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第21話 (レン)

 どうしよう。困った。

 ミライに引っ張ってこられて、一号と対面しているだけでもどうしたらいいかわからないのに、言い出しっぺのミライは怪物に追いかけられてどこかへ行ってしまった。

 助けに行きたいけど、一歩でも動けば彼の剣が僕の心臓を突くだろう。そうなったら、誰もあの怪物を止められない。

 正直、彼が本気で僕を殺そうとしたら、絶対に勝てない。一撃で仕留められる。それでもまだこうして睨み合っているのは、ミライの言う通り、僕に聞きたいことがあるからだろう。一号の目は、さっきから何か言いたげだ。

「僕に聞きたいことっていうのは?」

「ホムンクルスの作り方を教えろ」

「ダメだって言ったじゃないか」

「なんでだよ。俺は別に、戦争がしたいわけじゃない。仲間と一緒に穏やかに暮らせればそれでいいんだ」

 ホムンクルスが自力で増えるようになったら、人間たちは恐怖するだろう。そして、今度こそバケモノを根絶やしにするまで止まらないだろう。そう言っていたのは、確かシュウだったっけ。

 どうしてなのかは、僕にはわからない。不公平だと思う。人間だって勝手に増えるのに。

 少し考えてから、僕は口を開いた。

「今はどういう作り方をしているんだい?」

「設計図の通りだよ」

「読めるのか?」

「苦労したんだぜ? お前は文字も教えてくれなかったからな」

 そうか、自力で読めるようになったのか。

「誰の設計図?」

「二号。あいつが一番単純な作りなんだろ?」

 二号は、量産型の雛形だった。三号から先は、彼を基準に作られている。特別なことはなにもしていない、通常の人間と大差ないような、いわゆる簡単に作れるホムンクルスが二号で、一号は手始めにそれを作ろうとしてつまずいた。

 だったら、答えは一つだろう。

「熟練度の問題だろうね。むしろ始めたてでここまでできるのがすごい、ってところか」

「どういうことだ」

「例えば、目の前に粘土があって、陶芸家と素人が同じ図面を見て壺を作った場合、同じものができると思う?」

「俺が下手くそってことか」

「まあ、言ってしまえばそうだね」

 そんなことだろうとは思っていた。僕は彼に錬金術を教えなかったから。こんなことになるなら教えておけばよかったかもしれない。いや、シュウの言うことが正しいとするなら教えない方が正しいんだろうか。

「そうか」

 一号は黙りこくって、目を伏せている。考え事をしているんだろう。

 僕をここで殺すか、捕まえて仲間を作らせるか。恐らくはその二択。

 そして、彼はきっと殺す方を選ぶ。

「聞きたいことは、それだけかな?」

 もう、彼にとって僕は用済みだ。殺される前にあの怪物を始末する算段をつけなければ。

 ミライのことはちょっと心配だけど、きっと大丈夫だろう。

「……他にもいくつか、答えろ」

 驚いた。まだ僕に用があるのか。さっさと殺してしまいたいだろうに、それをこらえてまで聞きたいことってなんだろう?

「いいよ。答えてあげる。もっと早く、こういうやりとりをするべきだったんだろうね」

 僕の方を見て、一号は顔をしかめて、なにやら言い淀んでいるようだ。聞きづらいことなんだろうか?

 両者動けないまま、にらみ合う。

「お前は……」

 ようやく一号が口を開いたところで、ダダダっと慌ただしい足音が近づいてきた。


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