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第8話 (レン)
寝静まった二人の顔を、焚き火越しに見る。
ミライが友達を連れて来るとは思わなかった。どうやら、利発で度胸のある子のようだ。これから危険な目に遭う可能性が高いのに連れを増やすのはどうかと思ったけど、この子なら切り抜けられるだろう。もしダメだったら、その時は恨まれるだろうけど。
他に気に入った人間ができれば、彼女の僕への関心もそのうち薄れるだろう。
僕は別に特別な人なんかじゃなくて、放り捨ててしまっても構わない存在なんだと、彼女が気づく日がきっと来る。いや、それよりも僕が死ぬのが先かな。
なんにせよ、楽しくおしゃべりできる友人がいるのはいいことだ。
月はとっくに中天を過ぎているけれど、見張りを交代する気にはならない。どうせ眠れないのだから。だったら、気持ち良さそうに寝ている彼女たちに睡眠時間を譲った方がいいだろう。
夜の鳥の鳴き声が、陰気に響く。焚き火の火が小さくなってきたので、枝を足して風を送る。
「ねえ、そこにいるのかい?」
少し待ったけれど、返事はなかった。