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迷宮へ行こう ~探索のお供はケモミミ幼女~  作者: 青雲あゆむ
第4章 上級冒険者編

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50.ボーエン迷宮

 ベルダインから、想い人の殺人事件に関する手がかりを得たガルバッドは、その後いくつかの手紙を出していた。

 主に王都の知り合いに、容疑者キーゲンの調査を頼んだのだ。

 さすがにすぐに返事がくることもないので、その間は俺たちと一緒に迷宮に潜っていた。


 新たな探索先である10層に出るのは、大豚鬼オークという人型の魔物だ。

 身長が2メートル近くあり、体重は200キロを下らないであろう巨体に、豚の頭を付けたような存在である。

 粗末な布を腰に巻き、こん棒を持っていることから、ある程度の知能がうかがえる。

 そんな、危険な敵と俺たちは、やり合っていた。


「『大地拘束トゥルバ・エンタズ』……『石槍屹立ハルバ・アガマト』」

「プギャァァァッ!」


減圧回廊カリル・タリク

「ブゴォォォォッ!」


「よし、敵がひるんだぞ。突っこめ」

「あい、『疾風迅雷ハラカ・タザリ』」

「私も~、『疾風迅雷ハラカ・タザリ』」


 俺とアルトゥリアスが遠距離から先制し、ルーアンたちが突っこむ。

 ガルバッドだけはその鈍足ゆえに残っているが、俺とアルトゥリアスの前面を守ってくれている。

 その後も俺たちの援護を受けながら、前衛陣が3匹のオークを倒しきった。


「フウッ、ようやく終わったな」

「お疲れさん。みんなケガは無いよね?」

「ああ、大丈夫だ」


 するといつものように、ニケがオークから魔石を取り出し、俺の所に持ってくる。


「タケしゃま、ませきでしゅ」

「ああ、ありがとな、ニケ」


 いつもどおりに頭を撫でてやると、尻尾をフリフリさせて喜んでいる。

 ちなみにオークの魔石は、1個銀貨20枚である。

 あいにくと他に売れる物がないので、この階層の実入りは少ないが、戦闘経験だけはたっぷり積める。

 さらに運が良ければ、薬草や鉱石が見つかるので、俺たちはじっくりと探索を進めていった。


 そんな生活が2週間ほど続いた頃、ようやくガルバッドに手紙が届いた。


「何かいい情報でもあった?」


 手紙を読んだガルバッドが考えこんでいたので、訊いてみる。

 すると彼は、眉間にシワを寄せながら答えた。


「どうやら最近は王都に姿を見せては、おらんようじゃ。しかしキーゲンは、ボーエンの迷宮に潜っている可能性が高いらしい」

「ふ~ん、ボーエン迷宮って、どんなとこなの?」

「たしか、人型の疑似生命体が出る迷宮じゃ。木人形ウッドパペットとか石魔像ストーンゴーレムみたいな魔物じゃな」

「へ~、そんな迷宮もあるんだ」


 そこへアルトゥリアスも話に加わる。


「たしかにちょっと珍しい迷宮ですね、ボーエンは。ここのように、いろんな種類の魔物が出る所の方が多いですから。しかし王都の周辺には、そういう特化型の迷宮もいくつかあります」

「ああ、王都周辺には、いくつも迷宮があるんだったね」

「ええ、そのおかげで繁栄したようなものですから」


 迷宮からは魔物が湧き出したりするが、ちゃんと管理されてさえいれば、魔石や素材の供給源として有用だ。

 そのため迷宮が集中する地域は、繁栄しやすいのだ。

 そんな話をしつつ、俺はみんなに確認を取る。


「それじゃあ、みんなでボーエンに行くってことで、いいよね?」

「ええ、構いませんよ」

「おう、いいんじゃねえか」

「私も賛成~」

「いくでしゅ」

「クエ~」


 皆が賛成する中、ガルバッドだけが申し訳なさそうな顔をする。


「本当にいいんか? ここの攻略も中途半端になっちまうぞ」

「構わないって。別に期限があるわけでもなし。それによその迷宮を攻略するのも、いい経験になると思うんだよね」

「そうですよ、ガルバッド。私たちは旅行気分で行くのですから、あなたが気にする必要はありません」

「たび、たのしいでしゅ。ゼロスもはりきってる、でしゅ」

「クエ~」


 ニケとゼロスのやり取りで、みんなが笑う。

 すると遠慮していたガルバッドも、ようやく納得したようだ。


「分かった。手間を取らせるが、ボーエンまで付き合ってくれるか」

「もちろん」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 話が決まれば、行動は速かった。

 俺たちはチャッチャと旅の準備を整え、翌日には竜車で出発する。

 目的地のボーエン迷宮は、王都から馬車で数時間の所にあるので、まずは王都へ向かう。

 今回は道を知っていたのもあって、たったの3日でたどり着いた。

 そしてその翌朝早々にはボーエンへ向かい、昼前に到着した。


「なんか、寂しいとこだね」

「まあ、近くに王都があるからな。ベルデンのような街にはならんのじゃ」

「それもそうか」


 着いた先は、村とも呼べないほどの小さな集落だった。

 一応、周囲を防壁で囲っているが、迷宮管理棟の他に建物がいくつかある程度で、人も少ない。

 とりあえず俺たちは酒場に入り、料理を注文してから作戦を練る。


「まずは迷宮の情報を集めてから、軽く攻略するんだよね?」

「うむ、そのうえで夜は情報収集じゃ。ここは広場で野営をする者が多いから、話を聞きやすいじゃろう」

「ああ、宿なんて無さそうだもんね」


 どうやらキャンプ場に泊まるような感覚らしい。

 防壁には守られているし、物も買えるので、贅沢さえ言わなければ十分だろう。

 俺たちはのんびり食事を取ると、さっそく迷宮へ潜った。


 迷宮管理棟の中から階段を降りると、石壁に囲まれた部屋に出る。

 ベルデンが天然洞窟のような岩肌なのに比べると、いかにも人工的だ。

 その先の通路も石壁が続いており、直線的だった。


 やがて別の部屋にたどり着くと、そこに3体の木人形が現れた。

 背丈は160センチぐらいで、お世辞にもたくましいという感じではないが、右手に木剣、左手に木の盾を持っていた。

 俺たちに気づいた途端に動きだすが、キコキコという音を立て、動きもぎこちない。


「ウッドパペットじゃ」

「うわぁ、なんか新鮮~」

「馬鹿いってんじゃねえよ」


 のんきなことを言ってるうちに、敵が襲いかかってきた。

 それを迎え撃つように、ニケ、ルーアン、メシャが前進し、斬り合いになる。

 しかし最初こそ様子を見ていたが、強くないと分かると、みんなあっさりと倒してしまった。


「やっぱり全然強くねえな、こいつら」

「そうね~、ゴブリンよりマシって感じ?」

「よわいでしゅ」


 仮にも上級になった冒険者が、たかが1層で苦労するはずもない。

 その後もサクサクと進み、2層への階段を確認した時点で、引き返した。

 外へ出るとすでに日は沈み、いくつかのパーティーが広場で野営を始めている。


 俺たちもその一角に陣取ると、テントを張ったり、料理を準備しはじめた。

 やがて夕食を終えてリラックスしたところで、情報収集を開始する。

 近場の冒険者に酒を振る舞いながら、情報を引き出すのだ。


「こんばんわ~、ちょっと話、聞かせてもらって、いいですか?」

「おお、見ねえ顔だな」

「ええ、今日きたばかりなんで。お酒、出しますよ」

「おお、それなら大歓迎だ。こっち来いよ」


 俺はガルバッドと組んで、いろいろと聞いて回った。

 この迷宮のこと、魔物のこと、そして有名なパーティーのことなどだ。


「この迷宮で上位を張ってるのは、どんなパーティーなんですか?」

「ん~、ここで有名なのは、”鉄拳団”に、”紅蓮の刃”、”青銅の戦士”ってとこかなぁ」

「へ~……そういえば、”宵闇よいやみの爪”っていう名を聞いたことあるんですけど、どうなんですか?」


 ”宵闇の爪”とは、キーゲンの所属するパーティーだ。

 何気なく聞いたつもりだが、相手は急に口をつぐんでしまう。

 彼らは少し間を置くと、声をひそめながら忠告してくれた。


「そのパーティーが有名なのは事実だが、あまり口に出さねえ方がいい。あいつらに関わると、ろくなことにならねえからな」


 どうやら俺たちの捜査対象は、思った以上にやばい奴のようだ。

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