#8 強者と出会った、山頂溶岩湖 2
この火山山頂部に引き籠るのに、リンから貰った情報で最大の懸念要素だったドグラを眷属に引き込む事に成功したので、内心大分ホッとした。
遠出というほど遠くは無いがせっかく溶岩湖まで来ているのだから、ここの畔にあるリンからの情報にあった別の気になる場所というのも調べておこう。
ガディ達とドグラの個別に顔を突き合わせる、互いの自己紹介のようなものが終わるのを待って移動を再開した。
溶岩湖の畔を半周程移動しリンから貰った情報が示す場所に近づくと、ドグラがねぐらにしていたものとは比べ物にならない大きさの横穴が空いていた。
中を覗きこんでみるがもやが掛かったように見通せず、その理由が貰った情報通りか確かめるため手を前にだし横穴へ近づいて行く。
そのまま横穴に入ると、すぐに手が膜のようなものに触れる手応えが返って来た。
力を加えていけば突き破れそうだが、上手く行ってしまうと大損をする可能性があるので手を引っ込めた。
リンからの情報では、この横穴の奥に瘴気に侵されて変質した竜種の遺体があるそうだ。
その遺体が発する瘴気、もっと正確に言うと地脈からその遺体が引き寄せてしまう瘴気を抑える為に、何者かがここに結界を敷いたとリンは推測している。
その推測を元にこの結界を解いた時の事態の推移も予測してくれていて、瘴気の濃度が上がり発生する魔物の質と量が上がるとある。
他にも示した手順で結界を上手く解けば、強力な力が手に入る可能性もあるとも記載されており、被害と受益をよく考えてこの結界をどうするか決めて下さいと、情報のこの項は締めくくられていた。
魔物の発生量が上がるのは倒して手に出来るポイントの増加に直結するので、手に負えない量で無い限りかえって有り難い。
リンの予測では発生量は1,5倍ほどになり、質の向上も別記の要注意個体つまりドグラと同等の個体がしばしば発生するとある。
ただ結界内が精査できなかったので、不確定要素があるかもしれないとも併記して合った。
分からない事があるのは多少不安だが、それでもどんなに予想が悪く上方修正する事になっても、発生量は2倍位で質の向上もドグラより多少強い魔物が出てくる程度だろう。
もしそうなっても始めの数週間は少し辛いかもしれないが、後は成長を加速してくれる要因になるだろうから、結界を解いて強くなるための一助となって貰おう。
情報の中にあった結界の解除法はいたって簡単で、横穴の左右の壁際に仕込んである結界につながる要石を抜けばいいというものだ。
要石を抜くのも力さえあれば問題ないとあるが、片方を抜くともう片方に負荷が集まり結界の消滅と共に砕けてしまうだろうと情報にはある。
この要石が力の源となるとも書いてあるので、できれば二つとも回収したい。
もう一度結界の膜に触れ、それを辿りながら横穴の壁へ向かう。
結界と壁に地面が重なる場所を調べてみると、一つだけ魔力を帯びた岩があった。
外見は50cm程の球に近い形で、手があり力も強いガディとバルクなら楽に持ち上げられそうだが、不測の事態に備えて魔力で防御できるガディに抜き取り役を頼んだ。
反対側について用意が出来たら手を上げるから三秒後に岩を引き抜いてくれと指示して、結界に手を当てもう一つの要石を探しに向かう。
50m弱ある出入り口を横切り、反対側に着くと要石を探した。
簡単に見つかったので大きくガディに手を振り、すぐに要石の傍へしゃがむ。
魔人に転生して上がった視力を頼りにガディの動きをよく見て、タイミングを合わせて要石を引き抜く。
見て動いた分俺が若干遅れたが問題無く引き抜け、それと同時に粘膜のようだった結界がひび割れたガラスのようになった。
そこから段々とひびが増えていき、結界の膜は溶岩湖へ押し出されるように砕け散り、横穴の中のもやが掛かった空気も溶岩湖の上へ流れ出していく。
横穴の中のもやがだんだん晴れていき、目算で100から150m程奥まった横穴の最奥に50m級の何かの骨格標本のようなものが見えてきた。
完全にもやが晴れると、肉は干からびていたが頭から翼を経て尻尾にいたる完全な西洋竜の遺体が横穴の奥に横たわっていた。
骨と皮だけの姿になっても感じられる竜種の力感に当てられ暫く呆然と見入っていると、ガディが要石を持って俺の傍まで来てくれた。
気分を入れ替えるため一つ息を吐き、ガディが抜いてくれた要石を受け取り俺が抜いたのと並べて地面におく。
この場所についてリンがくれた情報には一つだけ不親切な所があり、この要石から力を得る方法の記載が無い。
だが方法には情報に目を通した時から心当たりがあり、リンからの最後の助言を参考に溶融同化を使えばいいと考えていた。
間違っているかもしれないが他にこれだという方法も思い浮かばないので、並べた要石に手を当て溶融同化発動する。
左右の掌から二つ同時に要石をゆっくり取り込み、吸収が終わると2種類の力の塊が体内へ流れ込んで来て
2体の精霊を吸収しました。
契約及び分解してポイント化が可能です。
そう頭に声が響いた。
上手く行って高揚してくる気分を抑えて自分の状態を確認してみると、火と土の精霊が体内にいると分かる。
それと同時に反応がある地脈炉に意識を向けると、精霊の自我のようなものと接触でき両方から50ポイントで契約すると意思が伝わってきた。
100ポイント位なら何とか用意できるので、50ポイントずつ両方の精霊へ送り込むと、
スキル精霊使役レベル1を取得した
さっきに続いてそう声が頭に響いた。
早速取得したスキルを試しに使ってみるため、アビリティを使うように精霊使役のスキルへ意識を集めると思い出すようにその使い方が理解できる。
その感覚に従い体内の精霊たちへ魔力を分けると、俺の目の前に炎の毛皮を纏った大狼と岩の外皮が鎧のように見える犀が現れた。
精霊が実体化したのかと思ったが体内に精霊を感じるので、どうやらこの狼や犀は分け与えた魔力で作った分体のようだ。
頭を擦りつけて甘えてくる二匹の首を撫でながら、名前をどうするか考えていると強烈な悪寒が背中に走った。
お読み頂き有難う御座います。