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迷宮へ行こう ~探索のお供はケモミミ幼女~  作者: 青雲あゆむ
第5章 特級冒険者編

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101.ロックドラゴンとの戦い

樹木倒壊シャガル・タック

「グル?」


 それは植物魔法を操る精霊術師、レーネリーアの新魔法だった。

 彼女が古代語を唱えれば、広場を囲んでいる樹高5メートルほどの木が1本、内側に倒れる。

 岩竜ロックドラゴンが不思議そうにそれを眺めていると、レーネリーアが次の古代語を唱えた。


「次はこれよ~。『木枷拘束シャガル・エンタズ』」

「グルオッ? グロローーーッ!」


 すると倒れた木の枝がシュルシュルと伸びて、ロックドラゴンに絡みついたのだ。

 ドラゴンは暴れてそれを引きちぎろうとするも、即席の木の枷がそれを許さない。

 これこそが樹木の豊富な13層用に編み出した、レーネリーアの新魔法であった。


 通常ならば種を撒いて成長させるところを、現地の資源で賄うという発想だ。

 もちろん樹木を伸ばすのにも多少の魔力が必要だが、それは新たに植物を育てるよりも、格段に負担が軽かった。

 魔法ですでにある物を使うのと、新たに物を作り出すことの間には、それだけの違いがあるのだ。


 しかし通常であれば、強大な魔物のロックドラゴンを、木の枝ごときで拘束できるはずもない。

 せいぜい腕の太さほどしかない枝など、容易に引きちぎれるからだ。

 しかし実際に敵は目の前で拘束され、もがいていた。


「やるじゃねえか、レーネリーア。この隙にみんな、攻撃するぞ」

「「「おう」」」


 俄然、攻勢に出る前衛陣の声を聞きながら、レーネリーアが新魔法を自慢する。


「うふふ~、上手くいったわよ~。さすが私ね~」

「フフフ、それはみんなで考えた成果なんですがねぇ。ほら、あそこがちぎれかけてますよ」


 一見すると、ロックドラゴンに簡単に引きちぎられそうな拘束だが、意外に踏ん張っている。

 なぜそれが実現しているかといえば、アルトゥリアスが考えだした強化法を応用しているからだ。

 木の枝に魔力を送り込んで補強することで、見た目以上の強度を保っているのだ。


 ただし完全に拘束できているわけでもなく、ブチブチと引きちぎられては、また別の枝が絡みつくといった具合だ。

 しかしそれでほぼ足止めされているロックドラゴンに、前衛陣が攻撃を掛けているのだが……


――ガツン!


「くわ~っ、想像以上にかてえぞ」

「全然、歯が立たないっす」

「やっぱり竜種って、特別なんですかね」

「でもニケちゃんは、傷つけてるよ~」


 前衛のほとんどは、ドラゴンのウロコに傷すらつけられていない。

 その一方で健闘しているのが、ニケとガルバッドだった。


「えい!」

「グルアッ」

「どっせい!」

「グロオウッ」


 戦斧を振るうガルバッドの攻撃が、硬い敵にも効果的なのは以前からだ。

 戦斧であれば、たとえ装甲を切り裂けなくても、内部に強い衝撃を与えられる。

 逆にさほど大きくもない剣でニケが戦えているのは、その武器のおかげであった。

 なぜならそれは、12層の守護者を倒して手に入れた、ナタのような剣なのだから。


 アダマンタイト製のナタ剣は、比類なく鋭く、しかも強靭だ。

 当然、その剣を誰が使うのかで揉めかけたのだが、最終的にはニケに落ち着いた。

 グダグダ言う前に、オーガやミノタウロスを相手に、誰が一番上手く使えるかを試そう、という話になったからだ。


 結果、最も良好なパフォーマンスを示したニケが、使用権を勝ち取った。

 それには彼女が、俺の貸していたナタの扱いに、慣れていたのが大きいのだろう。

 あのナタは暴走牛スタンピードブルとの戦いで壊れてしまったが、それによく似た武器をニケは強く求め、そしてよく使いこなした。

 彼女は執念ともいえるほどの迫力をもって、敵を屠ってみせたのである。


 こうして実力でもってナタ剣を勝ち取った彼女は、今回のドラゴン戦でも、大きな期待を掛けられていた。

 そしてニケはその期待に違わぬ成果を、実際に出しつつある。

 彼女とガルバッドのおかげでロックドラゴンが弱ってくると、俺は次の攻撃に移る。


「アルトゥリアス、行くよ。『氷槍生成タルジュ・サナ』」

「了解です。『流風投射マジュラ・ラマー』」


 俺が作り出した氷の槍を、すかさずアルトゥリアスが敵に向けて放つ。

 しかしそれは残念ながらというか、もしくは予想どおりと言うべきか。

 氷槍はロックドラゴンの装甲には歯が立たず、あっさりと跳ね返されてしまったのだ。


「チェッ、これじゃあダメか」

「ふむ。おそらく守護ミノタウロス並みの硬さは、あるのでしょうね」


 ある程度、予想はしていたので、それほど意外でもないが、やはり少し悔しい。

 するとそれを見たレーネリーアが、我こそはと攻撃を放つ。


「うふふ~、いよいよ私の出番ね~。『樹木倒壊シャガル・タック』」


 レーネリーアは別の木を引き倒すと、自信満々に次の古代語を唱える。


「さあ、行くわよ~。『木槍刺突シャガル・イジャ』」


 その途端、もう1本の木がもりもりと膨張し、その先端がアースドラゴンに向かって伸びた。

 それはまるで生き物のように敵に迫り、その下腹部をえぐらんとする。

 が、しかし……


――ボキンッ


「グウッ!」

「あ~もう~、折れちゃった~」


 しかし所詮は木の槍だ。

 やはりロックドラゴンの装甲を打ち破れず、無残にも折れ曲がってしまう。

 敵は多少の苦鳴を上げているものの、致命傷には程遠い状態だ。

 残念そうに嘆くレーネリーアに、俺は慰めの言葉を掛ける。


「ご愁傷様。レーネリーアが主役を張るには、まだちょっと早いみたいだね」

「う~、くやし~……もう1回やらせて~」


 そんな駄々をこねるレーネリーアを、アルトゥリアスがいさめる。


「今の状態では、何度やっても同じですよ。ここはタケアキに譲り、さらに技を磨いてください」

「……分かったわ~」


 珍しくあっさりと引き下がる彼女を尻目に、俺は水袋を取り出した。

 そして少量の水を手のひらに出すと、魔力の籠もった水球を作る。

 それを敵の足元に放りながら、精霊術を発動する。


氷槍屹立タルジュ・アガマト


 キインッという澄んだ音と共に、氷の槍がそそり立つ。

 それは一瞬でドラゴンの腹部に迫り、わずかな抵抗を押しのけて、それを貫いた。


「グエエエーーーーーーッ!!」


 氷槍で傷ついたロックドラゴンが、苦鳴を上げて暴れまくる。

 その力は凄まじく、レーネリーアの木枷をも引きちぎるほどだ。

 しかし氷槍に貫かれたままでは逃げようもなく、その動きにも当初の力強さはない。

 足元はふらつき、今にも膝を着きそうだ。

 その隙を、仲間たちは見逃さない。


「さすがタケアキ。やるぜ、みんな」

「うっす」

「はいっ、がんばります」

「さすがは、タケしゃまでしゅ」


 そんなことを口にしながら、前衛陣が敵に襲いかかる。

 とはいえ、ロックドラゴンの硬い皮は健在だ。

 少々動きが鈍ったとはいえ、彼らの攻撃力では、大したダメージにならなかった。


 しかしそんな状況を、伝説の武器を持ったニケが打開する。


「えいっ!」

「グエエエーーーーーーッ!」

「さすがはニケだ。みんな、首を狙え」

「うす」

「はいっ」


 ニケに前足の片方を斬りつけられたドラゴンが、とうとう膝を着いた。

 すると比較的やわらかそうな首元が、仲間たちの手に届く高さまで落ちてくる。

 すかさずルーアンたちが、首元を集中的に攻撃した。


剛力無双クアト・カヴィア

鋭刃金剛カウィ・サイフ


 強化魔法を駆使した攻撃が、敵に降り注ぐ。

 その集中攻撃には、さしものロックドラゴンも敵わなかった。


「グアアッ、グウッ……グルルル……」


 ロックドラゴンは断末魔の声を上げながら、地響きを立てて倒れ伏す。

 そしてその身体は、二度と動くことはなかった。

 こうして俺たちは、13層での初戦を、勝利で飾ったのだ。

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