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迷宮へ行こう ~探索のお供はケモミミ幼女~  作者: 青雲あゆむ
第3章 中級冒険者編

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41/115

40.正式加入

 6層で1泊した俺たちは、翌日も守護者部屋を目指して出発した。

 チョコチョコ出て来る暗殺蟷螂アサシンマンティスを倒しながら、迷宮の奥へと歩を進める。

 そうして十分に余力を残した状態で、守護者部屋の前へたどり着いた。


「さて、割り振りはどうしようか?」

「そうですね。前回はニケさんが手下を引きつけている間に、私たちでクイーンを倒しました。今回はルーアンとメシャに、手下を引きつけてもらえばいいのでは?」

「う~ん、それでもいいけど、彼らにはクイーンを倒して欲しいかな。肉体の強化度を上げて欲しいんだ」

「ふむ、実技試験のためにも、その方がいいですか。それではニケさんとガルバッドで、1匹ずつマンティスを引き受けてもらえますか?」


 魔物を倒すことによる生命力の獲得は、同じ空間内にいれば可能となる。

 しかしやはり強敵を倒せば倒すほど、その成長度も高いものとなるのだ。

 俺とアルトゥリアスの提案に、ニケとガルバッドが快く応じる。


「まかせる、でしゅ」

「儂もかまわんぞ」


 するとルーアンが申し訳なさそうに、頭を下げる。


「おいしいところを任せてもらって、悪いな。この礼は、7層からの働きで返すつもりだ」

「アハハ、ごめんねえ。ちゃんと働くからぁ」


 生真面目なルーアンとは対照的に、メシャがおどけてみせる。

 彼女はちゃんと仕事はこなすので、さほど気にも掛からないが、必要以上に軽く振る舞っているように見える。

 彼女なりに事情はあるのだろうが、そのうち話してもらいたいものだ。

 そんなことも考えつつ、俺は号令を掛けた。


「よし、それじゃ行こうか」

「「おう」」


 準備を整えて守護者部屋へ踏み入ると、奥の方に敵が現れた。

 この部屋の主であるクイーンマンティスと、そのお供たちである。


突風アスファ


 いきなりアルトゥリアスが風魔法を敵に叩きつけた。

 ただし今までの突風とは違い、風精霊シェールが敵前まで飛んでぶっぱなしているので、従来とは密度も速度も段違いに上だ。

 いきなり強風を浴びて怯んだところに、ニケとゼロス、そしてガルバッドが、お供に向かって襲いかかった。

 お供の邪魔が無くなったところで、俺たちはクイーンに仕掛ける。


大地拘束トゥルバ・エンタズ

「キシャーッ」


 クイーンの足元が陥没して、4本の足のうち2本を絡め取る。

 敵は必死に暴れて足を引き抜こうとしたため、そこに大きな隙ができた。


減圧回廊カリル・タリク

「キシャッ」


 そこへ超高速の矢が飛んで、クイーンの胴体に突き立った。

 苦鳴を上げてひるんだ敵に、今度はルーアンとメシャが飛びかかる。

 ルーアンの曲刀と、メシャの短剣が、クイーンの足をえぐる。


 クイーンの方も負けじとカマを振り回すが、俺とアルトゥリアスの援護もあって、有効打にならない。

 その隙をかいくぐって、ルーアンたちがさらに攻める。

 彼らもずいぶんと、張り切っているようだ。


 そんな攻撃を5分ほども続けていると、とうとうクイーンが膝を折った。

 すでに満身創痍な敵の頭部に、ルーアンがとどめを刺し、クイーン戦は終了する。


「よし。メシャとアルトゥリアスは、ガルバッドの援護に。俺とルーアンはニケを援護だ」

「「了解」」


 休む間もなく、お供たちを引きつけていた仲間の援護に入る。

 それまで防御と回避に専念していたとはいえ、ニケたちの疲労もそれなりだ。

 俺はすかさずニケの相手に対し、術を行使した。


大地拘束トゥルバ・エンタズ

「ありがと、でしゅ」

「俺も助太刀するぜ」


 動きの止まったマンティスに、すかさず反撃するニケ。

 さらに応援に入ったルーアンも加わって、猛然と反撃を開始した。

 おかげでクイーンよりはるかに弱い敵は、ほんの2,3分で地に崩れ落ちる。

 当然、ガルバッドの方もすぐに片がついた。


「ふう、あんたら、本当に強いんだな。こんなにあっさりと勝っちまって、申し訳ないぐらいだ」

「アハハ、そりゃあ、すでに4人だけで倒してるからね」

「クエ~」

「ああ、ゼロスも一緒だったな」


 すかさず抗議の声を上げるゼロスをフォローしてやると、笑いが巻き起こる。


「プククッ、まったく。さっきまでの緊張が、嘘みてえだ。だけどこれを俺の実力だと勘違いしちゃあ、いけねえんだろうな」

「そうそう。私たちは寄生してるだけだからね。自惚うぬぼれてちゃ、駄目よん」

「自惚れてねえって。とにかくあんたらには、感謝してる……ところで俺たちは、パーティーメンバーとして合格なのかな?」


 ちょっと遠慮気味に訊くルーアンに対し、俺はにこやかに答えた。


「もちろんさ。実力も人柄も、問題ないと思ってるよ。な?」

「もちろんでしゅ」

「ええ、問題ありませんね」

「うむ、これからもよろしく頼むぞ」

「クエ~」


 俺の問いに、他のメンバーも快く同意していた。

 これで今後の探索にも、目処がつきそうだ。


「さて、とっとと魔石を回収して、地上へ戻ろう」


 こうしてルーアンとメシャの加入も正式に決まり、俺たちは意気揚々と地上へ引き上げた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 地上へ戻ると、ギルドで報告と実技試験の申込みをしてから、酒場へ移る。


「それじゃあ、ルーアンとメシャの正式加入を祝って、乾杯!」

「「「かんぱ~い」」」


 すると勢いよくジョッキを空けたルーアンとガルバッドが、満足の声を上げる。


「プハ~ッ、今日の酒は格別だな」

「フハハッ、そうじゃろう、そうじゃろう。なにしろ、中級冒険者に手を掛けたんじゃからのう」

「ああ、まだ試験をこなさなきゃいけねえけど、望外の状況だ。あんたたちには、本当に感謝している」


 そう言ってまた、ルーアンが頭を下げる。


「もういいって。俺たちの方こそ、いい仲間が増えたって、喜んでるんだ」

「そうだよ、兄貴。そんなに卑屈にならなくってもいいじゃん」

「馬鹿いえ。こういうのが大事なんだぞ、世の中は」

「まあまあ。それにしても、なんでルーアンは、俺たちに声を掛けたの? それだけの腕があれば、他のパーティーにも入れただろうに」


 放っておくとケンカになりそうなので、以前から気になっていたことを訊いてみた。

 実際、彼らほどの腕があれば、引く手数多てあまただと思っていたからだ。


「ん、まあ、それはそうなんだがな……」


 ルーアンは言葉を濁しながら、メシャを見る。

 するとメシャが軽い感じで、話を続けた。


「アハハ、実は私、男が苦手なんだよねぇ。かといって女ばかりのパーティじゃ、今度は兄貴が困るじゃん。どうしようかって悩んでたところに、あんたらを見かけたってわけ」

「ふ~ん、でも俺たちだって、ほとんど男だぜ」

「そうだけどさ、こんな小さな子が、楽しそうに笑ってたんだよ。きっと悪い人たちじゃないって、そう思ったの」


 メシャはそう言いながら、ニケの頭を撫でる。

 するとニケは満足そうに胸を張り、こう言ってのけた。


「せいかい、でしゅ。タケしゃまは、とてもいいひとでしゅから」

「アハハ、そうだね~」


 にこやかに笑うメシャを横目に、ルーアンが後を締めた。


「まあ、そういうことだ。だからこれからも、よろしく頼む」

「こちらこそ……あ、そうだ。この際だから、家を探してみないか?」


 せっかくなので前々から考えていたことを、提案してみた。

 するとガルバッドが食いついた。


「おお、それはいい考えじゃな。モノ作りがしやすくなる」

「うん、それもあるね。だけど一番の理由は、ゼロスなんだ。最近、離されて、寂しそうだから」

「ああ、それもそうじゃな」


 最近はゼロスがでかくなり過ぎて、宿にも酒場にも入れない。

 夜は厩舎に預けるのだが、寂しそうに鳴かれるのが辛い。


「それならいいんじゃねえかな。宿代だって、安くなるだろうし」

「だよね。それじゃあ、明日の試験が終わったら、探してみようか」

「賛成賛成~」


 こうして意見はまとまり、俺たちは家を借りることにした。

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