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迷宮へ行こう ~探索のお供はケモミミ幼女~  作者: 青雲あゆむ
第1章 駆け出し冒険者編

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幕間:ニケの太陽

ブクマ、評価ありがとうございます。

励みになります。

 おとしゃん、死んじゃった。

 おかしゃん、死んじゃった。


 あたしの名前は、ニケ。

 狼人族キトリ村、アロスとレナの娘。

 おとしゃんのアロスは、村でも有数の凄腕狩人だった。

 おかしゃんのレナは、村で1,2位を争う美女だった


 だから2人の結婚は、周りから羨ましがられつつも、祝福されたそうだ。

 だけど、あたしが生まれてから、それは変わってしまった。

 あたしの毛の色が、金色だったから。


 普通は灰色か黒色だから、あたしは忌み子と呼ばれ、いじめられた。

 周りの子供たちとは一緒に遊ぶどころか、よく石をぶつけられ、馬鹿にされたものだ。

 よく泣いて帰ったあたしを、おかしゃんは優しく慰めてくれた。


「みんなひどいことをするわね。だけどニケ、周りの人を恨まないで。人は自分と違う者、理解できないものを、傷つけようとするの。本当はニケのこの金色の髪は、誰よりも強くなる可能性を示してるのよ。ずうっと昔に狼人族を束ねた英雄が、やっぱり金色の髪と尻尾を持っていたんだって。だからニケは大きくなったら、きっと強くなるわ。でもその時は、弱い者いじめなんてしないでね」


 おかしゃんはあたしを抱きしめながら、よくそんな話をしてくれた。

 あたしは英雄の生まれ変わりだから、いずれ強くなる。

 そしたら周りの見る目も、変わるだろうって。


 だけどそんな期待に反して、事態はさらに悪くなった。

 あたしの成長は異常なほど遅く、体があまり大きくならなかったからだ。

 見た目が異なるだけでなく、成長も遅いあたしは、さらに多くの人から、忌み子と呼ばれるようになった。


 するとそれまでは優しかった人々も、次第に態度が変わる。

 いつしかあたしの家族は、村中からうとまれ、居場所がなくなっていった。

 おとしゃんとおかしゃんは、それでもがんばっていたけど、とうとうあたしが9歳の時に村を出た。


 村を出てからは、さらに苦しい日々が待ち受けていた。

 何の後ろ盾もないような獣人に、この世界はひどく厳しいから。

 満足にものも食べられず、外敵に怯える日々が長く続いた。


 だけどおとしゃんもおかしゃんも、決してあたしのことは責めなかった。

 あたしは悪くないんだから。

 あたしはいずれ強くなるんだから、くじけずにがんばれって。


 やがて迷宮都市ベルデンに落ち着くと、状況が少し好転する。

 ここにはいろんな人種が暮らしていて、冒険者としての仕事もある。

 思えばあの時が、一番楽しかったかもしれない。


 あたしも10歳になってからは、2人と一緒に迷宮に潜った。

 最初はおっかなびっくりだったけど、あたしにもゴブリンやコボルドは倒せる。

 そんなあたしを、おとしゃんとおかしゃんが、とても褒めてくれた。


 さすがは俺たちの子だって。

 さすがは未来の英雄だなって。

 そんな言葉が嬉しくて、あたしもがんばった。


 だけど迷宮をたった3人で攻略するのは、とても厳しい。

 普通は最低でも6人はいないと、3層の探索なんてできない。

 だけどあたしたちはがんばって、守護者部屋までたどり着いた。


 そこまで行ければ、守護者戦に混ぜてくれるパーティーがいるだろうという、目論見があったのだ。

 実際にそれからしばらくして、おとしゃんとおかしゃんを混ぜてくれるパーティーが見つかった。

 だけどあたしは、連れていってもらえなかった。


 こんな小さな子供が、戦えるわけないだろうって。

 絶対に足手まといになるから、置いていけって。

 それでおとしゃんとおかしゃんに説得されて、あたしは宿に残った。


 だけど、いつまで待っても、おとしゃんたちは帰ってこない。

 それで何回か冒険者ギルドに確認に行ったら、おとしゃんとおかしゃんの冒険者証が、守護者部屋で見つかったって、言われた。

 たぶんパーティー全員が、返り討ちにあったんだろうって。


 嘘だ!

 おとしゃんとおかしゃんが、あたしを置いていくわけがない。

 きっと彼らは帰ってくる。


 ただいま、ニケ。

 俺たちは、守護者を倒したんだぞって。

 これからまた、一緒に探索しようなって、そう言ってくれるはずだ。


 だけど待てど暮らせど、おとしゃんたちは帰らない。

 やがて1週間もしないうちに、宿から追い出された。

 あたしにはお金が無いんだから、仕方ない。


 それからは数少ない顔見知りを頼って、生き延びた。

 知り合いの手伝いをしながら食べ物をもらって、軒下で寝させてもらう。

 たまにはちょっとしたご馳走を食べさせてもらったり、温かい寝床を貸してもらうこともあった。

 そんな時は、またちょっとだけ幸せになれた。


 悪い奴に奴隷にされそうになったこともあったけど、その後はより用心深くなることで生き延びた。

 だけどそんな幸運も、長くは続かない。

 なぜか貧民街の悪ガキたちが、あたしに目を付けたのだ。

 奴らはあたしを追い回し、とうとう知り合いに迷惑を掛けはじめた。


 おかげであたしは頼る先を失い、生活する術を絶たれてしまう。

 満足な食べ物も手に入れられず、眠る場所もない。

 あたしは徐々に弱り、そして絶望していった。


 寒いよう、ひもじいよう、寂しいよう。

 助けて、おとしゃん、おかしゃん。

 なんであたしを、残していっちゃったの?


 なんであたしだけ、苦しまなきゃいけないの?

 あたしが忌み子だから?

 忌み子は、生きてちゃいけないの?


 そんなことを考えながら、もう涙も枯れ果てて、ほとんど意識も失いかけていた。

 もうこのまま死ぬんだって、覚悟していた。

 だけどあの日、あたしの頭に触れる、温かい手があったのだ。


「おい、大丈夫か?」


 初めて聞く声に驚いて、頭を上げると、知らないお兄さんが、あたしを見てた。

 黒い髪に黒い瞳で、見慣れない格好をした人だ。

 そして彼はなぜか、あたしのことを心配してくれるようだ。

 もう誰も、関わろうとしないあたしを。

 だけどもう喋るのもおっくうなあたしは、ただうなることしか、できなかった。


「ウ~ッ……」

「あ、ああ、起こしちまったか? 悪いな……おい、どうした?」


 あたしは彼の持ってる串焼きが欲しくて、目が離せなかった。

 さっきまで死を覚悟してたのに、目の前に食べ物を出されると、どうしてもそれが欲しくなる。

 あれが食べたい!

 こんなあたしなんかに、くれるはずはないのが、とても悲しい。


「あ~、なんだったら、食うか?」


 信じられないことに、彼はあたしに串焼きを差し出した。

 もう我慢なんか、できない。


「ガウっ!」


 あたしはそれをひったくるように取ると、猛烈な勢いでかぶりついた。

 おいしい!

 あたしの体に、新たな力が湧いてくる。


 瞬く間に食べ尽くしたあたしに、お兄さんはもっと串焼きを買ってくれた。

 どうやら彼は、本格的なお人好ひとよしのようだ。

 そんなに人がくて、生きていけるのだろうか?


 しかし今は、彼の好意に甘えよう。

 いつかこの恩は、返せばいいのだ。

 誇り高き狼人族は、命の恩を決して忘れない。


 十分に食べさせてもらったあたしはその後、なぜか服まで与えられた。

 久しぶりに会った古着屋のおばちゃんは、相変わらずパワフルで、あたしを洗ってから、服を着させたのだ。

 そして彼女の助言もあって、あたしはタケしゃまの宿に泊めてもらう。


 そう、お人好しのお兄さんの名前は、タケしゃまだった。

 本当の名前はもっと難しいけど、あたしにとってはタケしゃまだ。

 だって、そんな呼び方するの、あたしぐらいしかいない。


 タケしゃまはあたしにとって、太陽だ。

 彼と一緒にいれば、心も体もポカポカになる。

 タケしゃまと一緒に寝たら、次の日は体調が最高だったのだ。


 たぶん魔力か何かを、分けてもらったんだと思う。

 タケしゃまといれば、あたしは何でもできる。

 そして彼に、恩返しをするのだ。


 おとしゃんとおかしゃんは、もう戻ってこない。

 だけど今のあたしには、太陽タケしゃまがある。

 この命、この力、全ては彼のために使おう。

 それがあたしの、天命なのだから。

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