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迷宮へ行こう ~探索のお供はケモミミ幼女~  作者: 青雲あゆむ
第5章 特級冒険者編

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100.13層の攻略開始

 ベルデンで孤児を救済したら、他の貧民にも泣きつかれ、冒険者になるための支援まで請け負うはめになった。

 幸いにも仲間の協力を得て方策が固まったので、次にやるのは資金作りだ。

 俺はまたもやギルド長のガイエンを伴い、領主邸まで資金をねだりにいった。


「また金貨で、50枚も出せと言うのか?!」

「はい。これが上手くいけば冒険者が増えますし、この街の貧困対策にもなるので、子爵様にとっても悪い話ではないと思うんですが」

「う~む……それは分かる。分かるがなぁ……」


 現状の計画とその見積もりを書面にまとめ、説明してやったのだが、子爵の反応はかんばしくなかった。

 彼はしばし考える素振りを見せると、ため息をついてから愚痴をこぼしはじめる。


「この間の出資だけでも、けっこうな負担になっておるのだぞ。おかげで儂の妻がやっきになって、屋敷内の出費を抑えようとしておるのだ。最近は儂の好きなお茶も、気軽に飲めんくなってしもうた」

「それはまた、なんというか……立派な奥様ですね。増税をするのではなく、家内の出費を切り詰めるだなんて、なかなかできることではありません」

「それはそうだが……少し極端なのだ、あやつは」

「はあ、そうなのですか……しかしここは逆に、思い切って投資した方が、後々のリターンも大きいと思いますよ。何しろ孤児の数は限られてますが、一般人の方が数は多いですから。冒険者の間口が、大きく広がることでしょう」

「本当にそうかのう?」


 俺の説得に対し、子爵は疑いの目を向ける。

 実際のところ、冒険者になろうなんて人間がどれぐらいいるか分からないし、ちゃんと利益として返ってくるかも微妙だ。

 するとギルド長のガイエンも口を挟んで、援護射撃をしてくれた。


「僭越ながら、迷宮都市と呼ばれるこのベルデンであればこそ、このような施策せさくは有効でしょう。それにタケアキが育てている孤児は、すでに3層を突破して、8等級にまでなっております。その実績を踏まえれば、それなりに現実味はあるのではないでしょうか?」

「ふむぅ……」


 それでも子爵が首を縦に振らないので、俺は最後の手札を切った。


「分かりました。それならまた俺からも、出資しましょう」

「なに? 本当か、タケアキ」

「ええ、これも乗りかかった船です。金貨20枚でどうでしょう?」

「おお、そうか。それならば少ないが、ギルドからもなんとか捻出しよう。そうですな。金貨10枚を出せば、子爵様の負担は20枚で済みますぞ」


 そう言ってギルド長が提案を持ちかけると、子爵もとうとう観念したようだ。


「くあ~っ……分かった、分かった。出せばよいのだろう。半分以下に切り詰めたと言えば、妻も納得するであろうしな」


 そう言う子爵は苦笑しつつも、どこかサバサバした感じに見えた。

 本来、この街のための出費であるし、多少は値切ったという実績もできたのだ。

 逆に俺とギルドも出資する形になってしまったが、それはある程度、覚悟していたことである。

 むしろ子爵から4割も引き出したと思えば、上々であろう。


 こうして大事な話が終わると、子爵が別の話題を振ってきた。


「まったく、とんだ出費だわい。ところでタケアキは、新しい階層の探索は進めんのか?」

「ああ、それなんですが、この仕事が一段落したら、探索を進めるつもりです」

「おおっ、いよいよか? はたして噂の竜種から、どのような素材が出るのか、楽しみだな」

「ええ、まだ倒せるかどうかも分かりませんけどね」


 実は新規階層である13層は、入り口付近だけの探索は終えていた。

 その際に地竜アースドラゴンのような魔物を発見したのだが、戦わずに帰ってきた。

 それなりに準備を整えてから、本格的に攻略しようという意見で、一致したためだ。


「なんにしろ、身の安全には気をつけるのだぞ。せっかく誕生した特級冒険者が、すぐにおらなくなっては、目も当てられんからな」

「はい。その点は十分に肝に銘じておきます」

「うむ、期待しておるぞ」


 こうして子爵からの金策は、なんとか成功したのだった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 金を引き出した後は、初心者セットの試作や運用体制を整備しつつ、深層攻略の準備をした。

 やがて準備が整うと、俺たちは13層の水晶部屋へと跳ぶ。


「いよいよ13層か。腕が鳴るな~」

「うっす。久しぶりの真剣勝負っすね」

「どんな魔物が出るか、楽しみです!」

「あい、たのしみでしゅ」


 ルーアン、バタル、ザンテ、ニケが楽しそうに抱負を語れば、他のメンバーはそれをいさめる方向に回る。


「うふふ~、張り切るのはいいけど、無茶しないようにね~」

「そうだよ~。何しろ相手は、竜種だからね~」

「ええ、少なくとも最初は、慎重にいくべきでしょうね」

「うむ、安全第一じゃな」


 俺はそれを締めくくるように、号令を掛けた。


「ああ。安全第一で行こうぜ。それでは出発」


 すると仲間たちは、陣形を組んで進みはじめる。

 基本的にバタルを先頭に、ガルバッド、ルーアン、メシャが続き、その後ろを俺とレーネリーア、アルトゥリアスが進む。

 そして俺たち後衛の横をニケとザンテが固め、殿しんがりは荷物を積んだゼロスといった感じだ。

 感覚の鋭い希少種3人組が周囲を警戒してくれるので、奇襲を受ける可能性は低い。


 そうして13層の水晶部屋を出るとすぐ、広大な空間に入った。

 それはここが地上かと思うほど広大で、草原が広がっている9層のようだった。

 ただしそこは木が生い茂った樹林であり、さらに幅3メートルほどの通路が続く樹林迷宮といった構造だ。

 その通路を警戒しながら進むと、少し先に開けた場所が見えてきた。


「最初の広場っす」

「ああ、またあの竜種、いるかな?」


 バタルとルーアンがそんなことを言いながら覗き込むと、広場の中央に大きな魔物がいた。

 そいつは全長5メートルほどの四足獣で、サイのような角を鼻先に持ち、後方には太めの尻尾が生えている。

 遠目にはゼロスによく似ているが、その灰色の体表はデコボコとしてまるで岩のようだ。

 さらにその大きさもかなり上で、体積で5倍以上はあるだろう。


「ふむ。やはりアースドラゴンではなく、岩竜ロックドラゴンのようですね」


 アルトゥリアスが敵の種類を特定する。

 先に確認した内容から竜種の情報を集め、その種族に当たりをつけていたのだ。

 ロックドラゴンとは、人里離れた山岳地帯に住む魔物で、周りに凶暴な種がひしめく魔境に暮らすだけあって、相当つよいらしい。

 ていうか、竜種というのは特別な存在で、どれも規格外の強さを誇るんだとか。


「あれが噂のロックドラゴンねえ。たしかに岩みたいだな」

「だな。ついでにゼロスにも、よく似てねえか?」

「ん~、どうかな?」


 ゼロスは地竜アースドラゴンによく似ているため、模倣竜フェイクドラゴンと呼ばれる魔物だ。

 どうやらロックドラゴンはアースドラゴンと近縁らしく、ゼロスによく似ていた。

 しかしフェイクと呼ばれるのも面白くなかろうと、俺は言葉を濁す。

 するとその意図を感じ取ったニケが、ゼロスをフォローした。


「ゼロスはゼロスでしゅ。にせものじゃ、ないでしゅよ」

「クエ~」


 鼻面をなでながら慰められ、ゼロスが嬉しそうな声を上げる。

 やはり彼はちゃんと言葉を理解しているのだ。

 うかつなことを言わなくてよかったと思っていたら、アルトゥリアスが不思議そうにつぶやいた。


「それにしても、別々の生き物なのに、これほど似ているなんて、不思議ですねえ」

「まあ、強い生き物や、毒を持つ生き物に擬態する生物は、俺の世界にもいたよ。そうやって自分の身を守るんだ」

「なるほど、興味深いですね」


 するとルーアンが待ちきれないように言う。


「おいおい、そんな話はいいから、そろそろ戦おうぜ」

「ああ、そうだな。それじゃあ、打ち合わせどおりにいこうか。今日は期待してるぜ、レーネリーア」

「うふふ~、まっかせなさ~い」


 俺が期待を掛ければ、レーネリーアは自信ありげに胸を張る。

 そんな彼女に苦笑しながら手を振ると、前衛陣がスススっと前へ出た。

 ルーアン、メシャ、ガルバッド、バタル、ザンテ、ニケがすばやく動き、ロックドラゴンを遠巻きに囲む。


 それに気がついたロックドラゴンは、低い唸り声を上げながら、腰を上げた。

 しかし敵はまったく焦った様子もなく、余裕の態度を崩さない。

 さすがは竜種といったところか。


 そんな敵に対して、レーネリーアが大きな声を上げた。


「さ~、行くわよ~。『樹木倒壊シャガル・タック』」


 ここに新たな敵との戦いの幕が、切って落とされた。

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