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#9 強者と出会った、山頂溶岩湖 3

 何かあるのかと周囲を見回すと、精霊や眷属たちも警戒姿勢を取っているが見える範囲に特段の変化は無い。

 勘違いかと警戒を緩めようとすると、地面を舞う砂を見て空気の流れが変わったと気づいた。

 横穴から溶岩湖へ向かっていた流れが横穴へ吸い込まれて行く流れに変わっていて、そこには瘴気を強く感じた。

 竜種の遺体に何か起こっているのかと注視するが特に変化は無く、瘴気はその手前で集まり渦を巻き始める。

 瘴気が集まり魔物が生まれる所はこの2週間で何回か見た事があるので、どんな奴が生まれて来るか様子を見ていると、瘴気の渦が晴れた後には1体のフレイムファントムがいた。

 何度も倒している魔物なので本来なら安堵できるはずが、先ほどよりも悪寒が強くなっている。

 周りにいる眷属や精霊たちも警戒を強めていて、現れた魔物に仕掛けるかここは引くか迷っていると、フレイムファントムが手に炎の槍を生み出しこちらへ向かってきた。

 他の個体とは違う行動をするこのフレイムファントムは不気味だが、明らかに敵対行動を取って向かってくる以上戦うしかない。

 俺が前に出ようとしたら、ガディが行く手を阻み頭を下げてくる。

 感情を読み取るとまずは自分が戦いたいようで、多少心配だったが許可した。


 歩くような速さでこちらに漂ってくるフレイムファントムと、俺達の前に立つガティの距離がゆっくり詰まっていく。

 いつでも飛び出せるように力をためて様子を窺っていると、彼我の距離が詰まり先制攻撃として放たれたガディの拳を、フレイムファントムが肘の所で切り飛ばした。

 そこで反射的に飛び出したお蔭で、槍による2撃目が防御したガディの反対の腕を斬り飛ばした瞬間、両者の間に割って入れた。

 魔力を纏わせた手刀を放つがかわされてしまい、続けて当てる事に主眼を置いて突きを放つがこれも紙一重で避けられ向こうの間合いを作られてしまう。

 そこから放たれる高速の槍の一撃をなんとか魔力を纏わせた腕で防御すると、熱いような痛みと共にこの世界で初めてこの体に傷をつけられた。

 

 フレイムファントムは炎を槍を押し込んできて槍と腕で鍔迫り合いのようになり、傷を押し広げられるかと怖くなったが力自体は大した事無いようで、数秒押し合うと向こうから離れた。

 槍を構え直し連続で放たれてくる高速の槍撃を、傷をつけられながらでも痛みをこらえて防御していると、傷が自動で治り始めるお蔭もあって気持ちに余裕が出てくる。

 その余裕が今にもフレイムファントムに襲い掛かろうとする、眷属と精霊たちの昂る感情を気付かせてくれた。

「お前達は決して槍の間合いに入るな。間合いを開けての攻撃に徹しろ。後グリア、撤退する場合に備えて、楔までの魔物を排除しておいてくれ。」

 グリアからは多少悔しそうな感情が返って来るが、全員指示に沿った行動へ移ってくれる。


 俺が慣れる分に合わせるかのように上がる槍撃のスピードに何とか対応して防御していると、ギャルドが俺を巻き込む規模の火魔術を撃ち込んでくる。

 自分の魔術が俺の害にならいと分かっているから巻き込んでおり、フレイムファントムにもほとんどダメージは無いが規模が大きい分十分行動を阻害してくれる。

 加えてアビリティ炎熱支配の効果で身に受けた火魔術から魔力を吸収できるとも知っているので、俺の魔力の回復も狙ってくれたようだ。

 防御の為に削れた魔力をギャルドの火魔術から補充しようと炎熱支配を発動すると、フレイムファントムの炎の槍からも魔力を吸い出せた。

 確かリンは魔力が枯渇すると生命力を置換してでも補填すると言っていたので、これが勝機につながるかも知れない。

 このフレイムファントムの槍術や身のこなしは圧倒的だが、他の能力は普通の個体と大差がないよう感じる。

 魔力もそう多くない筈で負荷を掛け続け枯渇状態に追い込んでしまえば、攻撃を当てることが出来なくても自滅に追い込めるだろう。


 両腕を失っているガディも火魔術で続いてくれ、ドグラも火炎の息を吐いて妨害と魔力の補充をしてくれる。

 ダルクの攻撃だけは吸収のタイミングが厳しいので、榴弾をフレイムファントムの真下に撃ち込み爆発で行動を妨害してくれた。

 精霊たちも火炎弾や岩石弾を撃ち出して援護してくれるが、それでも槍衾のような槍撃を防御する両腕の感覚が痛みで麻痺するようにだんだん怪しくなってくる。

 融合昇華の素材として眷属化したフレイムファントムの能力と吸い取った魔力から考えて、枯渇状態までもうすぐだと気合を入れ直したその時、フレイムファントムが倍以上の間合いを取った。

 猛烈な危機感がして魔力を振り絞り防御を固めると、影を追うのがやっとの超高速の一撃を突き込んでくる。

 ほとんど偶然腕を交叉してその突きを防御できたが、左腕を貫かれ右腕の中程まで槍の穂先が達した。

 痛みで両腕の感覚が殆ど無くなるが、俺の腕を貫いた事でフレイムファントムは槍を抜けなくなる。

 自滅を待つ戦術を捨て俺に刺さった槍をフレイムファントムが手放した瞬間、炎熱支配を全開で発動させ刺さった槍を魔力として吸収し突っ込んでいく。

 新しい炎の槍の生成が終わる前にフレイムファントムへ組み付け、残った魔力を振り絞って眷属化を強制する。

 ほとんど魔力は残ってない筈だが抵抗は強く、仕方ないのでポイントまで地脈炉で無理やり魔力化して送り込みやっと抵抗を抜けたが、それでホッとしてしまい腕の痛みと疲労で意識を手放してしまった。


 どれ位寝てたか分からないが目が覚めるとすぐに気絶する前の事が頭を過ぎり、飛び起きたくなるが体が重い。

 それでも何とか体を起こすと腕の傷は完治していて、眷属たちが周囲を固めてくれている。

 その中に炎の槍を持つフレイムファントムがいるのを確認して心底ほっとした。


お読み頂き有難う御座います。

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