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迷宮へ行こう ~探索のお供はケモミミ幼女~  作者: 青雲あゆむ
第3章 中級冒険者編

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42.引っ越し、そして再スタート

 ルーアンとメシャが正式に仲間に加わったこともあり、俺たちは皆で住む家を借りた。

 迷宮から遠いことを除けば、その家はすばらしい物件で、竜車も買ったので移動も問題なくなっている。

 そしてさっそく翌日には、新しい家への引っ越しを開始した。

 手持ちの荷物はわずかなものだったので、新たな生活のための物資を買い足す。

 寝具や調理道具、掃除具などを竜車に積み込み、せっせと新居に運び込んだ。


「よ~し、とりあえずざっと掃除しちゃおう。1階はアルトゥリアスとガルバッド。2階はルーアンとメシャ。俺とニケは3階だ」

「「「了解」」」

「まかせるでしゅ」


 まずはみんなで手分けして、家の中を片付ける。

 使う部屋だけでもきれいにして、寝具や生活用品を入れていった。

 それだけでもけっこうな時間が過ぎ、いつの間にか日も暮れ、1階ではガルバッドが料理を作りはじめていた。


「ふう、3階はだいたい片付いたよ。おなかが空いたな」

「おう、もうじきできるから、待っちょれ。飲み物を準備してくれるか?」

「ああ、任せて」

「たのしみ、でしゅ」


 やがてルーアンたちも降りてくる頃には、すっかり夕食の準備が整っていた。


「さあ、夕飯にしようぜ」

「ああ、腹がペコペコだ」

「私も~」


 みんなが席に着くと、俺が酒盃を掲げる。


「今日はお疲れ。これからの新生活に、乾杯だ」

「「「かんぱ~い」」」

「クエ~」


 てんでに酒盃を傾けると、さっそく食事に取り掛かる。

 今日は肉の丸焼きに、野菜たっぷりのシチュー。

 新鮮な野菜サラダに、焼きたてのパンといったところだ。

 酒を飲みながら、みんなの手が止まらない。

 それでも少し落ち着くと、会話も弾んでくる。


「いや~、それにしても、いきなり家に住めるとは思わなかったぜ。しかも馬車まで買っちゃうんだから、すげえな、あんたら」

「そうそう、ちょっと信じられないって感じ~」


 ルーアンとメシャの言葉に、俺が応じる。


「これくらいの所帯になってくると、家を借りたほうが得だからね。まあ、ゼロスと一緒に住みたいってのも、あったんだけど」

「そうでしゅ。これからは、ずっといっしょ、でしゅ」

「クエ~」


 俺とニケの言葉に、ゼロスも嬉しそうな声を出す。

 最近は厩舎に隔離されていて、寂しかったのだろう。

 今も楽しそうに、モリモリとご飯を食べている。


 ゼロスはトイレのルールも守れるぐらい賢いし、清潔好きなので、これからは座敷犬ならぬ座敷竜として、一緒に暮らすことになる。

 もちろん仲間たちの了解を得ているが、最初はルーアンたちがちょっと驚いていた。

 しかしゼロスの賢さを見せてやったので、その後は文句もない。


 やがて話題は迷宮の攻略へ移る。


「それで、7層の攻略はいつから始めるんだ?」

「ああ、もう1日だけ家を整理したら、明後日あさってから潜ろうと思う」

「そうか、いよいよだな」

「ルーアン、なんか楽しそう~」

「まあな。なんてったって中級の領域だ。上級になれるかどうかが、これからに掛かってくる」


 メシャに指摘されたルーアンが、不敵に笑う。

 彼は上級冒険者になることを、大きな目標に据えているらしい。


「ふ~ん、上級冒険者になって、認めてもらいたい人とかいるの?」

「い、いや、別に誰に認めてもらいたいってんじゃないが……村を飛び出してきたからには、何かでかいこと、やりてえじゃねえか」

「まあ、そうだよね」


 なぜかバツの悪そうにするルーアンを不思議に思いながら、その場は適当にうなずいておいた。

 その後も迷宮や故郷の話をしながら、歓談を楽しむ。

 ただし俺が迷い人であることは、まだルーアンとメシャには言ってない。


 アルトゥリアスやガルバッドから、まだ伏せておいた方がいいと言われたからだ。

 ルーアンたちにも隠し事はあるようなので、じっっくりと信頼関係を築けばいい。

 焦る必要もないだろう。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 実際に2日を掛けて引っ越しを済ませると、俺たちは迷宮へ舞い戻った。

 ルーアンとメシャを伴って初めて7層へ跳び、慎重に探索を開始する。

 すると早々に4匹の影狼シャドーウルフが、姿を現した。


「来たぞ。前衛は1匹ずつ相手をしてくれ。俺とアルトゥリアスは援護する」

「「「了解」」」


 ニケ、ガルバッド、ルーアン、メシャが敵に向かっていく。

 俺は魔導砲インドラを、アルトゥリアスも弓を構えて、後方で万一に備えた。

 しかしシャドーウルフ自体はサシで苦労するほどでもなく、しばし見ていると、それぞれに勝利を収めていた。


「ふうっ、それなりに手強いけど、なんとかなるじゃないか?」

「うん、なんか拍子抜け~」

「フハハッ、甘い甘い。下手すると、あれが10匹以上も出てくるんじゃぞ。えらそうなことを言っておると、後で吠えづらをかくわい」


 楽観的なことを言うルーアンとメシャを、ガルバッドがたしなめる。

 するとルーアンが、顔をしかめながらぼやいた。


「うえ、マジかよ。ていうか、そんなのと4人で戦ってたのか?」

「まあね。だけど余裕がないから、新たな仲間を探してるところに、ルーアンたちが声を掛けたってわけ」

「なるほど、それはお互いに好都合だったな。まあ、このメンツなら、10匹くらい大丈夫だろう」

「多分ね。まずは魔石を採って、先へ進もうか」

「ああ」


 魔石を採取すると、再び探索に取り掛かる。

 その後もちょくちょくシャドーウルフに遭遇したが、前半は危なげなく戦えた。

 そして探索は順調に進み、いよいよ後半に差し掛かる。


「来たぞ。前衛は防御態勢。俺は後ろのやつを足止めするから、アルトゥリアスは前衛を援護して」

「「「おう」」」

「了解です」


 10匹近い敵の出現に、俺たちは戦い方を変える。

 前衛の援護はアルトゥリアスに任せ、俺は土魔法を行使した。


大地拘束トゥルバ・エンタズ

「グルアッ!」


 後方にいるシャドーウルフの足元が陥没し、何匹かの足を拘束する。

 すると脱出しようと暴れる仲間を尻目に、無事なシャドーウルフが襲い掛かってきた。


減圧回廊カリル・タリク

「ギャンッ!」


 そのうちの1匹に、アルトゥリアスの矢が命中する。

 低圧の通り道に導かれた矢が、見事に敵の頭蓋を貫いた。

 同時に前衛に襲いかかる敵もいたが、その数はそれほど多くない。

 概ね1対1の戦闘に持ち込み、複数でやられそうなところは、俺とアルトゥリアスで援護した。

 おかげで終始、戦闘は有利に進み、やがて全てのシャドーウルフが倒される。


「ハアッ、ハアッ、たしかに、この数はきついな」

「うん……だけど、なんとかなったね」

「まえより、ずいぶん、らくだったでしゅ」

「うむ、これならこの先も進めるの」


 激しく息をつくルーアンとメシャに対し、ニケとガルバッドは若干、余裕がありそうだ。

 そんな彼らをねぎらうように、俺とアルトゥリアスも声を掛ける。


「お疲れお疲れ。さすがに今回は余裕があったね」

「ええ、肝の冷えるような場面もなくて、安心でした」


 するとルーアンとメシャが、苦笑いをしながら顔を見合わせる。


「これはキツいパーティに入っちまったかな?」

「うん、ちょっと思ってたのと、違うかも。だけどこれぐらいの方が、お金も強さも手に入るじゃない?」

「それまで命がもつかな?」

「さあ……」


 そんな兄妹の会話を聞きながら、俺はさらなる探索に思いを馳せていた。

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