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迷宮へ行こう ~探索のお供はケモミミ幼女~  作者: 青雲あゆむ
第2章 下級冒険者編

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33/115

32.6層突破

 俺たちは6層守護者のクイーンマンティスを打倒するため、戦力強化に取り組んでいた。

 俺はガルバッドを巻き込んで魔導砲インドラを強化し、アルトゥリアスとニケは自身の魔法を磨く、といった具合だ。

 そして試行錯誤の結果、とうとう新しい魔導砲インドラが完成した。


「よし、これで完成じゃ」

「ようやくだね。だけどこれもほんと、ガルバッドのおかげだよ」

「いやいや、タケアキがいなければ、儂は思いつきもせんかったぞ」

「できた、でしゅか?」

「ああ、できたぞ」


 ガルバッドが最後の細工をした魔導砲インドラの下に、仲間が集まってくる。

 新型砲の形は、今までどおりM79グレネードランチャーに似たものだ。

 しかしそれまでよりも細かい部品が増え、より現代兵器っぽくなっている。


 その最大の特徴は、砲身の後端についた撃鉄だ。

 下側に付いたトリガーを引くと撃鉄が落ち、グリップに内蔵された魔力タンクと火成石を、連結するスイッチの役目を果たす。

 すると火成石に流れ込んだ魔力が一気に爆発し、弾を撃ち出すという仕組みだ。


 今まで同様に弾丸を先込めする必要はあるが、薬莢部分は不要なので、アルトゥリアスの力を借りなくても済む。

 さらに持てる弾数も増えるので、戦闘力は格段に高まるのだ。

 これならば、クイーンマンティスに勝つ目もあろうというものだ。


「あたしも、つよくなった、でしゅ」

「フフフ、私もですよ。タケアキの助言のおかげですけどね」

「いやいや、2人でがんばったおかげだよ」


 俺の新しい武器を見ながら、ニケとアルトゥリアスも自信ありげな顔を見せる。

 俺が魔導砲インドラ改良しているうちに、彼らも魔法の改良に成功しているのだ。

 ニケは身体強化、アルトゥリアスは風魔法だが、俺のアドバイスも役立ったらしい。


 具体的にニケには、人間の身体構造をレクチャーし、効率的な強化方法を考えさせた。

 最初は頭から湯気を上げてるような有様だったが、地道な説明が功を奏したのか、それまでの感覚頼りの身体強化から、合理的な強化へと進化した。

 これによって身体強化魔法は1段進化し、ニケはより強い力と速さを手に入れている。


 そしてアルトゥリアスには、空気分子の概念と、風の原理を説明した。

 元々理論的なアルトゥリアスは、その内容を瞬く間に理解し、より効率的な魔法へと進化させた。

 おかげで『突風アスファ』や『圧空障壁ハワ・ジダール』の効果が高まり、大型魔物にも対抗できるようになっている。


 ちなみにガルバッドも、魔導砲開発の合間に、自身の盾を強化していた。

 そんな、それぞれの成果を前にして、みんなの視線が俺に集まる。


「これはいよいよ、じゃな?」

「うん、クイーンマンティスに挑もう」

「フフ、汚名返上のチャンスですね」

「やってやる、でしゅ」

「クエ~」


 こうして俺たちは、再度のクイーンマンティス戦に向けて、闘志を燃やしていた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 すっかり準備を整えると、俺たちは4層からまっしぐらに、6層守護者を目指した。

 ただし念のため、6層でアサシンマンティスを相手に、成果を確認する。


突風アスファ

疾風迅雷ハラカ・タザリ


 突如現れたマンティスを、アルトゥリアスが突風で打ちのめす。

 さらにニケが矢のように飛び出し、その胴体に一撃を喰らわせた。

 そのダメージに怯んだところに、新型の魔導砲を向ける。


――ズドンッ!


 以前より低くなった爆音と共に、石の砲弾が放たれる。

 それは見事にマンティスの腹部に突き刺さり、敵に悲鳴を上げさせた。


「『疾風迅雷ハラカ・タザリ』……『剛力無双クアト・カヴィア』」


 そしてその隙を見逃さず、ニケがマンティスに肉薄し、さらに新しく覚えた”剛力無双”で、あっさりと敵の頭を落としていた。

 ”剛力無双”は腕力を増す魔法で、その一撃が格段に強化されている。


「いやはや、儂の出る幕がなかったのう」

「アハハ、それはクイーンマンティスまでお預け、かな?」

「ええ、これからですよ」


 出番がなかったことをぼやくガルバッドに、俺たちは慰めの言葉を掛ける余裕すらあった。

 これならクイーンマンティスとも、ちゃんと戦えるだろう。

 そんな手応えを感じていた。



 その後も目の前に現れるマンティスを片付けながら、守護者部屋へと至る。

 俺たちは万全の準備を整えると、その中へ踏み込んだ。

 以前のように部屋の奥に光が灯ると、クイーンマンティスとその配下2体が姿を現す。


疾風迅雷ハラカ・タザリ

突風アスファ

「こっちは任せいっ!」


 まず速度を上げたニケが、配下のマンティスに斬りかかる。

 それを援護するように、アルトゥリアスが突風を放ち、ガルバッドは俺たちを守るように、盾を構えながら前へ出た。

 するとそれを受けて立つように、クイーンマンティスが前へ出る。

 その巨体からは想像もつかない速度で迫ったクイーンが、ガルバッドにカマを振り下ろす。


「今度は負けんぞ!」


 しかしそのカマは、ガルバッドの構えた盾に阻まれる。

 要所にミスリルや魔物素材を組み込んだことにより、盾の表面に魔力を流せるようになった成果だ。

 すかさず俺は敵のどてっぱらに、石のスラグ弾をぶちかました。


――ズドンッ!


「キシャーッ!」


 見事に胴体に突き刺さった弾が、クイーンに苦鳴を上げさせる。

 その隙にガルバッドも、戦斧を敵の足に打ち込んでいた。


 一方、クイーンの配下2体は、ニケ、ゼロス、アルトゥリアスに翻弄されていた。

 ニケとゼロスが走り回って攻撃を加えると、風のように姿をくらます。

 それを追おうとするマンティスには、アルトゥリアスが『突風アスファ』や『圧空障壁ハワ・ジダール』で行動を阻み、さらに矢も撃ち込んでいた。


 そんな彼らの姿に安心すると、こちらもクイーンへの攻撃を強める。

 敵の攻撃はガルバッドが盾で防ぎ、俺がスラグ弾をぶち込む。

 苛立ったクイーンが俺を追おうとすると、今度はガルバッドの戦斧がクイーンに叩き込まれた。


 そんな、地道な攻撃が実を結び、とうとうクイーンが足を折った。

 ただしその意識はまだまだ健在で、危険なカマを振り回している。

 しかしそんな敵の状態に、俺は千載一遇の好機を見出した。


「チャンスだっ、ガルバッド。クイーンの動きを止めてくれ」

「おっしゃぁ、やったるわい!」


 ガルバッドは盾を前面に構えると、そのままクイーンに向かって突進した。

 その攻撃を受け止めることで、クイーンの動きが一瞬だけ静止する。


「これで、終わりだ。2倍弾ダブルショット!」


 通常の倍の魔力を放出することで、ひと際強力に弾を撃ち出す。

 その弾丸は見事にクイーンの喉に命中し、致命的な傷を与えた。

 その後もしばしクイーンはあがいていたが、やがて力尽き、地上に崩れ落ちる。


「おしっ! クイーンを倒したぞ」

「すごいでしゅ。こっちもおねがい、するでしゅ」

「任せろ」


 それまでなんとか2体のマンティスを押さえていたニケたちも、だいぶお疲れのようだ。

 俺とガルバッドは休む間もなく、そちらの戦闘に介入し、短時間で2体を打倒する。

 無事に戦闘を終え、安堵する俺の下に、小さな戦士が駆け寄ってくる。


「タケしゃま~、すごかったでしゅ」

「ああ、ニケもよく頑張ったな。大丈夫か?」

「これくらい、へいきでしゅ」


 そう言って胸を張るニケを見ると、俺もとても誇らしい気分になってくる。

 実際、この人数で6層の守護者を屠ったことは、異例の快挙のはずだ。

 同時に俺たちは、中級冒険者へのキップを、手に入れたのだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] サブタイトル 32. 6層突破    44行目〚フフ、『汚名挽回』のチャンス ⇒汚名を取り戻したらダメ!!『汚名返上』か〚名誉挽回〛のどちらかが正解
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