカ・タザリ』」

「あい、『疾風迅雷ハラカ・タザリ』」


 相変わらずの精霊術と前衛陣の奮闘で、オークを倒していく。

 ボーエン迷宮のゴーレムに慣れたせいか、巨漢のオークとも戦いやすかった。

 すでに10層の探索はほぼ終わっていたので、いよいよ11層へと侵入する。


 ここに出てくる魔物は、1角餓鬼オーガだ。

 オークよりも頭ふたつ分は背が高く、筋肉モリモリの強敵である。

 その額には名前の由来である角が生えており、青っぽい肌色と相まって、いかにもファンタジーな奴だ。

 しかもその手には鉄棍メイスを持ち、オークよりもずっと手強いらしい。


 最初に遭遇したオーガが1体、俺たちに迫ってきた。

 1体とはいえ、敵は武器を持ち、しかもその動きはなかなかにすばやい。


「グルルルルロォォォッ!」

突風アスファ


 アルトゥリアスの魔法でわずかに怯んだところで、俺も魔法を放つ。


「『大地拘束トゥルバ・エンタズ』……『石槍屹立ハルバ・アガマト』」

「グウッ!」

「え?」

「マジかよ」


 俺はオーガの股間に石の槍を突き刺すつもりで術を行使したのだが、なんと槍がオーガの身体に触れた途端、ぶち折れたのだ。

 それこそボキンッて感じで。

 その異様な光景に俺は、しばし固まってしまう。


疾風迅雷ハラカ・タザリ


 しかしそんな光景にもひるまず、突っ込んだ影があった。

 我らが勝利の女神、ニケだ。

 加速した彼女が、オーガの膝に斬りつける。

 するとその刃は弾かれながらも、わずかな傷を付けた。


「タケしゃま、まりょくとおせば、つうじるでしゅ」

「はっ、そうか。みんな、魔闘術まとうじゅつだ。敵は魔力を使って、防御してるんだ」

「そうか。なら俺たちの出番だな」

「よ~し、行くよ~。『疾風迅雷ハラカ・タザリ』」


 それからは前衛陣の魔闘術による、奮戦が始まった。

 もちろんオーガも反撃してくるが、そこは俺の”大地拘束”と、アルトゥリアスの弓矢で邪魔をする。

 やがて全身に傷を負ったオーガが、がっくりと膝を突いた。


鋭刃金剛カウィ・サイフ


 オーガの喉元に、切れ味を強化したニケの一撃が放たれる。


「グバアッ……」


 とうとうオーガは断末魔の声を上げながら、崩れ落ちた。


「ハァッ、ハァッ……やった、でしゅ」


 とどめを刺したニケが、息を荒げながらも満足の声を上げている。

 しかし11層での探索は、より難度の高いものになりそうだった。

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