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3話 ヤンキー入部

「今村」


「はい」


 栄人達が入学し早くも1ヶ月、いつものホームルームが始まり、出欠確認をする教師。


佐久間さくま佐久間淳大さくまじゅんたはまたサボりか・・」


 気にはしていなかったが、栄人と同じクラスの佐久間と言う生徒、ろくに授業にも出ずサボり癖が多い。

 放課後、一志と大樹が栄人を呼びに来て、部活に向かう三人。


「今日体育館使えねーんだった」


「基礎練習か・・」


「お前ら、基礎は大事だぞ」


「優等生の大樹様、わかりましたよ」


「リア充め」


「お前ら・・」


 大樹の忠告に素直に耳を傾ける二人だが、素直にならず皮肉を浴びせる。

 練習終了後、栄人が取って置きの場所を案内すると言い出す。


「ここは・・」


「俺は中学時代部活をやらず、ここでずっとバスケをしていた」


 ここが、栄人のあのプレイを生んだ原点と思い込む一志と大樹。

 たどり着いたのは栄人が毎日バスケに明け暮れた公園、そこにバスケをやる場所が金網に囲まれていた。


「ちょっとお前邪魔なんだけど」


「あぁっ誰に言ってるんだテメー」


「お前だよお前そこのデカブツ」


 栄人達より先に先客がいた。

 ヤンキー口調の奴は茶髪にピアスをしたまさにヤンキー、背丈は泰と同じくらい。


「あのさ俺、ここでスケボーやるの場所ないから退いてくんない?」


「何言ってるんだテメー、ここはバスケをやる場所だスケボーやるなら出ていきな」


「んだとコラーっ」


 ヤンキーに絡み出す今風ファッションのヤンキーが胸ぐらを掴みだし、負けじと茶髪のヤンキーも胸ぐらを掴み返す。


「ストップ、ストップ」


「あぁ?何だテメー」


 栄人が割って入り仲裁するが、二人の怒りが収まらない。


「俺達、バスケしに来たんだけど喧嘩するなら二人共出て行ってくれない?」


「その制服?テメーら聖峰のやつらか・・まさか同じ学校の奴がいるとはな」


「殴り合うならさぁ、バスケで決着つけようぜ」


 普通なら恐怖で近づけないのに、勇敢に立ち向かう栄人、たまらずに一志と大樹も仲裁に入る。


「ヒデ止めとけ」


「問題だけは勘弁してくれ」


「ん?俺茶髪の兄ちゃんとバスケしたいだけど?」


「くっそーやってられんねー」


 スケボーを持ったヤンキーが、立場が悪くなったのかその場を立ち去る。


「茶髪の兄ちゃん、俺今村栄人、バスケしようぜ」


「佐久間淳大だ、お前見かけに寄らず度胸あるな」


「佐久間?お前同じクラスの?学校来ないの?」


「テメークラスメイトかよ、やりてぇ事なんてねーし、何の為に学校行くのかわからねーし」


「それで不良やってんのかよ」


「あぁ?」


 一志が火に油を注ぐかの様に横やりを入れる、当然淳大が怒りだす。


「お前バスケやってたの?」


「小学校の頃な、中学は途中で退部したわ」


 栄人がバスケの話をすると、淳大が少し過去を語り出すが、あまり多くは語られなかった。


「じゃバスケしようぜ、2対2で」


「やらねーよ、今日は帰るわ」


 自分よりも強い奴が現れ、どんなに頑張っても追い付かない、追い越せない。

 だったら何の為に?それが淳大がバスケをやらなくなった理由。


「バスケやってみるかな」


 翌日、淳大が学校に登校してきた。


「淳大来てくれたのか」


「何でテメーはそんなに嬉しいんだ?」


「お前とバスケがしたい」


 能天気に淳大に話しかける栄人、空気読めと言わんばかりに威圧感半端ない淳大。


「取り敢えず、放課後行ってやるよ、だから、話しかけるな」


 淳大から思いもよらない発言が、放課後淳大が入部しに来たが。


「佐久間君、君の入部は認められないわ」


「はぁ?何でだよ」


「先ずはその髪、後ピアス、次に君の評判あまり良くないのよ、授業にも出ず欠席ばかり、そんないい加減な人がバスケ部に入部した所で続くのかしら?私達は全国を目指しているの」


「・・・」


 沙弥の言う事もごもっとも、全国を目指しているのに淳大の様な不良が来ては部に迷惑かけるに違いない。


「監督、でも俺は淳大とバスケしたいす、こいつはバスケ好きなんですよ」


「今村余計な事言うな、で、どうすりゃいいんだよ?」


「せめて、私達を信頼させなさい」


「どうやって?」


「それくらい、自分で考えなクソガキ、やる気と誠意を態度で示せと言ってるの」


 あまりの態度の悪さに半分キレた沙弥の一言が、淳大の心に深く刻み込む。


「淳大は何でバスケ辞めたの?」


「俺だってな・・頑張った・・頑張ったのに、上には上が居る、どんなに頑張っても追い付かない、追い越せない、頑張ったて無駄じゃねーか」


「それでグレたのかよ、ダッセーな」


「あぁ?」


 一志がまたもや、火に油を注ぐ言い方をし喧嘩になりかけた。


「俺にだって、どう足掻いても勝てねー相手が居たさ、でもなそいつに勝った時の喜びは100倍楽しい、だから、俺はバスケが好きだ」


「くっテメー」


「ちなみに俺は殴り合いとか勘弁な、俺を黙らせたきゃバスケで負かせてみな」


「上等じゃねーか、この野郎、今日は帰るわ」


 捨て台詞を吐いて淳大はその場を後にする。

 自分の不甲斐なさと、過去の自分の行いに腹が立ってしょうがない。

 何で俺は、こんなに中途半端なんだと。



 ・・・自分が嫌いだ・・・・


「クッソ・・ふざけんな」


 最後に、一志に言われた言葉がまだ頭に残り苛立ちが隠せない淳大。

 家に帰ってもまだ、苛立ちが収まらず夜出歩く始末。

 途中道を歩いていると、他校の不良と肩がぶつかってしまう。


「イッテーな、コラッ」


「あぁ?テメーがぶつかって来たんだろうが」


「何だとテメー」


 取っ組み合い殴り合いが始まり、お互いの主張を譲らない二人だが、淳大の脳裏に一志の言葉と沙弥の言葉を思い出す。


「何だテメーもう終わりか?」


 自分を変える為に、淳大は手を出さなかった。

 もう一度バスケがしたいから、変われるなら変わりたい。


 そんな事はお構い無しに、淳大に突っかかった不良は淳大に暴行を加えるが、誰かが通報してくれたのか、警察二人がやって来た。


「お前ら、何をしている?」


「おいっ一人逃げたぞ、追えー」


 逃げた不良を追いかける一人の警察に対し、もう一人の警察は、殴られ出血を帯びた淳大を気遣いながらも近くの派出所で話を聞くため連行される。

 淳大の中に抵抗と言う言葉はなく、両親が迎えに来る。


「この馬鹿、あんたさぁ、何やったの?」


「お母さん、そう怒らないで、確かに夜未成年が一人で出歩くのはけしからんが、この子は被害者ですので」


「そうなんですか、家のバカ息子がご迷惑おかけしました」


 淳大を迎えに来た母親は、派手なスーツを着こなしばっちりと化粧をした茶髪の女性、スナックを経営しているので昼は眠り、夜に仕事に行くので淳大とは親子のコミュニケーションはあまりない。


「ほら、帰るよ離婚してから、何でこの子は」


「チッ・・・」


 何か複雑な家庭状況におかれている淳大、非行に走ったもう1つの理由かも知れない。


「おいっ、おふくろ・・悪かったな・・」


「あらやだ、いつもババァて言うのにどうしたの?」


「う、うるせーな、ちょっと中途半端なヤツをもう一度やってみるわ」


「へぇ・・んじゃこれで、靴買いな、高校入学祝いに買ったやつあんたが燃やしちまうから・・その予算内で納めてくれよ、後あんたを信じるからね、そのお金をゲーセンに使うんじゃないよ」


 渡されたのは現金2万円だった、淳大は中学の時に中途半端な状態でバスケから離れた、しかも、親は高校入学祝いにまたバスケに情熱を取り戻して欲しいと願うため、淳大に新しいバッシュをプレゼントしたが、淳大が不良に走ったため、淳大が自らバッシュを燃やしたのだ。


「バッシュも買った、後は髪の毛とこのピアスか・・あのクソ監督見てろよ・・やってやるよ」


 3日後の事であった・・・。


「さぁ、練習始めるわよ」


「カズ、淳大のヤツあれから学校来ねーな」


「ヒデ、あいつを信じているのか?まさか、あれで根を上げたか?あのヤンキー」


「誰が、根を上げただと?遠藤」


「良く、来たじゃねーか、その黒髪は覚悟の現れか?」


「うるせー黙っとけや」


 再び淳大が現れたが、その姿は最初に会った頃とは180度変わり、ピアスを外し、茶髪から黒髪となり、真っ先に沙弥に近づく。


「俺も中途半端では終われねぇ・・いや、終われないっす、この通り髪も黒くし、ピアスも外したっす・・これで認めてくれるっすか?」


「覚悟は出来たわね・・良いわ・・入部を認めます、だけど、まだ完全に信用したわけじゃないわ、完全に信用を取り戻したければ授業にはちゃんと出なさい」


「う、ウッス」


 着実に部員が増えた、しかも、高さのある人が二人、沙弥の頭の中に部員の役割ポジションが構成されようとしている。


「今更だけど、皆の身長と体重教えて」


「河村隆一郎、170㎝、57㎏です」


「今村栄人、173㎝、60㎏」


「遠藤一志、177㎝、62㎏」


「中河泰、191㎝、72㎏」


「佐久間淳大、189㎝、75㎏」


 何の為に、部員全員の体重と身長を聞くのか不明だが全員素直に答える、残りの茅野を含む3人の一年生部員も。


「じゃあ試合形式で、3対3やるわよ、出来れば中河君と佐久間君は別れて貰えるかな?」


 泰と淳大を中心にチーム編成をした3対3の練習が行われ、当然栄人と一志は別チームとなり変な意地の張り合いが。


「よぅヒデ、あの時の決着が着いてないしここで着けるか?」


「おもしれーじゃねーか、カズやるか?」


 そんな事はお構い無しに、沙弥の思惑は誰をセンターに抜擢するかの試合であった


 チーム編成は一志、泰、河村、対するは、栄人、淳大、大樹のチーム。


 ジャンプボールを淳大が制し、栄人達の攻撃から始まる。


「佐久間君はジャンプ力ならチームで一番だけど・・攻撃はどうかな?菜々子ちゃんどんな些細な事でも良いからデータよろしくね」


「はい」


「さぁて、いっちょやりますか」


 栄人がボールを中まで運ぶと、真っ先に一志が立ちはだかるが・・・。


「あれ?ボールは?」


 一志が栄人のマークに入った途端に、ボールは淳大に渡っていた。

 今までのブランクを取り戻すかの様に、淳大がシュートに行くが。


「させないよ、元ヤンキー」


「げっテメーいつの間に」


「淳大、戻せ」


 栄人の声も虚しく、淳大は既にシュート体制に入り無情にもボールは泰に奪われる。


「や、野郎」


「ディフェンスで取り戻すぞ、淳大」


 河村がボールを運び、一志が中に切り込み出すが栄人と入れ替わりに、淳大が一志と1on1を挑み出す。


「よぅ、元ヤンキー、勝負するか?」


「なめんな、コラ」


 一志と淳大の1on1が始まる、泰はいつでも行けるようリバウンドの準備をするが、栄人が果敢に泰のマークにつく。

 一志も身長の差をお構いなしに、淳大に勝負をかけるが淳大も必死で一志に食らいつく。

 しかし、場数の差で一志が上回り淳大を抜き去る。


「はいっそこまで」


「まぁまぁ、良かったんじゃね?」


「次は負けねー」


 沙弥の考えるチーム編成が大分絞られたが、未知数なのが栄人だ。

 栄人の速さと、瞬時に味方を見極めた的確なパス、彼をフォワードとして使うのはどうなのか・・・疑問が募るばかり。












































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