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迷宮へ行こう ~探索のお供はケモミミ幼女~  作者: 青雲あゆむ
第1章 駆け出し冒険者編
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9.ワーウルフとの遭遇

 魔物のゼロスを加えた探索行は、思いのほか順調だった。

 それまでは2人でこなしていた戦闘を、ゼロスが一部とはいえ肩代わりしてくれるようになったからだ。

 現状ではポメラニアン程度の大きさしかないゼロスだが、彼の戦意は旺盛おうせいである。


「クエ~ッ」

「よし、そっちは任せた、ニケ」

「あい、タケしゃま」


 2層に出てくる犬頭鬼コボルドにも、ゼロスは果敢に突っこんでいった。

 そこで生じた敵の隙につけ込んで、俺とニケが敵にとどめを刺していく。

 おかげで4匹のコボルドにも、危なげなく対処できるようになっていた。


「ふうっ、昨日よりもやりやすいな」

「あい。ゼロスの、おかげでしゅ」

「ああ、そうだな」

「クエ~」


 俺たちはすばやくコボルドの魔石を回収すると、休憩がてらゼロスに魔力を注いでやった。

 これはゼロスが戦闘後に消耗していたため、試しに魔力を与えると、みるみる元気になったからだ。

 それからは1戦が終わるたびに、ご褒美として軽く魔力を注ぐことにしたのだ。

 今も彼は気持ちよさそうに目を細め、魔力を受け入れている。


 その後も俺たちは順調に2層を探索し、コボルドを狩りまくった。

 おかげでその日は初めて、魔石の売却益が銀貨20枚を超えた。

 2人と1匹の稼ぎとしては、破格といっていいであろう。


 上機嫌で宿に帰る途中、ゼロスの卵を買った屋台が目に入った。

 するとニケがゼロスを抱え上げ、屋台に駆け寄っていく。


「たまご、かえったでしゅ」

「クエ~」

「おお、この間、卵を買ってくれたお客さんだね……フムフム、模倣竜フェイクドラゴン、かなぁ。でもちょっと違うような気もする。ちょっと貸してもらえる?」

「いいでしゅよ」


 すぐにニケを思い出した商人が、ゼロスの種別を判別しようと試みる。

 彼はゼロスを受け取ると、あちこちひっくり返して観察を始めた。

 そこへ追いついた俺が、声を掛ける。


「こんちは。これって、フェイクドラゴンっていうんですか?」

「ええ、たぶん、そうだと思います……地竜アースドラゴンに似てるので、フェイクって言われちゃうんですけどね。でも性質がおとなしくて、力が強いので、荷運びには向いた魔物ですよ。使い道が多いので、まあまあ当たりじゃないですかね」

「へ~、それなら買ったかいがあったな」

「もちろんでしゅ。ニケのおとうと、でしゅから」

「アハハ、そうだったな」


 ゼロスは荷運びに使えそうだと聞いて、少し安心した。

 俺たちはゼロスを使った探索を思い描きながら、宿へ帰った。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 翌日も2層に潜り、とうとう3層への階段にたどり着いた。


「よし、今から3層へ潜るぞ」

「あい♪」

「クエ~」


 少し休憩を取ってから階段を下りると、今までどおりの通路が広がっていた。

 そこをニケの先導で進むと、とある部屋の中に、毛むくじゃらの魔物が佇んでいた。

 あれこそが3層の魔物、”人狼ワーウルフ”だ。


 遠目にはコボルドに見えなくもないが、その身長は170センチほどもあって、体つきもたくましい。

 全身は黒っぽい毛皮に包まれ、鋭い牙がズラリと並んだ狼の頭部に、ふさふさとした尻尾が特徴的だ。

 その手足にも鋭い爪が生えており、コボルドとの戦闘能力の差は、比べるべくもない。

 そんな1匹の魔物が、早々に俺たちの気配に気づき、待ち受けていた。


「ゴクリ……油断するなよ、みんな」

「あい」

「クエ~」


 次の瞬間、ワーウルフが俺たちに向かってきた。

 同時にニケが正面から迎え撃ち、ゼロスは左側方に回り込む。

 俺はニケの右後ろに陣取って、槍を構えた。


「ガウッ!」

「ていっ!」


 突っこんできたワーウルフに、ニケがナタを振るうも、敵は軽やかにバックステップでかわした。

 そのため前のめりになったニケを、ワーウルフが爪に掛けようとする。

 しかしそこをすかさず俺が槍で牽制し、ニケへの攻撃を防ごうとした。

 おかげでニケは無事だったものの、今度は俺が敵の標的になってしまう。


「ウガ~!」

「うわっ」


 俺に殴りかかってきた爪を、かろうじてバックラーで防いだ。

 しかしとっさの攻撃に、俺がバランスを崩してしまう。


「クエッ!」

「ウガッ」


 敵の爪にやられる、と思ったところへ、ゼロスが頭突きで妨害に入る。

 もちろんワーウルフはなんの傷も負っていないが、敵はわずかにひるんだ。

 その隙を逃さず、ニケがワーウルフに斬りつける。


「たあっ!」

「グアアッ……ガルルル」

「タケしゃま、きずつける、ゆるさないでしゅ」

「クアァ」


 痛手を負ったワーウルフが後退し、憎しみの目を向けてくる。

 それに対して、ニケも真っ向からナタを突きつけ、殺気をぶつけていた。

 ついでにゼロスも小さいなりに、敵意を放っている。


 その後は俺とゼロスが敵を牽制しながら、ニケが敵に致命傷を与える形になった。

 小さなニケが中心になっているのは、はたから見れば奇妙な光景だろう。

 しかし彼女が俺よりもすばやく、力が強いのも事実だ。

 やがて傷だらけになったワーウルフの首筋に、ニケのナタが食い込んだ。


「グアア、ガアッ……グウウ……」

「ハア、ハア……やっと、死んだ?」

「しんだ、でしゅ」

「クエ~♪」


 敵が崩れ落ちるのを見て、ようやく倒したことを実感する。

 さすがは3層の魔物だけあって、破格の強さだ。

 しかしたったの2人で倒せたのだから、俺たちは誇ってもいいと思う。


「うわ、おおきなませき、でしゅ」

「おお、本当だな。これは高く売れそうだ」

「クエ~」


 ワーウルフの胸からほじくり出した魔石は、コボルドよりふた回りは大きなものだった。

 これだけでも、いかにワーウルフが強いか分かる。


 その後も休憩を挟みつつ、ワーウルフを4匹狩ってから、地上へ戻った。

 ワーウルフの魔石は1個で銀貨2枚なので、今日も稼ぎは銀貨10枚を超える。

 3層の敵は手強いが、なんとかなりそうだ。

 そんな手応えを感じた日だった。

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