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ひとりぼっちの少女と、虚影の魔王  作者: 遠野九重
後編 わたしはあなたのことをあいしています
18/25

第十四話 彼と彼女と、彼と彼と彼と.....etc

前半、真川さん視点

後半、有沢くん視点、すこしSF

 ――そのあと、有沢くんが彼らとどんな「話し合い」をしたかは分かりません。


「真川さんのエスコートをよろしくね。僕」

「任せておいてよ、僕」


 有沢くんは【影分体(ドッペルゲンガー)】で分身を生み出すと、わたしを連れてその場を離れるように指示を出したからです。


「失礼、セクハラで訴えないでくれると嬉しいかな」

「ひゃっ……!」


 有沢くんの分身はサッとわたしを担ぎ上げます。

 お姫様抱っこの形、でした……。


「おいこら僕、羨ましいぞちょっと代われ」

「その願いは僕の力を越えている……。そういうわけで真川さんはもらっていくね、たくさんラブラブしておくから安心してよ」


 有沢くん (本体) に「べー」と舌を出すと、有沢くん (分体) はタタタッと走りはじめました。

 わたしを抱え上げているにも関わらず、中々の速度です。


「僕の部屋はボロッボロだし、しばらくはお城のゲストルームに間借りかな」

「えっと、寮の、わたしの――」


 わたしの部屋で暮らしませんか。

 そう提案したかったのですが、照れくさくて言葉は尻すぼみで終わってしまいました。


「何か言ったかな」

「な、なんでも、ないです……」

「そう? ――真川さんの部屋ってのも憧れるけど、セキュリティ的にちょっと、ね」

「聞こえてたんじゃないですか……」

「ごめんごめん、赤くなってる真川さんもいいよね」

「っ――」


 わたしは思わず彼から目を逸らして……甘酸っぱいような、けれど同時に、申し訳ないような気持ちがこみ上げてきます。

 だって、分身でない方の有沢くんはまだあの場に残っているのです。

 もしかすると笹川さんたちと戦っているのかもしれません。

 

 それなのにわたしは、能天気にも彼であって彼でない人(ドッペルゲンガー)とベタベタしてるわけで……。


「――ごめんなさい、降ろしてもらっても、いいですか」


 思わず、そんな言葉が口を衝いて出ていました。


「別に遠慮しなくていいんだよ。真川さんは軽いしね」

「で、でも、有沢くんに悪いというか、こういうのも浮気みたいなものかな、って思いますし……」

「ああ、そういうこと」


 納得顔で頷く有沢くん (分体)。


「だったら心配いらないよ。【影群体】の猫と違って、【影分体】はみんな意識を共有してるんだ」

「……なんだか、SFみたいな話ですね」

「高度に発達した魔法は実際すごいふしぎ、つまりSFさ。だから僕はいま真川さんとイチャイチャしつつ、並行して笹川さんたちをボッコボコにしてるわけ。オーケー?」

「あの、有沢くん」

「なんだい?」

「笹川さんたちも、その、ストレスとか色々あって、暴発しちゃった部分もあると思うんです。だから――」

「分かった。できるだけ手加減しておくよ、他ならぬ真川さんの頼みだしね」





 * *


 



 とまあそんな感じで分体1号が真川さんと遊んでいるあいだ、本体たる僕はマジメに働いていた。


 状況は5対1。

 頭数では劣勢だけど、別に大した問題じゃない。

 なぜかと言えば……はい、こちらのスキルをご覧ください。


___________________________________


影分体(ドッペルゲンガー)Ⅴ】

 自分の影に実体を与えて操る。影の得た情報・経験は己のものとして還元

 その能力は本人のおよそ「1/ (6-スキルランク) 」程度

 「スキルランク×2」時間持続

 また影を「スキルランク-1」体まで分割可能(数に応じて能力低下)

 本スキルはランクⅤまでしか取得できない

___________________________________


 えー、実はこの【影分体(ドッペルゲンガー)】、ランクⅤまで育てるとひどい抜け穴が生まれちゃいます。

 なんと影の分割が無意味になっちゃうんですねー。

 凄ェ!

 マジかよ!?

 なんだってー!


 ではここで実験してみましょう。

 まず分体1号を生み出します。

 こいつは本体と同じ能力を持っているんで、【影分体(ドッペルゲンガー)Ⅴ】が使えちゃうんですね。

 だから1号が2号を作って、2号が3号を、3号が4号を……エトセトラエトセトラ。

 僕が無限に増えていくわけです。

 ほら、簡単でしょう?


 ま、現実問題としては50人が限界かな。

 それ以上になると脳と脳が奇妙なネットワークを形成して、別種の生命体に進化しそうになるんだ。

 イメージとしては『スタートレック』のボーグとか、某魔法少女アニメに出てくる契約したがりの白いナマモノだろうか。


 ともあれ【影分体(ドッペルゲンガー)Ⅴ】があれば、数の差は簡単に埋められる。


 ただ今回は笹川さんたちをやっつければいいってわけじゃない。

 手出ししないように懲らしめるのが目的だしね。


 え、殺さないのかって?


 人殺しはよくないことなんだよ、うんうん。

 僕自身もそういう行為に抵抗があるし、ほら、殺した相手がオバケになったらイヤじゃない? 

 この世界ってファンタジーなわけだし、そういうこともありえるよね。

 だったら肉体に繋いだまま生かしておいたほうが安心だと思うんだけど、どうだろう?


 だいいち、真川さんからも手加減するようにリクエストされてるしね。


 そういうわけで今回は他にもいくつか変わったスキルを使おうと思う。

 

__________________________________


【虚影領域Ⅲ】

 自分自身と「スキルランク×2」体を対象として発動

 影によって形成される亜空間へと引きずり込む

 広さは最大「スキルランク×10」mまで

 この亜空間は「スキルランク×5」分後に自壊する

 次回発動には「120-スキルランク×10」分のインターバル

__________________________________



 これを分体それぞれが発動させて、5人と個別面談。

 二度と真川さんに手を出さないように、誠心誠意お願いしてみようと思う。


 とっても平和的な解決が期待できそうだね。

 

 


『スタートレック』のボーグについて興味のあるかたはググってみてください。



・今回カットした会話その1


「真川さんのエスコートをよろしくね。僕」

「フッ素加工なみにガードするつもりだよ」

「それはエースコート」


・今回カットした会話その2


「【影群体】の猫と違って、【影分体】はみんな意識を共有してるんだ。『スタートレック』のボーグみたいなものだね。――『我々はボーグだ。お前たちは同化される』」 (モノマネ)

「有沢くんとだったら、いいですよ」

「……」

「……」

「……すみませんでした」

「勝ちました」 (ぐっ)

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