第十話 「とっても不愉快だよ」
最近例のウィルスで入院してしまいました。
しかし小説は出来る限り書いていきますのでよろしくお願いします!
―――――――リーデ:深夜:とある屋敷
まだ、草木が眠る深夜。
とある屋敷のひと部屋、それも一般人が使用できない部屋の大きなベッドで寝息をたてている者がいた。
しかし、気持ちよく寝ていたのにふと部屋のドアから大きなノック音が鳴り響いた。
「当主様、当主様!どうかお目覚めください」
不快な音を聞きながら目覚めて、一層不愉快そうにドア開けて自分の使用人に言う。
「なに?どうしたの?まだ深夜じゃないか」
「も、申し訳ありません!」
「早く要件を言ってよ。だけど下らない用なら…許さないよ?」
小さい体から殺気をにじませて、使用人を睨みつけながら見上げている。
「ゴクッ…レイヴン殿が屋敷に来て、当主様に至急会いたいと!」
「レイヴンが?」
その名前を聞いてか完全に目が覚めた。
軽く頭に手を当てて何故今この時間にここに来たのかと軽く考えたが思いつかない。
「わかったよ。すぐ用意するから、客間で待たせておいて。あ、お茶は出さなくていいからね」
「はっ!」
命令を受けすぐに屋敷の玄関に向かい来客を迎える。
そして、部屋の中に戻り、ロウソクに火を灯して考えながら着替える。
(こんな時間に?一体、何をしに?)
色々と考えながらテキパキと用意して客間に向かう。
「失礼じゃないのかな?執事がこんな真夜中に、人の睡眠を邪魔するなんて」
着替え終えて、何食わぬ顔をしてドアを開けながら言い放った。
「突然のご訪問申し訳ございません。しかし、執事といえど時には時間と場所は選ばないものですよ。エルガ様」
ニコニコと礼をしながら答える様に少しイラつきながらソファーに移動していく。
その間、エルガはレイヴンが来た理由を考えたが、やはり思いつかない。
だが、レイヴンが持っている布と、彼から漂う血の匂いで何かしらの要件で訪ねたことは間違いない。
そして、ソファーに座り、レイヴンを座らせ話を進める。
「で、僕の睡眠を妨げて来る要件て何かな?・・・念の為に聞くけど君から漂う血と関係があるのかな?」
単刀直入にエルガは言う。
それを聞いたレイヴンは持っていた布をテーブルに置いてその中身を見せるべく布を解いた。
中から出てきたものは短剣だ。レイヴンが持っているナイフと同じくらいの大きさだが明らかに粗悪品であるが、それでも人を殺すには十分な物。
「この短剣の柄をご覧下さい」
「?」
剣を手に取りエルガは柄をまじまじと吟味する。
そして、柄に彫ってある文様をじっくり見て、それが身に覚えのあるものだと確認して答える。
「・・・ギルド『死者と踊る』の物だね。これ。あぁ、彼等は特に暗殺や強盗で有名だったけ?で、これがどうかしたの?」
「それは、先ほどキルシェ様の別荘を壊し、異世界のお客様に危害を加えようとしたお方の物だった物です。身に覚えはございますか?」
「・・・なるほどね。でも、僕じゃない。・・・僕の性格を知っているだろう?」
事の全容を聞くまでもなく要点を聞いただけでエルガは理解した。
だが、事実エルガが起こした事ではないので自信満々に笑い返して返答する。
本心を言えば異世界人が死んでくれればもっと良かったと思っているが、流石にそれは欲張りすぎだと思った。
「一応聞いておくよ。君だって僕でない事はわかっていたんだろう?」
「はい」
レイヴンは即答で返す。
「それなのにわざわざここに来たという事は、これだけじゃないんでしょう?」
「実は、今からミーネ様に事の報告をしてくるのですが、その前に忠告をと思いまして参上いたしました」
「忠告?」
「はい。事は貴方様にも関わることかと」
一瞬何の事だかわかりかねて首をかしげた。
報告をしたければすれば良いと思ったが、首をかしげた時に目に入った短剣を見て忠告と言った意味を理解して笑った。
その笑いは先ほどとは違い、中身はドロっとした笑顔だ。
「・・・そういうことなんだね」
つまりこういうことである。
ほとんどの貴族を束ねているのはエルガであるが、それを良しとは思わず、抑止しているのがミーネである。
たとえ自分が起こしていないとはいえ何かしらの理由をつけて糾弾を受けるのはエルガなのだ。
勿論彼ならばその程度は何でもないが、今回は宮國という前例の無い事を抱えていて、ミーネの妹であるキルシェも深く関わっている。
その為、エルガはより咎を重く受けるかも知れないと考慮した。
つまり、今は下手に動くなという意味の忠告であった。
「この件についてはわかったよ。わざわざ知らせてくれてどうもありがとう。・・・でもさ、これは忠告じゃなくて脅迫だよね?」
レイヴンは何も言わずやはり笑顔で返す。
話を言い終え、探検を布に包んで手に持って玄関までエルガから見送りを受ける。
その玄関先でエルガから、
「ねぇ、いつ僕の所に来てくれるのかな?まだ誰も決めていないんでしょ?いい加減僕のことを認めてくれても良いんじゃないかな?少なくとも妹姫よりはマシだと思ってるんでしょ?」
その質問にレイヴンは何も答えない。エルガの顔に見向きもせずただ黙っている。
しかし、いつものように笑顔ではなく真剣な顔で暗闇を見ている。
だがそれもすぐに笑顔をエルガに向けて礼をしながら、
「これにて失礼致します。深夜の訪問申し訳ありませんでした。では、エルガ・マルギス・リーガ様。再び良き眠りを」
そう言ってレイヴンは暗い夜道を一人歩いて行く。
その姿が見えなくなったのを確認したエルガは不機嫌そうにドアを閉め使用人を呼びつけた。
「急いで今から、ラルト、ユルデ、ブルガフ、ガドド達を呼び寄せて!眠っていたら僕の名前を出して叩き起こして!あと、昼間ギルドに依頼した者も調べて!急いでよ!!」
「しょ、承知致しました!」
まるで子供が癇癪を起こしたように使用人に怒鳴りながらギルドに深く関わっている者達の名前を言いながら指示を飛ばして自分の部屋に戻っていく。
そして自分の部屋に戻って部屋の隅の暗闇にいるものに語りかけた。
「不快だよ。僕の許可なく動いてさぁ。許せないなぁ。とてもとても許せないなぁ。そうだよねバズズ?」
「ガァルルル」
「慰めてくれてありがとうバズズ。さぁ君の大好物が来るのを一緒に待とうよ」
暗闇の中に光る獰猛な目をするバズズと呼ばれた異形とともにエルガはクスクスと笑いながら新たな来客を待っている。
―――――――リーデ:深夜:エルガ屋敷
レイヴンが去ってしばらく、使用人が呼び出した貴族達がすぐにエルガの屋敷に集結して、各々エルガを中心に座っていた。急な呼び出しだったので服や髪がまだ整えていない。
だが、エルガの不機嫌そうな態度を見てそれを忘れてただただ恐怖で震えていた。
「こんな夜中に呼び出して申し訳ないんだけどさぁ。さっきレイヴンが来たんだよ」
「「⁉︎」」
各々がざわつき始めた。一体何事で?等推察をし始めた。
「でね、一体どんな用事だったと思う?・・・教えてあげるよ」
事の内容をエルガは淡々と答える。
「・・・と、いう事だったよ。今頃彼、姉姫に報告してるんじゃないかな〜?」
「そ、ぞでは災難でじだな〜」
「そ、そうです!しかもこんな夜中とは!いやはやそれもこれもあの異世界人のせいですな」
そうだそうだと彼等は非難するがエルガは一切喋らない。むしろ苛つきでどんどん殺気を膨らませて他を威圧していく。
「ま、最終的にあの異世界人が悪いんだけどね。・・・でもさ、それだけなら君達を招集しないよね?だったら何で呼ばれたか、わかる?」
この一言で周囲が沈黙する。
「僕は言ったよね?様子を見たいからまだ、動くなって。でも、それを無視して動いた者がいるよ?誰かな〜?」
深い沈黙が続く。彼等はただ俯いて何も言わない。そんな中1人だけガタガタと震えて尋常じゃない冷や汗を垂れ流している。顔面は死人のように真っ白で周囲の事なんて気にもしていない。
「どうしたんだい?ガドド君。顔色が悪いね?」
「⁉︎い、いえ!な、ななな何でもございません!」
「ふ〜ん。ところでさ、一応ギルドの方も調べたんだよね。ま、口止めされててさ言わせるのに結構掛かっちゃったよ」
ガドドと言われた中年は更に冷や汗を流しこの世の終わった顔をする。
「で、掛かった割に内容が実に下らなくてさ。どうやらあの異世界人珍しい空飛ぶ蜥蜴を手に入れたようなんだ。それをどうしても欲しいから殺してでもと、ある人がギルドに依頼したんだって。ね、実に下らないでしょ?」
まるで芝居のように大袈裟に話し出した。集まった貴族達は一斉に首を縦に振って肯定し黙って聴いている。ただ1人を除いて。
「ところで、話しが変わるけど、ガドド君。君の趣味も珍しい物や珍しい魔物の剥製を集めてたよね?」
「そ、それは・・・」
「我慢出来なかったかい?」
「⁉︎」
「残念だよ。せめて僕に一言言ってくれればさ〜」
「お、お許しを!」
「最近僕、舐められてるのかな〜?勝手に動かれてさ。ま、良い機会だし君、もういいや。久しぶりに食べられてあげて」
エルガはそう言うと冷たく突き放し、冷酷な笑みを浮かべた。それは、子供が小さな蟻を無邪気に踏み付けるような笑みで。
「ど、どうか御慈悲を!に、二度と!二度と勝手な事はしないと誓います!貴方様に永遠なる忠誠を!どうか!どうか‼︎」
「いらない。バズズ」
「⁉︎」
「ガハァ〜、ガハァ〜」
バズズと呼ばれた異形が入ってくる。手には斧を持ち頭には角を生やし、牙が口から所々出ている。筋骨隆々な身体を持つ魔物、オーガがガドドの頭を掴み上げる。
「お、お許しを!御慈悲を!」
「バズズ、皆で食べて良いよ〜。あ!指輪とかは残しといてね〜」
「フシュ〜」
そうしてバズズは出てきた部屋に戻っていく。
「ギャァァァァァァ〜‼︎」
グチャッ!と共に断末魔が大きく響いた。
それ以降は何も聞こえずただ血の匂いとシーンと沈黙が続く。
「ま、という事だからさ。君達も分かってくれたよね?僕もこんな事はしたくなかったんだよ?だけどさ、僕だけじゃなく君達も咎を受けるとこだったんだ。心がとても痛むが筆頭貴族として僕はそんなのは許さない。だからさ責任はとってもらったよ。これで皆安心大丈夫さ」
エルガはさっきと比べて機嫌良く喋る。しかし、他の貴族達はただ恐怖で黙るしかない。でも、彼等も分かっている。こうなる事が1番の最善であったと。
皆が罪を被って罰を受けるより、身勝手な馬鹿が罰を受けた結果皆が救われたのだから。ただしエルガには逆らえないという再認識を強烈に叩き込まれた事は言わずもがな。
「さてと、改めて伝えておくよ。まだあの異世界人には手を出しさないでね」
「じ、じがじごのままでば、だにがど面倒になるどでば?」
「かもね。でも僕達が手を出さなくても、王はともかく姉姫は放っておかないよ」
「な、何故でしょうか?」
「分からない?姉姫は異世界人にはレイヴンをつけたんだよ?」
「づ、づばり?」
「どちらにせよ彼は長くはないって事さ。仮に生かす価値があるなら上手くこちらにつかせれば良いよ」
(ま、それはあちら側も考えているだろうけどね)
貴族達はエルガの言葉に半信半疑だった。
本当に価値があるのだろうか?今のうちに消した方が良いのではないか?等様々意見が飛び交う。無論エルガとて本当はどうすれば良いか分からない。が、今は様子を伺い、その時に判断すれば良いが最善だと判断した。
「ともあれ、皆の懸念も分かるよ。ただ、今動くのは得策じゃないよ。妹姫。キルシェ様の目が光ってうるさいからね〜」
皆がなるほどーと理解して頷く。
「と、分かってもらえて何よりだよ。君達の力が必要な時が来たら僕から伝えるからさ。・・・さて、皆夜遅く集まってもらってごめんね。理解してもらえたからもう帰っても良いよ。だけど、何かあれば僕にすぐ相談してよね」
そう言って貴族達は立ち上がってエルガに礼をする。その後エルガ屋敷の使用人がランプの灯りを頼りに玄関まで見送る。
貴族達は各々の馬車に乗り屋敷に帰って行く様子をエルガは窓から見ていた。たださっきと比べて非常に冷徹な目で見下しながら。
「ふぅ〜、愚かな者達だな」
心底呆れた様子で貴族達に吐き捨てる。
「でも、う〜ん」
(空飛ぶ蜥蜴?そんなモンスターっていたかな?いや、そもそも最初から異世界人が連れていた?・・・違う。そんな報告はキルシェはしていなかったし、会った時もいなかった。・・・たしか、ここ数日はレイヴンとテル村近くの遺跡に向かったと聞いたな。ならばあの遺跡で手に入れたか?しかし、あの遺跡は調べ尽くしてもう壁画以外何も無いと、たしか学者達の本に書いてあったような・・・)
「ダメだ、今は考えても意味がない。・・・そもそも、あの異世界人がキルシェを救っただって?それこそありえないが?・・・なんなんだ?あの異世界人?謎だ」
と頭を傾けて考えたが謎が深まるだけで意味がない為そのままエルガはベッドに向かいそのまま寝た。
早く治して元気になります!




