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第十二話 「はぅわ〜!ドラゴンだ〜!」

 「え⁉︎」

 『ん?まだ寝ぼけてんのか?』


 夢であってほしかった。

 昨日まで可愛いかったム太郎が自分をいきなり親父と言い、言葉使いも汚かった。もちろん夜に変化した姿も夢だと思いたかった。

 が、どうやら現実で、ム太郎は腕を組んだまま話を続ける。


 『結構な数が来るな。このままだと危ないぜ親父。早く出るなり対処した方が良いな』

 「お、お、お前!いきなり親父とは早いぞ!んや、そうじゃなかった。ム太郎喋れるのか⁉︎」

 『ん?まあな。んな事より早くここから出るぞ』

 「え⁉︎わ、分かった」


 書室から出た瞬間。


 「うっ‼︎」


 昨日襲撃した奴らの死体や血の匂いが一気に押し寄せて堪らず吐きそうになった。

 が、それを堪えて屋敷から脱出しようとした瞬間。数人入ってくる音が聞こえた。


 「⁉︎」

 (は、入って来た!ヤバイヤバイ!どうする?見つかったら殺される?)


 頭の中がいい感じでパニックになった自分は訳も分からず物陰に潜んだり、匍匐前進しながらも見つからずに脱出を試みる。

 ちなみにム太郎は自分の頭に張り付いていた。


 (へ、蛇だ!伝説の傭兵みたいにステルスで脱出するんだ!)

 『ん?スンスン。親父、どうやら大丈夫みたいだぞ』


 ペチペチと頭を叩くム太郎が言っていたが今の自分には聞こえない。ただただ恐怖に襲われて急いでいた。

 そこに、自分の前に影が立つ。頭の中で見つかった時のアラーム音が鳴る。と同時に死んだ!と思ってその場で硬直した。


 「•••何を遊んでいるのですか?」

 「•••へ?」


 頭を上げて正体を見るとレイヴンが自分を見ていた。


 「レイヴン?」

 「はい。遅くなりましたが、ただいま戻りました」


 自分は恥ずかしくなり顔を真っ赤にして立ち上がった。しかしすぐに慌ててレイヴンに掴んで急いで脱出するように促すが、


 「脱出?あぁ!大丈夫ですよ」

 「何が大丈夫だよ!ム太郎も言ってた。大勢の人が来るって!」

 「言って?とりあえず落ち着いて。彼らは私が呼んだ大工職の方々です。屋敷が壊されたので修理を頼んだのですよ」

 「え?修理?大工?」

 「はい。ほら」


 レイヴンに連れられて玄関前に行くとゴツいオッさんやドワーフが何人もいて、木材や大工道具を準備していた。しかし他にも10人位の兵士もいて何やら布等用意していた。


 「それと死体処理の為兵を呼びました。回収して身元を調べる為もありますから」

 「•••はぁ〜、あぁ、朝っぱらから嫌な緊張をした〜」


 緊張の糸が切れてヘナヘナとその場で座り込んだ。また、腹の音が鳴った。いつもより余計に空腹だ。

 音を聞いたレイヴンはクスリと笑って


 「それでは遅くなりましたが朝食にしましょうか。あちらに準備していますので、どうぞ」


 自分達は湖の近くに移動した。そこにはシートを敷いてサンドイッチ等が用意されていた。

 兵士や大工達の邪魔にならず、話しをしても聞こえない距離だ。


 「いただきます!」

 『クル!』


 自分と同じく手を合わせてム太郎もサンドイッチを食す。どうやらレイヴンには喋れる事を黙っているらしい。


 「お茶です」

 「んぐ、あんがと」

 「ところで、昨夜私が行っていた場所ですが」

 「ん?城だろ?あ、大工さんの所にもか。呼びに行ってたんだろ?

 「えぇ。たしかに修理を依頼したのもそうですが、•••実はミーネ様に会いまして。全て報告しました」

 「•••そりゃそうだわな。襲撃をされたら報告をするのが義務だからな。あ!まさか自分を始末しろと命令が!」

 「もちろん襲撃の事もですが、ご安心を。貴方様の始末命令はまだ出ていません。ただ」

 「ただ?」

 「申し訳ありませんがム太郎様。ドラゴンに関して、命令を破る事になりました。執事として、命令を破ってしまい深く謝罪致します。」


 サンドイッチを食べているム太郎を指差してレイヴンは言った。

 が、考えてみれば遅かれ早かれいずれバレる事だ。この後回収する遺体や壊された屋敷の跡を調べれば分かる。それに目立つなと言う事が無理なんだ。

 ただレイヴンが報告した事でム太郎がどうなってしまうかが自分は心配だった。自分は何も言えず沈黙していたが


 『•••んで、俺をどうするんだ?耳長執事よ』

 「⁉︎」

 「⁉︎ちょっ!ム太郎!」


 サンドイッチを飲み込んだム太郎はレイヴンに向かって言葉を発した。せっかく空気を読んで黙っていたのに本人がそれを壊した。しかもあきらかな敵意を向けて。


 「驚きました。知性が高いとは思ってはいましたがまさか喋れるとは。凄い。最初から知っていたのですか?」

 「い、いや。自分も朝知ってさ。まだ本当は驚いている。って、いつから喋れたんだ?てか喋って良いのか?」

 『喋れる様になったのは親父が言葉を教えてくれた少し後だな。ちなみに文字も読めるし書ける』

 「ならもっと早く教えてくれよ〜」

 『親父をいつ驚かそうかと考えてな。ナハハ〜!それに今そいつからは敵意が無いからな。別に話しても問題無いだろ』


 ム太郎は笑いながらハムを掴んで食べ始めた。

 てか結構饒舌に喋る。自分としてはアイウエオの基本的な事しか教えていないのだが、もっとも何故親父なのかが1番分からない。


 「素晴らしい。これがドラゴン!」

 『ゲプ。話しを戻すが、俺を、どうする?』

 「はい。実は」

 「あ〜、敵意が無い、自分も始末しない。てことは様子見だろう?上手くいけば取り込んで利用する。って感じじゃない?」

 「•••ご明察です」

 『何⁉︎当たりかよ』


 いや〜適当に予想&ゲームでよくある事を口にしたら当たってしまった。


 『スゲェな!親父!』


 本当に感心したのかパチパチと軽く拍手する。ちょっとむず痒い。


 「そう言う訳ですので今のところは大丈夫です」


 ニコニコしながらも現状を話してレイヴンも自分も食事を再開した。

 まぁ、何も無いのが1番だ。ただどう転ぶか分からないアンバランスである事には変わりわない。てかもっと危なくなった気がする。

 んな事を考えながら自分達は食事を終え片付け、屋敷に向かう。ちょうど兵士達が遺体の回収を終え、城に撤収した後だった。


 その後大工達と修理期間等で話をした。

 壊された所や血で汚れた箇所。また所々傷んだ箇所も含めるとほぼ建て直しになるらしく訳5日位かかるらしい。

 と、なってくると自分達の寝床を考えなくてはと思っていた時


 「それでは今から城に向かいますよ。準備して下さいね」

 「『???』」


 とレイヴンが意気揚々と言ってきたので自分とム太郎は訳がわからず首を傾げた。


 (あ!そうか。屋敷がこんなだから城に避難と滞在するんだな。でも、城で大丈夫か?)


 不安は残るが軽く準備して3人で城に向かった。

 だが城に入って向かった先は応接間でもなく客間、使節団滞在用の部屋でもなかった。

 階段を上がらず奥に行き出たのは外。野外兵士訓練所だった。

 そこには兵士達が剣の素振り等各々訓練をしていた。


 「ほへ〜ん?」

 「•••••ぅぅぅお〜!」


 奥からものすごい勢いで走ってくる奴が1名いた。しかも鬼の形相で。キルシェだ。


 「え?」


 ブレーキがぶっ壊れたかスピードが落ちない。いや、むしろ自分を見て更に勢いが増した気がする。


 「うぉぉぉぉー!」


 そして


 「ぶべぇ!」


 そのまま自分にタックル&抱きついて来た。本来なら女性から抱きつかれるのは嬉しい!

 が、装備していた鎧が勢いよく思いっきり顔面に当たれば全っ然嬉しくない!むしろ罰ゲームだった。だって痛いだけだから。


 そんな事を気にしていないキルシェはそのまま嬉しくて奇声をあげてた。相手は自分じゃなくて頭の上にいる奴を撫でながら。


 「キャアァァァ〜!ドラゴン!ドラゴン!ドラゴン!伝説のドラゴンだ〜‼︎」

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