表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮へ行こう ~探索のお供はケモミミ幼女~  作者: 青雲あゆむ
第2章 下級冒険者編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/115

31.魔導砲の改良

「ブハアッ、死ぬかと思ったわい」

「やばかった、でしゅ」


 6層の守護者、クイーンマンティスに挑んだはいいが、いきなりガルバッドの盾が切り裂かれた。

 その想像以上の攻撃力にヤバいものを感じた俺は、早々に部屋の外へ逃げ出したのだ。

 無事に脱出できた安堵感から、愚痴がこぼれる。


「しかしなんだよ、あれ? ガルバッドの盾が、まるで役に立ってなかったじゃん」

「うむ、あれはカマに魔力をまとっておるのう。魔物にも魔力を操るものがいるとは、聞いたことがあるが、実際に目にすると驚くわい」

「え、あれって、魔力と何か関係があるの?」


 予想外の言葉について訊くと、アルトゥリアスが話を引き継いだ。


「そうですよ。魔力を上手く使えば、物理的な防御を無効化できるのですから」

「え~っと……具体的にどういうことかな?」


 詳しく聞くと、魔力をまとった武器は、その攻撃力が大幅に増すらしい。

 それはまとった魔力が局所的な魔法となり、防御側の物理法則を改変しているとかなんとか。

 人間でも達人級になると普通に使える技で、一般的にそれは”魔闘術”と呼ばれているそうだ。

 そして魔物の中には、それを実現するものもいるんだとか。


「なんだよ、それ。インチキじゃん」

「そんなの、ずるいでしゅ。ひきょう、でしゅ」


 子供のように悔しがる俺たちを見ながら、ガルバッドとアルトゥリアスが苦笑する。


「いくらインチキと言っても、敵は手加減はしてくれんからのう」

「そうですね。何か、手を考えないといけません。とりあえず地上へ戻って、対策を練りましょうか」

「……くそう、6層の壁は、思った以上に高かったなぁ」

「くやしい、でしゅ」

「クエ~」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 その後は6層の地図を作りつつ、夕方までに地上へ帰還した。

 魔石と素材を売り払ってから、また酒場で夕食を取りながら話をする。


「それにしても、クイーンマンティスの対策はどうしよう?」

「確実なのはメンバーを増やすことですが、それができれば苦労しませんね」

「まったくじゃ。なんだかんだ言って、このパーティーは精鋭ぞろいじゃからのう」

「せいえい、でしゅ。ハグハグ……」

「クエ~」


 ガルバッドの指摘に、肉の丸焼きにかぶりついたニケが賛同する。

 同時に声を上げてるゼロスは別として、たしかにこのパーティーは精鋭ぞろいだ。

 俺とアルトゥリアスは中位の精霊持ちだし、ガルバッドは手堅い前衛をこなすし、モノ作りに長けている。

 そしてニケは、見かけからは想像もつかないほど高速で動き回り、高い攻撃力を誇るアタッカーなのだ。


 しかもこの世界では珍しい魔導砲を運用する関係上、信用できないメンバーは加えたくない。

 しかし、今日見たクイーンマンティスは、今の状態では倒しようがなかった。


「そうなると、武具を見直すしかないかなぁ」

「ほう、どのように見直すのですか?」

「う~ん、例えば、ガルバッドの盾をもっと強くするとか、俺の魔導砲インドラの使い方を見直すんだ」


 するとガルバッドが目を輝かせながら、話に乗ってきた。


「ほほう、道具で対抗するか? それなら儂が協力するぞ」

「ニケは? ニケはどうすれば、いいでしゅか?」


 すると負けてはならじと、ニケまで食いついてくる。


「ニケは、う~ん……武器でも見直すか?」

「うう、それはなんか、いやでしゅ……あたしはこれが、すきなんでしゅ」


 彼女は俺が貸しているナタを抱きしめながら、イヤイヤと首を振る。

 まるでそれを取り上げられるのを、恐れるかのようだ。

 するとアルトゥリアスからも、提案が出てきた。


「ふむ、道具だけでなく、魔法の使い方にも、改善の余地があるかもしれませんね。またしばらく森の中で、試行錯誤してみましょうか?」

「うん、それがいいね。明日はあそこで修行しよう」

「くんれん、がんばるでしゅ。ハグハグ……」


 クイーンマンティスを恐れて逃げ出した悔しさをバネに、俺たちは復讐を誓った。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 翌日は朝から街を出て、いつもの川のほとりへ向かう。

 とりあえず腰を落ち着けると、まずは武具について相談を始めた。


「――という感じで、散弾やスラグ弾を撃ってるんだよ」

「なるほどのう。精霊と契約すると、こんなことができるんか」


 俺が改めて魔導砲の仕組みを説明すると、ガルバッドが感心したようにそれを眺めている。

 その作りはシンプルだが、彼の琴線に触れるものがあるのだろう。


「これだと精霊術よりもすばやく攻撃できて、便利なんだ。問題は、あらかじめ弾を作っておく手間と、弾切れかな」

「それはそうじゃろう。しかし、画期的な方法じゃ……そういえばアルトゥリアスには、これを使えんのか?」


 ガルバッドの問いに、アルトゥリアスは意表を突かれたような顔をする。


「私が、ですか? でも私は、すでに風魔法が使えますからね。あまり必要性を感じません」

「そうか? たしかにおぬしの精霊術は有効じゃが、敵の牽制ぐらいにしか使えておらんではないか。もっと攻撃力を持たせても、いいのではないか?」

「それは……たしかにそうですが、精霊術師としてそのような道具を使うのは、気が進みませんね。攻撃力の強化については、少し考えさせてください」


 ガルバッドのズケズケとした物言いに口ごもりながら、アルトゥリアスは判断を保留した。

 彼なりに何か、譲れないものがあるのだろう。

 ここで俺はかねてから考えていたことを、相談してみた。


「何か弾を撃ち出す仕組みって、作れないかな? 今はアルトゥリアスの風魔法に頼ってるけど、弾が無くなったら終わりでしょ。できれば俺が、単独で撃てるようにしたいんだ」

「う~む、その気持ちは分かるが、そう都合の良い話もなあ…………こんな玩具おもちゃみたいなものなら、あるがのう」


 そう言ってガルバッドは、自身の荷物からいくつかの石ころを取り出した。

 そしてそのうちのふたつを手に持ち、説明を始める。


「これはミスリルと、火成石かせいせきっちゅう鉱物じゃ。この石がおもしろいもんでの、魔力を込めた金属と触れ合わせると……」


 そう言って左手の火成石に、右手のミスリルをカチンと当てると、ポンッと空気が弾けた。


「うわっ、びっくりした!」

「うぅっ……うるさい、でしゅ」

「ハッハッハ、悪かったの。こういうものがあるっちゅうのを、教えたかっただけなんじゃ」

「う”~~」


 いたずらを成功させ、楽しそうに笑うガルバッドを、ニケが恨めしそうに睨む。

 しかし俺は、それどころではなかった。

 頭の中で、これは使えると何かがささやいたのだ。


「ちょっと待って。今の爆発って、どういう原理で発生するの?」

「うん? 火成石に魔力が通れば、弾けるのは常識じゃぞ」

「そうじゃなくて、それはその石自体が弾けるのか、それとも魔力を爆発力に変換してるのかってことさ」


 予想外の食いつきに、ガルバッドが面食らっている。

 しかしそんな彼に構わず、俺は自分の知りたいことを聞き出した。

 というよりも、目の前でいろいろ実験して、調べ上げたというべきか。


 こういう時にガルバッドは、得難い存在となる。

 元々ドワーフというのは手先が器用なことで知られるが、さらに素質のある者は、鍛冶魔法という技が使えるからだ。

 これはドワーフ族固有の魔法で、なんと鉱物や金属を、道具を使わずにある程度加工できたりする。


 その彼に火成石とミスリルを加工してもらい、爆発の発生する状況を、ある程度調べることができた。

 簡単に言うと火成石は、魔力を急速に熱に変換できる鉱物だった。

 急速に発生した熱が、空気の急膨張という形で、見えているのだ。


 そしてこれを応用すると、俺が望んでいるような発射機構ができそうだった。

 上手くすれば、アルトゥリアスの力を借りなくても、弾が撃てるようになるかもしれない。

 俺は魔導砲を改良できそうな手応えに、興奮していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ