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第九話「激しく後悔しています」

しばらく仕事が忙しくなかなか執筆が出来ず申し訳ありません!

少しずつですが書いていこうと思います!

―――――――リーデ:テルの森:神木近くの遺跡の入口




 空は晴天、景色の森は所々から白い水蒸気を出しながら壮大で神秘的な演出を出していてまさに最高の一日の始まりと思っても過言ではない。


 が現実、朝から不穏な空気が自分達を中心に渦巻いている。

 

「俺はこいつを育てる!」


 レイヴンに睨みつけながら宣言した。

 ドラゴンの親なんて聞いたこともないけど、こんなにも懐いているに捨てる事なんて自分には絶対にできない。

 レイヴンは当然


「・・・何故、ですか?」


 と、当然の質問してきた。ここで嘘を言えば逆効果だと思い、本心で答えた。


「1つは情。ここまで懐かれると捨てるのは心が痛む。弱いのよ」

「野生に帰したほうが自然ではないでしょうか?」

「ぐっ、確かにそれが1番だろうけど、2つ目はもし、このまま野生に帰して死んでしまったら可哀想だろう?仮に生き延びたとしてもこの事を恨んで、成長して手に負えないような事があったら?そうならないようにする為」

「手に負えなくなるのならば、可哀想ですが、この場で・・・」

「おいおいおいおい!即答で物騒な事言うなよ!そうならない為に育てるんだろうが。それに、伝説の生物だぞ。簡単に殺すな!」

「・・・」

「それと、こいつが本命だが、『ドラゴン』には不思議な力があるんだろ?なら、帰れる力があるかもしれないだろ?」

「・・・見たところその力があるようには見えませんが?」

「今は・・・な。ま、賭けさ。どうだ?」


 自分の本心を聞いてくれたけど、彼の表情からその心が読めない。でも、溜息を出して答えてくれた。


「育てて何があるか分かりかねますが、はぁ、ドラゴンの報告に関してはさほど問題ではありませんのでご命令通りに致しましょう。ですが、貴方は、御自分が置かれている立場をご存知で?」

「ある程度は想像で、どういう事だ?」


 自分の置かれている状況を話してくれた時は正直想像と違っていた。

 確かにある程度の不信等を感じてはいたから、だからこいつが自分の監視役として付きまとっているんだなという程度と思っていた。でも、そんな生優しいものではないらしい。


「はっきりと言いましょう。貴方は命を狙われています。この私を含めて多くの人達から」

「それは、信用されてないからか?」

「信用なんて、する気がありませんよ。私とキルシェ様以外は」

「あれ?キルシェは何となく分かるが、命を狙っているお前は・・・信用してくれてるんだな?」

「命令が下るまでは」

「・・・あ、そう」


 淡々と冷徹に言葉を突き立てていく。


「貴方を始末する理由が無いだけで、理由があれば即殺しにかかるでしょう。すぐに来ないのはキルシェ様の尽力があるからです」

「そうか。キルシェのね・・・で、俺を狙っているのは国王か?玉座の間にいた貴族達か?」

「ほぅ。ご自分を狙っている方達を予想しているとは」

(ま、大体分かるがな)

「知っているのならば。王、貴族達はもちろんですが、筆頭はエルガ様です」

「エルガ様?誰?」


 エルガ、あの見た目が子供エルフだ。こいつが貴族達を束ねている黒幕で、貴族筆頭だそうだ。もっとも、それ以上の関係性があったことをまだ自分は知らなかった。

 話を戻すが、自分が最初屋敷に来た時なんて実は数人が遠目で監視をしていたのを聞いたらゾッとした。そして、


「もう一人の筆頭が王女ミーネ様です」

「あ、やっぱりか。そう、だよな」

「まぁ、もっともあの方が行動を起こさないのは私的な理由もあるのでしょうが」

 (私的?)


 分かっていた事だったがショックだった。キルシェはともかく王女も優しく受け入れてくれたのだと思っていたから動揺が隠せない。


 そんな状況下である自分が何かを手に入れれば姉姫はともかくまず貴族達の火に油を注ぎ込むようなもので、より悪化することは目に見えているそうだ。


 しかも珍しいドラゴンを。


(あれ?)


 と、ここで疑問が出た。


「だったらそんな状況で何でドラゴンの報告が大丈夫なんだ?」


 そこが不思議なので質問をしたら、


「貴方が言った通り『ドラゴン』は伝説の生物です。誰も見た事がないのですよ。伝承も姿形も多種多様に伝わっているのではっきりしていないのです」

「つまり、俺が連れて帰ってもまず信じてはもらえないということか。しかも小さいから」

「その通りです」


 またこの世界には魔物使いモンスターテイマーという特殊な職があり、戦いやそれ以外にモンスターを使役している。その為別に連れていても不思議ではないし、さらに言えば『ドラゴン』を知られなければ認知はさほど問題ではない。しかし、認知はともかくやはり珍しい生き物には変わりはないので貴族や学者達を刺激してしまう事には変わりはない。


「はぁ~。ほとんどの奴が俺の命を弄んでいるようなもんじゃねぇか。…ふざけやがって」

「お怒りをされてもこれが貴方の現状なのですよ。しかも、この子を連れて帰れば彼らを刺激させるのは間違いないでしょう。それでも、連れて帰りますか?」

「…ああ。連れて帰る」


 自分に迷いは無い。今、ここで捨てたらより一層後悔が深まってしまい、それにこの先本当の子供を授かっても育てる資格が永久に無くなってしまうと身勝手な感じがするからだ。半端な覚悟ではない。


 ドラゴンを育てる事に全然自信は無いけども、今まで自分を育ててくれた人達のようにこの子には生きて愛情を与えてあげたいと思った。たとえそれが偽善や甘い、私的な目的の為と蔑まれようともこの心に揺ぎはない。

 それに、どうしてかこの子をペットとしてみることが不思議と思えなかった。

 レイヴンは少しだけ考えて、


「承知致しました。しかし、約束して頂きたいことがございます。もし、貴方の言った通りそのドラゴンが暴走した時、しそうならば、…処分させていただきます。宜しいですか?」

「…わかった。だが、そんな事はさせないよう育てるさ」

「フッ、お願い致します」


 許可を得て少しだけホッとした。良かった。本当に良かった。自分は嬉しくて頭を撫でてあげた。ドラゴンは嬉しそうにクルルと喉を鳴らして喜んでいる。まるで猫みたいだ。

 となれば早速名前をつけてあげようと自分の前に置く。しかし、なんと名づけてあげれば良いか迷う。


 『ドラゴン』というのはイメージ的に強いとか格好良いなんで難しい。


「そもそもこいつがどういうドラゴンなのかわからん」


色からして『闇竜』とか『邪竜』とかだが、そんな不吉な名前はしたくはない。

 そこでよくRPGゲームに出てくる『竜王バハムート』から名前をもらうことにした。色もそっくりだから『バハムート』種と勝手に種族を決定した。

 そこに日本テイストを加えて命名したのが、


「う〜ん、よし!お前の名前は『ム太郎』だ!バハムートのム太郎!」

「何というか•••残念な名前ですね」

 「う、うるさいな〜」


 センスに関しては個人差があるからしょうがない。

 

 名前が決定したところで朝食の片付けを開始して屋敷に帰る準備をする。意外なことにム太郎は食器を持って自分達と同じように、小さいながら二足歩行して手伝っている。見よう見まねだが生まれたてで頭が良い。帰ったらどういう風に育てるか考えねば。


 また、黒い卵の破片は持って帰る事にした。それは卵だというのにすぐに固まり、石より固く軽く綺麗に輝いている。パッと見て卵とは思わないだろう。その為、卵の破片でも価値としては十分にあると思った。


 テル村に向かうため森を下っていくが、カルソの粉も二人分しか無いので自分の荷物を担いで、ム太郎を頭の上に乗せて歩いていく。というより頭の上が気に入ったのか退いてくれない。


「し、しかし、頭と荷物がクソ重い、爪が少し食い込んで痛い。はぁはぁ、…なぁ、途中でこいつを抱いてくんない?」

「おやぁ?もう親として根を上げたのですか?ま、命令ならば仕方ありませんね。しかし、その子は喜んでいるのに、なんとお可哀想に。いきなり親から手放されるなんて」


 ニヤニヤしながらわざとらしく大袈裟に振舞う。


「お、お前~、このクソ執事~!」


 悪態をつきながら何とか頑張ってテル村に着いたのは昼過だった。

 子供を持って歩くのがこんなにキツイとは全然知らず何度も小休止をしたにも関わらず着いたと同時にぶっ倒れた。


「ぜぇ、ぜぇ、疲れた~。腹が減った~。足が痛い~。もう動きたくはないよ~」

「フフ。お疲れ様でした。さぁ、昼食の準備を致しましょう」


 昼食を作るため預けてあった食料をレイヴンが一人で調理を開始する。足りない分はこれまたお金を払って食料を分けてもらいました。子供の育成半日も経たず根を上げそうだった。


 料理を待っている間、当然のように村人達から、


「ねぇ~、それなぁ~に?」

「見たこともない蜥蜴ですな?」

「この辺りでは見かけないわね?親とはぐれたのかしら?」


 別に隠すことではなかったが、『ドラゴン』と隠し部屋の事は内緒にして後は全部本当の事を言った。

 ム太郎に至っては村人達に興味津々なのか頭の上でキョロキョロと見回したり、近づいてきた人の匂いを嗅いだりしていた。


 そうこうしているうちに、お待ちかねの昼食がやって来た。今回は食料が足りない事もあり野菜を中心とした料理が出てきた。それでも美味しく調理されていて自分もム太郎も大満足だ。食べ終わり片付けを行い村長や村人達にお礼を言い、馬に乗って屋敷に戻る。


 屋敷に戻ったのは太陽がちょうど沈みきった頃だった。

 山を降りるのが速ければ、もっと速く帰れて食料の買出しに行けたのだが、遅くなってしまって行けなかった。

 その為仕方なく、


「失礼。料理長。訳あって食材を分けて頂きたいのですが?」

「すんません。お願いいたします」


 わざわざ城に立ち寄って食料を分けてもらった。屋敷に戻ったらム太郎はテーブルの上で遊んでいた。


「レイヴン…ごめんな。俺のせいでこんなに遅くなって。しかも食料のこともその…悪かった」

「お気になさらず。私にそこまで謝る必要はありません。初めての遺跡調査にしては上手くいったと思いますよ。さ、食事の用意をしますので、それまでゆっくりと休んでいて下さい」

「あ、いや、少しは俺も手伝う」


 お詫びも兼ねて夕食はム太郎と一緒にちゃんと手伝うことにした。

 自分は食材を切り、盛りつけの担当。ム太郎は、なんと皿を出したり運んだりしていた。こちらが指示するとその通りに動き、飛んで皿を持ってくる。


 (ほぇ~、本当に頭が良い!)

 

 なんて感心しながら食事を終え、皆で風呂に入った。今日一日体を酷使してきたのでとても心地良い。もっとも、レイヴンは執事だからと言って拒否したが、


「命令だ。詫びがしたいから一緒に入って背中を流させろ」

「聞いた事がありませんよ。そんな執事泣かせな命令」


 強引に風呂に誘った。

 が、誘ったは良いが、レイヴンの身体は無駄な贅肉が無く、綺麗に割れた腹筋等美しく鍛えられた筋肉を見せられて腹が立った。さらに湯船に入り、水も滴るいい男となれば自分と比べると敗北感が半端なかったな。


「・・・誘うんじゃなかった」

「え?」

「キュル?」

「何でもねぇ!」


 ちょっとここで発見したのだが、身体を洗ってあげてる時、ム太郎の身体、主に外殻とでも言うべきか?鱗と言うべきかわからないが、それが固くてまるで甲羅のように感じた。また、チョろっと出ている角を触ってみると鋭く尖っていて頑丈だった。


(硬い。まるで金属を洗っている感じだな)

「クルル〜」


 尻尾を勢いよく振り回しながら鳴いていた。

 風呂から上がってさっぱりしたら急に眠気が襲ってきたので自分達は直ぐに寝室へ向かいベッドに入り、2人で大の字になって一日を終えた。


 さて、朝になっていつもの如く朝食を食べるが、どう教育をするか考えていた。


「う~ん。昨日見たところ俺の行動を真似る傾向があるし、理解も出来るから、よし!俺と一緒に勉強しようかね」


 だから今回、定番である朝の掃除の手伝いはしないで知識を得る事に専念する。といっても特別難しいことはしない。

 レイヴンが掃除で手が離せないから、最初は外で言葉や意味を教えることにした。


 しかし、ム太郎に言葉を教えても喋ることができないかもしれないが、ここは頑張って教えることにした。

 正直に言おう。何故人じゃないのに言葉を教えるという、不思議な行為をしているのかを自分はこの時は何も思わなかった。ただそれが当たり前かな。と感じた。


「いいか?まずは、俺の言葉をゆっくり焦らず聞いてみるんだ。わかったか?」

「クル」

「まずは、あ!次は、い!」


 自分の言葉を真面目に聞いてくれて何とか喋ろうと頑張ってくれている。その姿は親としてちょっと感動ものである。


 結局、朝は言葉を出す練習で終わり、昼食の買出しを休憩がてら3人で町に繰り出すことにした。

 ム太郎は自分の頭に乗るか、近くに飛んで移動したが案の定往来の人々から注目の視線が集まって歩くだけでも一苦労だ。人からの注目なんて慣れていない。


 買い物なんて行く店の人からム太郎のことで質問攻めにあい疲れた。しかしそれを受け流すこの執事が羨ましい。で、話題のム太郎は最初の自分のように初めての町の賑わいに興味津々と辺りをキョロキョロ見て回っていた。


 屋敷に帰って、昼食を食ったから勉強の再開だ。だが、遊びたいのか首を横に振って嫌がった。朝はあんなに頑張ったのにもう嫌がるとは、子供の飽き性は気まぐれだ。

 だが、ここは親として甘やかさずちゃんと叱る。さすがにいきなり手を挙げることはしなかったが怒鳴ったために泣いてしまった。まさか泣いてしまうとは思いもしなかったので逆にどうしたらいいか困ってしまった。それを見て笑っている約1名をぶん殴りたいのを我慢する。


「ああ〜泣くなよ。勉強は俺も一緒にやるから、あ、そうだ!今日の夕食は俺が美味しい物を作ってやるから」


 何とかご機嫌をとって泣き止ませる。それに、今回はやってみたい事があったので自分も夕食が待ち遠しい。


 さて、午後からは自分も参加する勉強会で言葉と文字の練習だ。

 レイヴンを先生とし、言葉と文字の読み書きを同時に習わせ、自分は文字を中心として学んでいく。

 地面に書きながら言葉を発声させているのだが、やはり文字はグチャグチャで何を書いているか不明だ。小さい体で木の棒をまるで杖のようにして書いている。やはり頭が良い。

 

 自分も負けてはいられないがさっきからレイヴンに注意されまくっている。だが、文字はム太郎方が少しずつ上達している。やはり、0から学ぶことは吸収が早い。

 ちなみに何故地面で文字書きをしているのかと言うと、この世界では紙や羊皮紙は貴重品なので練習用には使えないし、なおかつ地面ならばいくら失敗してもすぐにやり直しがきくそうだ。


 昼の勉強を一時中断してみんなでおやつの果物を食べる。


 さて、休憩も終わって勉強の続きなのだが、ここからはレイヴンに任せて自分は夕食の準備のため倉庫に向かう。


「さて、やるか」




―――――――夕方


 皆、勉強が終わって各々夕食の準備に取り掛かる。

 勉強の成果としてはム太郎は言葉は全然出せなかったが文字はある程度書けたそうだ。ちょっと悔しい。

 さて夕食の準備だが渡された食器を並べ、レイヴンはメインである肉等の調理を、そして自分はある物をちょこちょこと出来栄えを確認している。

 全員の準備が終わったのと同時にこちらも味見をして、完全とはいかないが丁度いい具合に仕上がった。さあ、美味しいご飯の出来上がりだ。


 今回の夕食は、昔家庭科の授業で習った脱穀やらなんやらを倉庫で行い、皆に日本の主食である米を振舞った。もちろんあくまで素人なのでいくつか脱穀出来てない。が味見をした時は炊き具合と味見は問題なかった。次はもっと時間をかけてしたいものだ。

 出した時レイヴンはなんだこれ?みたいな顔されたが文句を言わせず食わせた。感想は、


「初めての食感ですが甘くて、不思議な食感で、美味しいですね。お肉と意外に合いますし、ただ、食べ慣れていない方は受け入れるの難しいですが、私はいけますね。まさか、あの雑草が料理として食べられるなんて」

「雑草言うな。へへん。どうだ?美味いだろう。これが俺がいた世界の味よ。上手いか?ム太郎?」

「クル♪」

「良かった良かった」


 ま、今までパンを食べてきた人達だ、そう簡単には受け入れられない事はしょうがない。でも、こいつに美味いと言わせただけで今日は良しとしよう。

 しかし、久しぶりの米は本当に美味い。ついでに作った手作り箸で食べる米の味は、無農薬のせいか湖の水のせいか知らないが少し甘味が強い。

 でもそれが上手くおかずとマッチして、食欲をより高めてくれる。それに米が気に入ってくれておかわりもしてくれた。今日の夕食は大成功だ。自分も米が食べれて大満足。

 でも、この笑顔溢れる満足感が一瞬で消えていったとはこの時は毛ほども思わなかった。


 大満足の夕食を終えて、いい気分で風呂も入って良い気持ちと満足感で2人でベッドに入る。


「クルル」

「うん。お休み」


 最初はドラゴンを育てるなんて想像していなかったが接していると本当に愛着が沸いて可愛く思える。ベッドではム太郎はより体を擦りつける。意外にム太郎は甘えん坊だと思いながら頭を撫でて眠ってしまった。



―――――――深夜

 最初に気付いたのはム太郎だった。


「グルルルルル」


 ようやく起きた自分はどうしたのかと目を擦りながらまだ寝ぼけたままだ。

 まだ太陽が出ていない雲が厚い深夜。

 最初トイレに行きたいのか?の事しか思っていなかった。だが、ム太郎の反応を見て異常事態だと判断して目を覚ました。


 ム太郎は扉の先をじっと見て唸り声を上げながら殺気立っている。普段の姿とは全然違う。

 その声は甘えるように愛らしく小さいものではなく、獣の本性というべきか低く、注意深く、そして恐るべき声で唸っている。


 ドアの方向へ耳を傾け、視線をやり、注意深くム太郎を抱く。ドアの向こうから人の足に気づいてしまった。それも複数。

 一瞬で全身に恐怖が伝わり窓から逃げ出そうとカーテンの隙間から外を確認したが外にも複数の人間に囲まれていて逃げ出すことが出来なかった。

 外にいる敵はローブを纏い顔を隠して手には斧と剣等を装備していた。


 自分は顔を真っ青にして今にも泣き出しそうな顔している。

 だが、迂闊にも窓を注視しすぎて視線が合うのを感じた。気づかれてしまった。

 自分はドアから一気に逃げ出そうとしたが敵が近づく事に気づいて出られず部屋の隅に逃げた。

 その瞬間、ばん!と窓とドアを破って敵が部屋の中に侵入した。


 その後も外で囲んでいた敵も窓を壊して侵入して合流した。

 自分は何とかム太郎だけは守ろうと震えながら抱きしめたが、もうダメだと感じて目を閉じた。


(も、もうダメだ‼︎)


 敵の数は10人程だろう。その中の一人が前に出て、にやりと笑い剣を振り上げたが、その剣が二度と振り下がる事は無くそのまま前倒れになり絶命した。


「無断での深夜の訪問はお断りしております。このまま帰っていただきたいのですが?」

「あ・・・」


 その声を聞いて恐る恐る目を開いて声の方向へと顔を向ける。

 そこには普段と変わらず笑顔を絶やさない執事が立っていた。その声と格好は場違いにも程があるほど。だが、彼はまるで本当に楽しそうに笑っている。しかし自分はまだ恐怖で動ける状態ではない。

 そもそも何でこんな状況になっているのかも理解が出来ていない。

 敵は笑顔の執事に目線を移し、取り囲んで武器を構える。絶命した者の背中に何かが刺さっている物を見てしまったのと、執事に驚異を感じているからである。


「そうですか。では、今から掃除・・を行います」


 執事はにやりと笑いながらスーツの内側に手を入れ武器を取り出した。両手に持っているのはナイフ。

 だが、大きさはサバイバルナイフ位の大きさで切れ味も相当手入れしてある業物。それを素早く1本投げた。


 敵の喉に刺さり苦悶の声を上げてながら悶える。

 その様子を見てしまった敵の隙を見逃さず彼は、まるで肉食動物のように投げた方向と逆の敵の懐に一瞬に入りもう片方のナイフで次の獲物の首を掻っ切った。


 数では圧倒的なのに執事の姿が目に映らない。

 条件は同じなのに執事は暗闇に紛れ素早く正確に心臓と首、急所を次々と狙らい切り、刺して無慈悲に敵を殺していく。

 一人は勇敢に立ち向かい、一人は武器を振り回し恐怖を抱いたまま。


「はは…さぁ、次はどのゴミを処分しましょうか?」


 本当に楽しそうに笑いながら敵に語りかける。

 残りは3人。目の前にはただ異質な笑顔を浮かべている執事が一人。

 だがその笑顔が敵と自分に恐怖を深くさせる。

 一人が恐怖のあまり窓へと逃げ出したが途中で倒れた。

 いつの間に投げたのか倒れた者の後頭部にナイフが深く刺さっていた。


 一瞬のことで更に恐怖を増幅させる。しかし、敵とて馬鹿ではない。

 こういう仕事を幾度もこなした暗殺者であるのか、彼との実力が違いすぎる事を感じて、今の結果を見て下手に動けないのだ。

 しかし、徐々に後ろに下がりつつ二人は互いに目で合図を交わす。


 一人は命知らずに突撃し、一人は標的である自分に刃を向けて、執事に無謀に突撃した者は刃を当然の如く躱されて心臓を一突きに絶命した。

 そして執事はまだ隠し持っているナイフを投げて余裕で仕留めて自分助けようとしたが、もう2人・・は既に絶命していた。


 執事は当然気づいていた。自分に向ける刃の数がもう一つあり、突撃したと同時に外から1人、同じように自分に殺気と刃を向けてくるのを、それでも、彼にとって容易い事であった。1人を殺し、ナイフを投げて助ける。その投げた直後に最後の敵を殺すだけ。だった。


 彼は見た。

 ナイフを投げる前、二人の気配と殺気が突然消えたことに疑問を感じて守る者の方へと死体をどけて顔を向けた。

 彼は、平然としていたわけではない。ただ、今までの経験とその性格故にそう見えただけで心ではそれ(・・)を見たことにより身震いを感じてしまっていた。


「グルルルルルル」


 自分に向って刃が振り下ろされる瞬間と敵が壊れた窓から突撃をし、隠れていた第3の敵が入ってきたと同時に腕を押しのけム太郎が飛び出した。

 自分は腕を伸ばしてを再度つかもうと思ったが先に突っ走ってしまった事とその場で伸ばしただけで当然届かない。

 だが、敵に恐怖せず向って同じように突撃した。


 自分は後悔した。早く逃げていれば、レイヴンと一緒にいればと、しかし、そんな事を思ってももう遅い。殺されてしまうと半ば諦めて目をつぶりかけた。だが、見た。



「ガァァァルゥゥゥ!」


 自分に下ろされた剣を身体で弾かれ、そしてその爪を頭から叩き付けられて、引き裂かれながら絶命した。

 そしてそのまま勢いよく執事に向かっていた敵に横から首を噛み砕き、そして折られて何度も何度も床に叩きつけられて、おそらくその敵は何も分からず死んでいったのだろう。

 それは、一瞬で、ある意味一番楽に死ねたと言っていい。そして残った肉片は今、少しづつ消えていってゆく。


 それは確かに小さくて可愛らしいものだった。いくら伝説と謳われた生物であろうとその姿はまだまだ子供のはずと思った。


 甘かった。

 そいつは一瞬に大きくなった。(・・・・・)文字通り身体を大きく、骨が折れたような音が何度もしながら。身体を大きくした瞬間に殺意の一撃と共に殺した。


 怒っているのが解った。いや、怒り狂っていた。自分の親を殺そうとする者、ひと時の安らぎである家族の眠りを妨げた者を決して生かしてはおけないと。まして刃を向けたのだ。殺してもなお怒りが収まらないと知れ!と怒りのまま殺した者を踏みつけ咀嚼している。


「あ、ぁ」


 自分はものすごく悪い夢を見ていると思いたかった。

 こんなものは二度と見たくないと思っていたのに見てしまった。人の惨たらしい死に様なんてものはあれ(・・)で最後にして欲しいと願ったのに。

 しかも、自分の子供と言った者が手を下してしまった。最悪だ。


 (何だ?これは・・・)


 いきなり身体が大きくなって今は死体を喰らっている。

 大きさは、おそらく全長2m~3m位あるだろうか。あれが、ドラゴンの不思議な力の一つだと言うのだろうか?恐ろしい。


 自分はアレ(・・)を子供として育てようとしていたと思うと、自分の浅はかさを見ている。虎を猫のように育てても虎は虎。こんな単純なことさえも忘れていたとはなんて情けない。


「‼︎グルルゥ!」


 と、食い終わったのか今度は助けたレイヴンに向いて吠えだして今にも向って行きそうに前のめりに構え出した。

 慌ててレイヴンに振り向くと彼も同じように二丁のナイフを構え殺気を放っている。しかし、笑顔ではなく真顔だ。

 さすがにこれ以上はヤバイと思う前に体が反応して、


「もういい!もういいから!大丈夫だから、もう大丈夫だから。ム太郎!落ち着け!な!頼むから!」


 気づいたらム太郎の身体に抱きついて止めていた。涙と鼻水をだらしなく垂らして、服は血まみれになってもお構いなしに必死に懇願し落ち着かせていた。

 何とか落ち着いてくれたのかゆっくりだが身体を小さくしていき自分の身体に抱きついた。


「れ、レイヴンももうやめてくれ!こいつは俺を助けただけなんだ!」

「・・・ふぅ」


 何も言わずにレイヴンは部屋から去った。

 いつのまにか小さくなっていたム太郎をしこたま涙を流し言葉にならない礼を言いながら撫でていた。そんな感動の場面の最中


「そのままだと風邪を引きますよ。入浴の準備が出来ましたのでお入り下さい。新しい着替えも用意しています」


 レイヴンはちゃっかり風呂の用意をして入れと言ってきた。

 本当に空気を読んでいるのか読んでいないのか分からないが、服や身体に着いた血を取りたかったので2人でもう一度風呂に入ることにした。


 身体をもう一度洗って触ってみたが、やはり信じられなかった。この小さな体が一瞬で大きくなり人を殺したとは。たとえそれが自分を守ってくれたことでも。

 それと、湯船に浸かりながらレイヴンの事を考えていた。


 勘違いしていた。普段の人をおちょくるような軽々しい笑顔をしながら執事としての仕事を全うするだけがレイヴンというエルフと思っていたけど、そうじゃなかった。

 普段の笑顔を浮かべながらその奥には純然たる殺意が浮き出ていて、何の怒りもなく迷いもないまま殺していく姿もまた本当のレイヴンだということ。自分を殺す時もあんな感じなんだろうと思った。


 しかも、もし自分が止めなっかたらム太郎もレイヴンもあのまま殺し合っていた。守ってくれた双方には悪いけど、その事を考えると震えがこみ上げてくる。

 だが、それはそれで、義務とはいえ助けてくれたことには違いないので風呂から出たらお礼を言っておこう。


 全員風呂から上がり、レイヴンに礼を言おうと食堂に向かったが誰もおらず、机には2人分のお茶と書置きが置いてあった。

 難しい文字であったが勉強のかいあって何とか解読できた。内容は、少し出ますがすぐに戻ります。と書かれていた。


 あんな事があってすぐにほっぽって出ていくとは礼を言う気分が怒りに変わってやっぱりぶっ飛ばしたくなってきた。


 その原因は、玄関のドアもどうやら壊されてしまったようで風が食堂まで入っきている。

 当然自分の部屋も死体とグチャグチャに壊された部屋になっているため、この屋敷の防犯は全く機能していない。つまりもう一度攻められれば今度こそ死ぬかもしれないという事である。


「普通出て行くか?」


 ま、ム太郎の先ほどの姿と強さを見た為か、落ち着いたからか今はそこまで恐怖はない。むしろそれを見たからか全身に力が沸かない。


 気を取り直して用意されてたお茶を飲んだ。お茶は普段とは違い、香りが少し強く味が濃いもので、気分も落ち着く不思議な味だった。又、自分たちが風呂から出る計算をしていたのか温度もちょうど適温となっていた。


 飲み終えた後、ム太郎が欠伸をし始めたので寝かしつけるためカップを片付け部屋に向かう。

 さすがに襲撃にあった直後なので窓がある部屋をさけて書室で寝ることにした。

 ソファーに寝かせ体を軽く叩きながら眠るまで見守った。


 寝息を確認して、自分は暗闇の中色々と考えて後悔した。

 やはり、知識だけを頼りに育てるだけではいけないことと、自分の世界の常識は通じず、甘くみたら決して生きていけない事が痛感したからだ。


 だから決心した。生きるためにも守ってもらうことにも明日から方針を変えて育てなければならないと。

 だが、お茶の効果か今は睡魔が強くゆっくりと瞼を閉ざして夢へと誘った。




―――――――早朝


「・・・じ、おい親父、起きろ」


 親父という下品な言葉を聞きながら目頭を擦り目を覚ます。

 そこには目の前で、ム太郎はソファーの上で腕を組んで仁王立ちして、


「親父、客だぜ」


 ドアに指を指しながら、流暢に言葉を発していた。


「え⁉︎」


自分は一瞬で目が覚め、大きく口を開いてム太郎を見て時が止まった。

長くなりましが読んで頂きありがとうございます!

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