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迷宮へ行こう ~探索のお供はケモミミ幼女~  作者: 青雲あゆむ
第3章 中級冒険者編

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36.風魔法の進化

 アルトゥリアスが俺の考えを認め、精霊との親和度を上げることに前向きになった。

 そこで早速、その奥義を伝授することとなる。


「それでは第一回、妖精と仲良くなるぞ討論会を始めま~す」

「ワ~、ドンドンドン、パフパフ~」

「♪」

「……」


 ニケや地精霊ガイアがノリよく盛り上げようとするも、アルトゥリアスは黙ったままで乗ってこない。

 そんな彼に、俺はダメ出しをした。


「はい、そこ。ノリが悪いよ。そんなことじゃ、風精霊シェールと仲良くなれないぞ」

「それとこれとは、別でしょう。あまり悪ふざけをしないでください」

「はぁ~っ……これだからもう。別にふざける必要はないけど、楽しくやらなきゃ、仲良くはなれないんだよ」


 しかしそう言っても、アルトゥリアスが受け入れる気配はない。

 ある程度、覚悟はしていたものの、これは骨が折れそうだ。

 どうしようかと考えていると、彼が不満そうに言った。


「そもそも、なぜ楽しくする必要があるのですか?」

「ん~、俺も感覚的な話になるけど、楽しい感覚を共有するほど、互いの距離が近くなるんだよ。な、ニケ」

「あい。ガイアちゃんとあたし、いっしょにあそんだでしゅ。だからなかよし、でしゅ」

「♪」


 ニケが誇らしそうに言うと、ガイアもうんうんとうなずいている。

 実際、俺は暇な時はガイアを召喚し、ニケと遊ばせるようにしていた。

 2人は追いかけっこをしたり、俺も混じえて積み木崩しみたいなゲームをして、楽しんでいる。


 そうしていると、ガイアはまるで普通の少女のように思えてきて、急速に距離が接近したのだ。

 最初は俺も、精霊は神聖なものだと考えていたから、ニケにせがまれなければ、気がつかなかったかもしれない。

 そういう意味では、ニケには本当に感謝している。

 まあ、あくまでケガの功名なんだけどね。


「まず、精霊は神聖でベタベタするもんじゃないっていう思い込みを、なんとかしなきゃ。そのうえで親しく接していると、近所の女の子みたいに思えてくるよ。あとは普通に子供に接するような感覚でいいんだ」


 するとアルトゥリアスは、苦虫を噛み潰したような顔になる。


「私は子供が苦手なんですよ。騒々しくて我がままで……」

「そんなことを言ってる限り、精霊とは仲良くなれないよ。これも新たな精霊術のためと思って、ね」


 なおも気が進まない様子のアルトゥリアスだったが、やがて思い切ったように答える。


「分かりました。まずはどうすればいいですか?」

「ん~、まずはシェールを召喚しっぱなしにしといて。あとはニケとガイアが適当にやってくれるよ」

「分かりました。シェール。ガイアたちと遊んできなさい」

「♪♪」


 するとシェールは、嬉々としてニケたちに近寄った。

 彼女たちは最初、何か無言でやり取りをしていたが、やがて追っかけっこを始める。

 その姿は本当に、人間の女の子のようである。

 そんな彼女たちを見ながら、俺たちはのんびりとお茶を飲むことにした。

 ガルバッドが魔導コンロでお湯を沸かし、お茶を入れてくれたのだ。


「たしかにこうして見ると、本当に人間の子供みたいですね」

「ああ、そうだろ? 親和度が増せば、もっとそうなるよ。まあ、その分、面倒も増えるけどね」

「面倒、とは?」

「小さな子供なら、訳の分からない我がままを言ったり、ちょっとしたことですねたりするでしょ」

「ああ、なるほど。本当に子供みたいですね」


 俺が苦笑しながら話すと、アルトゥリアスもその意味が分かったようだ。

 実際、ガイアと仲が良くなったはいいが、いろいろと振り回されそうにもなる。

 そんな時はニケが間を取り持ってくれるので、なかなか助かっていたりするのだ。

 そういう面倒なことも説明していると、遊びが一段落したのか、ニケと精霊たちが寄ってくる。


「シェールちゃんも、たのしい、いってるでしゅ」

「♪」


 誇らしげに報告するニケの横で、シェールがニコニコと笑っている。

 心持ち、以前よりも感情が豊かになっているように、見えなくもない。


「そっか。ありがとな、ニケ」

「エヘヘ、たいしたこと、ないでしゅ」


 無事に役目を果たしてくれたニケの頭を、いつものように撫でると、ガイアが隣に来た。

 なんとなく物欲しそうなその顔は、自分も撫でろと言っているようだ。

 そこで俺は空いてる手に魔力をまとわせ、ガイアの頭を撫でてやる。

 すると心地よさそうにするガイアを見て、シェールが寂しそうな顔をした。


「ほら、アルトゥリアス。こうやって魔力をまとわせながら、シェールを撫でてやって」

「む……こ、こうですか?」


 アルトゥリアスが恐る恐る俺の真似をして、シェールを撫でる。

 すると最初、驚いた顔をしたシェールが、心地よさそうに目を閉じた。


「♪」

「こ、これは合格、ですかね?」


 自信がなさそうに訊くアルトゥリアスに、俺とガルバッドが笑い声を立てた。


「アハハ、そうそう。最初にしては、上手いもんだよ」

「フハハッ、”暴風のアルトゥリアス”とは思えん光景じゃな。まるで本当の親子みたいじゃぞ」

「からかわないでください、ガルバッド」


 そう言うアルトゥリアスは、少し恥ずかしそうにしながらも、悪くない雰囲気だった。

 シェールを撫でる手も緊張が抜け、さまになってきている。

 やがて彼が、ポツリとつぶやいた。


「こうしていると、不思議な感じですね。精神的な距離を詰めた途端に、シェールの存在が明確になったような気がします」

「それってたぶん、実際に実体化度が上がってるんじゃないかな?」

「どういうことです?」


 アルトゥリアスの怪訝な視線を受け、俺は先を続ける。


「アルトゥリアスの言ったことは、俺も感じてたんだ。ガイアと親和度が上がるほど、彼女の存在が明確になってきたように思えてね。思うに精霊は、契約者から認められるほどに、その実体を強固なものにするんじゃないかな?」

「ふむ……なかなか興味深い話ですね。精霊の実体、もしくは自我が強固になったがゆえに、契約者の下を離れて活動できる。そう言いたいわけですか?」

「俺も確信はないけど、ガイアの状態を考えると、つじつまは合うでしょ」

「ふむ……」


 アルトゥリアスが顎に手を当てて考えはじめた。

 すると暇になったシェールが、またニケたちを誘って遊びにいく。

 今度は森の中でウサギを見つけて、それを追い回しているようだ。

 俺とガルバッドはお茶を飲みながら、そんな様子をのんびりと眺めていた。

 すると予想外の事態が起きる。


「あっ、ガイアが土魔法を使った」

「うん? 何が起きたんじゃ?」

「ガイアが今、ウサギの進路を邪魔するために、障害物を作ったんだ。ちっちゃなものだけど、俺には分かる」


 術の規模自体は小さなものだったが、経路パスでつながっている俺には、それが認識できた。

 するとアルトゥリアスも、それに強い興味を示す。


「タケアキ、それは本当ですか? 契約した精霊が独自に術を行使するなんて、聞いたこともありませんよ」

「事実だよ。俺は何も指示をしていない」

「だとすると、やはり魔力を蓄えて、強固な存在になっているということか……」


 そんな話をしていると、ニケがバタバタと帰ってきた。


「タケしゃま~、みんなでウサギ、つかまえたでしゅ」


 その手に、ウサギを持って。

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