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#80 手をつけた、交易の準備 1

 数回ゴブリンやオークの群れに遭遇し殲滅した以外は特に問題らしい問題もなく、まだ空が明るいうちに砦に戻れた。

 夕食時までポイント稼ぎをしに魔物狩りへでも行こうと思ったんだが、ヘムレオンを伴ってザイオが俺の部屋を尋ねてきた。

「少し時間をもらってよいかの?リク殿」

「ああ、いいぞ。立ち話もなんだから入ってくれ」

 部屋に招き入れベッドしか家具がないので床に車座で座るとザイオが話を切り出してくる。

「まずは礼を言わせてくれ。リク殿のおかげですんなりと話が進みそうじゃ、感謝する」

「配下のために働くのは頭として当たり前だし、大した手間でもないからそう気にしなくていいぞ。ただ税や交換に出す品や手配してもらう物資の詳細はザイオ達でしっかり決めてくれよ?」

「分かっておるよ。そこでの早速交換に出す品の準備を始めようと思うんじゃが、その事で相談に乗ってくれんかの?」

 否は無いのでザイオに頷き返してやった。

「では、まずヘムレオン達エルフが作れる魔法薬に関してじゃが、材料となる薬草がこの森で自生しておるのはもう確かめておる。この砦に移れたことで守りの人手をある程度採取や制作に回せるじゃろうからそこそこの数を用意出来る筈じゃ。それに魔物が溢れておる今だけじゃろうが採取のついでに倒した魔物の魔石なんかの素材も取引の材料に出来ると思っとる」

「それについてなんだが、多分この森には魔物が湧き続けると見てる。まあ、今より湧く数自体は少なくなるだろうがな」

「それは間違いないのかの?」

「絶対とは言えないが、恐らくな」

 勿論こう言うのには根拠がある。

 それはこの森へ流れてくる地脈へ大量の瘴気を流し込んでいる奴がいるからだ。

 以前奴隷商人と海賊を返り討ちにした後バルバスに聞いたんだが、ここの森の北方にほぼ半島を塞ぐように連なっている大地竜山脈には名前の由来となった一頭の大地属性の老成竜が君臨しているそうだ。

 昔は大人しかったそうだが、いつの頃からか魔物や動物に人族と種族に関係なくある程度の数が集まると見境なく襲って皆殺しにし始め、大地竜山脈の狂った主と言われているらしい。

 どうやらこの老成竜が地脈から莫大な霊気を吸い上げ、それを上回る瘴気を地脈へ垂れ流しているようだ。

 大陸から半島への地脈の流れに沿ってやってくるその瘴気がこの森の干渉地から溢れあの5本角が生まれた原因になっただけではなく、この半島全域にも流れて行き農作物が育ちにくい遠因にもなっていると5本角から得た結晶を看破眼で見て分かった。

 トロスの経済が活発になり人口が増えて欲しい俺としては、大地竜山脈の狂った主が垂れ流す瘴気を出来るだけこの森で魔物に変えて消費してしまいたい。

 ザイオ達には悪いがそういう訳で、この森での魔物の発生を増やす事はあっても止める訳にはいかない。

「まあ、俺や眷属達もこの森で魔物狩りを続けるし、倒して得られる素材は紹介する商会が間違いなく引き受けてくれると思うぞ」

「確かに魔物の湧きが止まぬというなら狩らねばならんし、得られる素材が継続して交易の品になるなら無駄にはならんかの。まずは野生の動物が戻って来るまで狩りの手が空く獣人や獣耳の者達に頼むとしようか。後は儂らドワーフが何を作るかじゃな」

「それならドワーフは器用そうだから木工なんかも良さそうだが、普通に武具や工芸品なんかを作ればいいんじゃないのか?」

「儂もそう思うが、問題は材料の鉱石をどうやって手に入れるかじゃ。故郷から格納庫で多少は持って来ておるがいずれは尽きる。手に入る伝手にリク殿は何か心当たりがないかの?」

「それなら俺にいい考えがある。ついて来てくれ」

 俺が立ち上がると多少訝しがっているがザイオにヘムレオンも続いてくれた。


 部屋を出ると真っ直ぐ楔の元へ向かい、二人を連れて廃坑へ転移する。

 念話でメウロを呼んでいるとザイオが尋ねてきた。

「リク殿ここはいったい?」

「俺が傭兵として合法的に手に入れた魔物が湧いたせいで放棄された鉱山だ」

 先程の話とつながってザイオとヘムレオンが納得するように頷き、楔を打ち込んであるホールを見回しているとメウロがやってきた。

(なんか御用ですか?リク兄さん)

「ご苦労さん、メウロ。用事を話す前にきちんと紹介しておく。ドワーフのザイオに、エルフのヘムレオンだ。2人ともこの鈍色の土竜は俺の眷属でメウロって言う。お互い覚えておいてくれ」

(宜しゅうお願いします)

「こちらこそよろしくの」

「よろしくお願いします」

 3名がお互いに挨拶をし終わった所で俺から話しを切り出した。

「メウロ、頼んであった調査の進み具合をこの二人にも聞こえるように報告してくれ」

(了解ですわ。分かり易いようにサンプルを持って来させるんでちょっと待っとって下さい)

 しばらく待つとメウロの念話に答えて数匹のロックモールが腕一杯に鉱石を抱えてホールに入ってきた。

(用意ができたんで、どこでどの鉱石が取れたか説明させてもらいますわ)

 メウロには廃坑の管理の他に前から有望そうな鉱脈を探してみるよう頼んである。

 ホールの床に坑道の概略図を爪で書いて、図上の取れた場所にサンプルの鉱石を置いて行った。

(こことここが特に量が多くて上手そうな感じがしましたわ。他にもこことこことここも良さげな感じですわ)

「リク殿、手に取って見てもいいかの?」

 俺が苦笑気味に頷くとメウロが石を並べ始めた時からソワソワしていたザイオが、かぶりつくようにサンプルの石に手を伸ばした。

 一通り全てのサンプルを見定めるのを待って問いかける。

「ザイオの目から見てここの鉱石は使えそうか?」

「ふむ、メウロ殿の言う通り幾つか良い物がある。できれば取れた場所もこの目で直に確かめてみたいの」

「そういう事なら、楔を使ってここと砦を行き来出来るよう手配しておくからメウロが目星をつけた所やザイオ達が気になる所を調べてみてくれ」

「心得た。明日から早速かかろう」

「頼む。ただ2つ注意してくれ。ここの坑道は魔物が出るから気を付けてくれ。メウロが使役してる土竜たち以外は倒していいから装備を着込んでくるのを忘れずにな。あと上へ行く立坑の途中を精霊術で封鎖してるから、そこから上へは行かないでくれ」

「分かった。調査にくる者達にはきちんと話しておく」

 話しは纏まったし時間的にはもう夕方なので一旦引き上げる事にした。

 ザイオがどうしてもと希望したのでサンプルはそのまま譲って砦へ転移で戻り、喜色を浮かべて去っていくザイオとため息が出そうな表情で後に続くヘムレオンを見送った。


お読み頂きありがとうございます。

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