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プロローグ
本作には、やや陰惨な要素が含まれます。
わたしが小学生のときの話です。
お母さんは外で働いていて、帰ってくるといつもイライラしていました。
お酒を飲んだあと、大泣きしたり、お皿を割ったり。
きっと職場でつらいことがあるのでしょう。
家で、いろいろなことを、します。
「母さんはいつあんたを捨てたっていいんだからね」
煙草の匂い。
ジュウ、と焦げる音。
その熱。
「わざわざ育ててあげてるの、感謝してよ、感謝。それともあの男と同じなの? 恩知らずなの?」
わたしの家にはお父さんがいません。
だからお母さんはひとりで子育てをしないといけなくって、きっと、すごく辛かったんだと思います。
「世界にはあんたより辛い目に遭ってる人がたくさんいるの。そうならずに済んでるのは母さんのおかげなんだから」
――わたしはノースリーブの服を着ることができません。